今年もうぐいすが鳴いた
うぐいすが
うぐいすであることを誇るような
透明の声は
命の分身
離れてしまえば
もう本体に戻ることはない
永遠に
たとえば
意に沿わない風にも
うぐい ....
新じゃがいもをたくさんもらったので
ご近所さんにお裾分けした
お返しに、と
果物をいただく
蜜柑のようでちょっと違う
きめ細かいすべっとした黄色い皮は薄く
手でむけそうだ
現れた果実 ....
京都駅構内のアスティロード商店街を抜けて
おもてなし小路を行くと連れの彼女が独りごちる
「うわ、六百十五円やて!」
何事かと 彼女の視線みると
老舗珈琲店の店先ショーケースにはり ....
コーヒーを飲み終えられたベルゼバブさまは、机の上に置かれたアルコールランプを手元に引き寄せられると、指を鳴らして、火花を発して火を灯されました。すると、ベルゼバブさまの前に坐らされておりました老人が ....
ボードレールの作品世界に通底している美意識は、詩集『悪の華』(堀口大學訳)に収められた詩の題名によって捉えることができる。たとえば、「不運」、「前生」、「異なにほひ」、「腐肉」、「死後の悔恨」 ....
さすらうには勇気が足りないかな
どうせならもっと風の強い日がいい
靴下を左から履いてしまった
メガネ拭きが見当たらない
レンズが曇ったままでは
都合が悪いんだ
だから明日にしよう
今日じ ....
ふわふわとした
形のないものを抱いて
目を覚ました
今日は何だか
うまくいきそうだと思わせる
朝の匂いは甘くて
誰かの柔軟剤の残りが
空気に溶けて
酔っているだけなのか
....
東京SK駅から北東約十分
明日にかかるプールバーで
転がる玉を見ている
すべての始まりはそこで
やがて
花火の夜に散るように
マイクロバスから
あせた国際色が帰る宿
すべての始まりはそ ....
暗いボックスに
抱き合って動かない男女が居た
感傷的なメロディーを弾いているピアノ弾きは
禿げかけた頭を時折 片手で撫でていた
頭の中も躯の中も
お酒で一杯の筈なのに
....
人間は個として
およそ同じ体積の中で
古い身体を処分し 新しい身体を作り 生きている
樹木というものは
死んだ古い身体の上に 新しい身体を重ねながら
体積を増やし続け 太く大きくなってい ....
初めて触れた彼女の素足は
子供のように小さくて
すべすべとしてなめらかで
指が六本あったけれど
幸せを運んでくるための
六本目なんだと
そう言ってくれた彼女の笑顔が
愛らしいことこの上な ....
幻想が消えていく
私の人生を彩っていた 夢の中の人々
私のために 私が作った 私の家族たち
さよならも言わず なんだか笑顔で遠ざかる
私は泣きながら立っていた
窓 ....
時を隔てて人は変わる
人が変わると街が変わる
街が変わると想いは募る
変わるのは人の心なのかそれとも街なのか
思い出は深く胸に刻まれ
けれども風景は変わっていく
思い出してごらん
....
もう もどっては こないよって
あいつは いった
ぼくのことなんか ほっといてよって
あいつは いった
ツチノコ ツチンコ シタリガオ
また どこかで会えるって? ハ ....
背筋を伸ばして立つ
その人の目は前方の二番ホームがある背景へ
据えられている様に見えた
腕まくりされたワイシャツ
右手が口へ運ぶ平たくて長いパン
大口でかぶりつき頬張って噛む ....
朝 目がさめて
僕がお布団ともっと一緒にくっついてたい
という日
と
僕はもう起きてなにか始めてもいいと思うのに
お布団がやたら僕にくっついてくる
という日
がある
....
はい、僕が
銀座の高級時計店に
押し入った犯人です
ダークナイトって映画あったでしょう?
あれに出てくるジョーカー率いる
犯罪集団みたいな感じでやれたら
カッコいいなって思ってたんですけど ....
持ち家で生活に困らない
歩みは遅いが滑らない
どんな場所でも前にしか進まない
アクシデントは殻に入ってしのぐ
食べ物は草木の表皮だから無限
殻の維持に必要な炭酸カルシウムも
街のコンクリー ....
芸術における表現の自由という命題があらゆる意味に於いて言葉上の珍穴子である限り、今後詩人という名刺を自らに課し扱うことを私は拒否もしくは否定する。
その壱
詩人とはなんだろう。人が言葉を ....
ただ ここに隙あるから
好きになったかな
隙間あったから
入る余地あったかな
隙間なかったら
タンポポさえ
咲かなかったかな
あなたを好きになれて
良かったよ
隙 ....
太鼓のリズム
太古のリズム
神さまが来る
邪気払う
今日よい天気
青空の下
アフリカ気分で
ちょっとノリノリ
農作業
植物 優先
お天気 優先
ノーと言えない農作業
....
未明のラジオ体操で
待ち合わせをしていると
あなたは幹線道路の方から
しろやま公園に入って
産声をあげた
町内会の会長さんは
壇上に上がり
体で体操をしている
お手本だから左右 ....
音韻を小瓶に入れて思い切り放り投げた
海岸線を歩けばカモメが鳴いて
子供達がはしゃいでいる
それを横目で見ながら
私はするりと通り過ぎる
明るさはいつも影を落とす
その事が私の胸を ....
生まれて、育った町の
毎日 渡った橋を
きみとゆく
今日は雲が多いね
川面もすこし 白い
そうして乗る
路面電車の窓を
飛ぶ鳥が
きみとぼくを 一瞬
つれて
どこかで ....
けだるい午後です。
青い海に目をやると、
廃工が浮遊している。
そうです、蜃気楼なのです。
乾ききった喉をうるおさなければ。
日照りで目がくらみます。
立ち眩み、立ち眩み…
自販機が ....
背後霊が生前自称詩人だったため
いつも耳元でクソみたいな
自称詩を囁かれて気が狂いそうだ
自称詩人の背後霊は
自分のことを
「うしろの朔太郎」と名乗っているが
朔太郎とは程遠いクソ野郎だ
....
真新しいマンションが増えてきたこのまちで
わずかに残った古いモノ
ああ、あのぼろっちい空き家ね
頑固に過去にしがみつく
なんとも無様な姿を地域住民にさらしながら
はや数十年が経過した
....
稚くて
美しくて
二人には白い花びらの開き切らず咲く
真ん中だけ ほんのりピンク色に染めた
薔薇が似合う
交わす口づけもさわやかに愛を誓い合った
いつか二人は大人 ....
日本国を率いる者たちが
自分の間違いを認めようとしない
このままだと日本は滅びる
そのことに気づいている者たちが
その間違いの元である
貨幣の信用創造という事実に基づいた
正しい貨幣観を広 ....
洗濯したシャツを畳んでいると
シャツに畳まれている私があった
痛くないように
関節が動く方向に畳んでくれた
畳み終えると皺に注意しながら
シャツはそっと私をタンスに仕舞った
衣替え ....
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