{引用=夜明けのこない夜はないさ
あなたがぽつりいう}
懐かしい歌が
あの頃の私を連れてきた
そして今の私が唄うのを
遠い窓枠にもたれて
聞くともなく聞いている
夜のはてない深さと距 ....
消え入りそうだったんだ
夜明け前に
悪夢で目覚めると
孤立に窒息して
消え入りそうだったんだ
そんなとき
何気なく手を差し伸べてくれる隣人が居た
「水が欲しいんだろ」、
ってト ....
サイレンが鳴り、正午を呼ぶ
けだるい声はアカシアの雨を歌い
直後に威勢ばかりで縁取られたシュプレヒコールが
アンポハンタイを叫ぶ
(アカシアの雨とは、どんな色だろう)
浸りすぎてしまった ....
例えば水が滑り落ちる音
例えば瞬きする音
例えば呼吸する息遣い
例えば動き続ける心臓の鼓動
ゼロになって
ゼロになって
わたし、今、ゼロになって
まっさらな自 ....
(ねむっているように、うつろに開いて
よこたわっていても、私には見えてる)
瞬きで合図をくれていた
感情もなぜかくみ取れた
そんなにあふれていたんだね
枕元にたくさん落ちていたよ
....
小石を拾うと
小石が落ちるときと
逆の音がした
それはつまり夏の音であり
連日の雨から集まった夏の電信である
つめたい夏には
小さなものばかりが集まる
小鳥が鳴いたあとの一瞬の静寂や ....
さよならを知った日は
なぜ夕暮れの太陽が
こんなにも赤く染まるのだろう
さよならも知らずに
赤く染まった夕暮れを
美しいとさえ思うこともあるのに
さよならを知る
....
蝉がないている
間接照明に沈む
床のリノリウムは
僕らの小さな願いさえ吸収してしまうのか
フラッシュバックする
ピースサイン
屈託無く笑えた頃の
副作用
ナイトキャップに絡 ....
産まれた時からつきあっている
隣の山羊の顔が
近頃人間の顔になっていることに
気づいた
どうみても山羊顔した人間顔だ
山羊も人間に育てられると
人間顔になるのだろうか
みつばちのささやかな羽音に
ひかりが絡まる
かけてはうだる夏のあかるみに
みせびらかした琥珀色
やわらかな土を踏みならし
踊ったあしもとに
すこやかな針をさしとおしては
はれあが ....
宇宙に放り投げたリンゴのように
あなたに問いかけても遠ざかる
万有引力の法則が
あやとりの糸のように絡まり
浮かんでいくのは
最果タヒちゃんに
あんた、詩の才能0だね、辞めちまいな。
と ....
もしも 魔法が使えるなら
この地球上の
すべての兵器を楽器に変えよう
すべての弾を
花の種に変えて
世界中を花だらけにしよう
種は花を咲かせ
花は再び実を結び
きっと甘い果実が ....
言葉と言葉を継ぎ合わせる
赤い夜の拒絶の淵
別れの白い花びら
漂う岸辺
波の上に
なぜか海鳥が湧く
船の灯りは夏の夜の饗宴
古から
空に浮かび続ける訳を
尋ねる旅人
満 ....
朝焼け、
揺らめき、
余韻。
桔梗色の空が眠たそうに。
蜂蜜のような日光が射して。
風薫るのは、
狐と彼岸のまだ湿る精神の融解でした。
あたしの住んでいる
....
生ぬるい湯が入ったゴムの風船、
それがわたしだ。
熱々だったことなんかないし、
凍りついたこともない。
手の届くところに何もかもがある。
肩こりの塗り薬(インドメタシン入り)、
豆乳で ....
みんなイイネなんか押してないで
詩でも書けばいいのに
似てるなにかに頷かないで
ちょっと違う!って叫べばいいのに
秒速5センチメートルみたいに
青春に恋はしたけど
....
かれは、いま 叫んでいる
遠くを見ている人々にむかって
かつては 矢じりを誓う猿だった人々にむかって
現代という うつつに居る私にむかって
かれは ごみ捨て場で 半透明の袋にいれられたまま ....
瞬きしない癇癪持ちの貴女が遅れて笑ららう
瞬きしない癇癪持ちの貴女が遅れて笑ららう
瞬きしない癇癪持ちの貴女が白く透き通る卵を一粒一粒数えて笑うように洗ららう
氷山の如く切り立つブラウス ....
聴いてくれなくても
いいよ
息づいた
鎖骨のくぼみにすこしだけたまって
あとはみんな流れるよ
疲れた首
あなたに雪を投げる子ども
溶けて
白のうえに残っ ....
雨上がりの今朝
出窓にノートを置いて書き物をしていたら
お隣に広がるガレージと倉庫では
レ ....
魚臭い家を出て用事を済まし
いくつか由緒のある品々を眺めて帰った
金泥で書いた文字を
猪の牙でこすって輝かせるなどという
今は滅びた技法で書かれた経典を懐に入れて
額に皺寄せて家に戻ると
....
カブトムシは前戯などしない
柔らかい部分が
甲冑の奥深いところにあるからか
ギザギザの不器用な手では
そこに届かないからか
違う違う
単に意味が無いからやらない
生殖したいだけだから ....
時が静かに化粧をして私に迫ってくる。
時の誘惑は川沿いに咲く桜のように美しい。
誘惑を美しいと捉える心は不純であろうか。
年を追う毎に時の魅惑に囚われてゆく。
一瞬で燃え盛る ....
頭の内側から幾つもの瞳が僕の心を覗こうとしている。
激しい頭痛は時の行方を激しく見つめている。
これは夢であろうか。
僕には火炙りにされた女の姿が見える。
今ここに生きる事に ....
ゴミ捨て場に群がるカラス
性質の悪い笑みを浮かべる人間よりは 美しい
羽根が 七色に染まる度 描く曲線は
一度 空へと舞いあがり
再び 地上に 降り注ぐ
天使の梯子のよう
細や ....
ひとりの人を助けたら
百人の人が助かるって
ほんとかな
人が人を助けていって
めぐりめぐって百人になって
それぞれ人を助けていけば
どんだけ救いになるだろう
たんぽぽの綿 ....
冬のあいだは閉じていた即売所に
春の野菜が並ぶのをみにいった
空に白い梅の花が
燃え上がるように咲いている
ハンチング帽をかぶった老人が杖をつきながら
老犬とゆったりと歩いていた
....
歌う汽笛は下手くそだった
生命波打つ、きみどり色の絨毯の上を航海する船
柔らかな日差しが撫でるように氷を溶かすから、行き先はどこまでも広がる
細かく枝分かれした新芽、太く根を張って、遠くを見通す ....
柔らかな海に溺れたとき
人は、なにを見るのかしら
感じるのかしら
大きな事象のなかの小さな事実に
私は、気をとられてきたけれど
きっとそれだけではだめだったの
あなたを理解したい、私を ....
その場しのぎでかけたほうきのあとが
際だたせているホコリの存在
誰もいない教室で
立ち尽くしているあの子が
完璧な掃除をめざすことは
もうない
ちょうどいい汚れを残した部屋で
綺 ....
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