夏の昼間の空は
澄んでいて
空っぽの
わたしの頭のようだと思う
どこまでも青くて
遠く冷たい宇宙と
頼りない月に
手を伸ばしている
呼吸も
愛情も
欲望も
暑くて仕方ない ....
小さなグラスにウイスキーをなめなめ
夜更けて
行くのを知る
そういえば私の影は何処へいったでしょう。
「探しにでもいったのでしょう。」
あら、何 ....
あっち向いて ホイ
ウチ見て ホイ
なんでそちらを向きはるのかしら、いけず
目の前に一本の道が現われた。
この道を行けば、海に出る。
ほら、かすかに波の音が聞こえる。
見えてきた。
海だ。
だれもいない。
天使の耳が落ちていた。
....
肛門には特別なセンサーがあり
個体と液体と気体を識別できるから
オナラのすかしっぺができるのだ
このセンサーが機能しないと
音出しっぺのオナラテロになる
江戸時代には
良家の女性に付き ....
それなりに成長した木なので
横たわるとベッドからはみ出してしまいそうだ
実際、回診の時
医師は枝分かれした根っこの末端を
注意深くよけながら
ベッドの周りを移動しなければならなかった
根っ ....
道の途中で、
一緒の者が笑い始めた
相棒は笑いながら
「もうお終いだよ」と言う
そんなことはないよ
いつか終わりかどうかじゃなくて
僕たちはちゃんと生きている
相棒は歩くのを止めた
....
雨は降ったり止んだり降ったりで
四季のある国のひそかなもうひとつの季節
室内干しの洗濯物
取り込むまえに
ちゃんと乾いているだろうか、とさわってみる
乾いているようにみえても
繊維 ....
暗闇の中には沢山の物語がある
パリの老いた靴作りが
ハンチングを傾けてかぶっているのは
むかし街の女に
とても粋だわ と口笛を吹かれたからという話
それでそ ....
一人でふたり分の荷物を整理する
なんて過酷で残酷な(笑)
やり始めるとやっぱり記憶に飲み込まれそうで
それでも時々、楽しくて
壁のシールを剥がせば そこだけ白くて
こ ....
雨
{引用=水}
に
針{引用=が} 蟻
革
の本
インク
{引用=は}
柔らか
{引用= 𝘪𝘵}{引用=+}
刻印
香料 ....
我が家では
いただきますの後
ニャー と号く
あの日から
そうしてる
魚屋さんには夕陽がさす。それは、雨が降っ
ていても、モールの中でもかまわずに。その
匂いの中に ....
虹を作る
その生き物の背中には羽があって
だけどそれは
空を飛ぶためのものじゃないらしい
六月の晴れ間を見つけると
庭にぴょこんととびだして
霧を吹きかけて虹を作る
小さな生き物は
小 ....
給料日 仕事上がりに立ち寄るATM
その銀行の隣に花屋がある
軒先、白い看板には飾り文字で「花音」
店内は細長いスペースで奥行きあり
入り口に色とりどりの花の苗が陳列していた
....
きらきらひかる
わたしの遊園地は
暗闇のなか
世界を彩っていた
頭のなかの
わたしの遊園地で
ぬくもりのなか
空を飛んでいた
貴方に出会った
あの日
翼が堕ちたわたしの ....
ハッピーハッピーハッピーハッピーライフジェネレーター
そんな筈じゃなかったの
そういう積りで生くと誓ったのではなかったの
こんなふうに秋でもなんでもない生温い季節に
恨み言をゆうなんて
....
枯れちまった海で
魚は息はできない
また涙で溢れるまで
手をコピーする。左手をコピーして、右手を
コピーする。腕をコピーする。左腕をコピーし
て、右腕をコピーする。顔をコピーする。光を
見ないように、目をつむってコピーする。肩と
胸をコピーす ....
躓かぬように
丁寧に均した心に地平線はあるか
太陽はそこに沈みゆくのか
月はそこから昇るのか
それでお前は納得がいくのか
安らかに眠れるのか
都会の片隅に、にっこり
置いとかれたお地蔵さん
短い夢にからかわれ
ビルからまたビル渡り
錆びた引戸の奥で
さよならぽつり
きみはやわらかに抱きしめ
つつみながら
....
みてみて あの二の腕、ボンレスハムみたい
黒レースのアームカバーの上に お肉が乗ってるわ
しかもあの表情はなに? 彼氏のイケ・メンタロウ君に向かって、仏頂面
きぃぃ なんなのよ なん ....
習い事をする指
花粉が入ってきて
鉛筆に降り積もる
狭い心房
右と左がある
一時間後バスに乗る
土の上、優しい
柔らかな色彩の
ように息継ぎをする
発熱、発汗、
生きている ....
いまとなれば
遠いおはなし
うすい膜のなか
半透明の階段をのぼる
(あしおともきこえない)
くうきの浸透圧で
うかぶ猫の蒼い眼が揺れる
水の音が、間隔をおいて、したた ....
風の中に雨がむせび
雨の中に女がむせぶ
長く長く
細く細く
胸の中に
容赦なく風が吹きこむ度
血潮のいとおしさに女はむせぶ
過ぐる日 ....
夜
月明り
独り暮らしが始まっていた
絶望も希望も寝静まり
生活が一つ転がっている
朝
目が覚めて思う
生きていた
しかも快晴だ
何にもないので
布団を干した
....
寝息が包んでいた闇を抜けて
小さな呼吸は
始発電車よりも早かった
眩しいからなのか
朝を薄目で盗んで
それを混ぜるための
パレットが欲しくなる
乗せるものが無くても
軽くて透明 ....
空へ空へ
伸びる茎
光を光を
求めて
枝分かれして扇形になった
それは
小さな木々のよう
草はらに
明るい森を成している
海の向こうからやってきて
異国の地に根をおろした
覚 ....
夏陽がじっくりと焦がす
白い坂道の曲がり角
大樹の木陰、繁り合う枝葉
セミの声
見上げる少年と虫捕り網
身体を揺らしながら
爪先立って手を伸ばす少年
ぼくは坂を下り ....
地元走るローカル線を
無人駅で降り
山裾へのぼる細い道で足を止める
通りすがりの一軒家
枝葉被った鉄の門
奥には木造の二階建て
厚地なカーテンひかれたままの窓
....
幸せという字は辛いという字の上に一本足して、蓋をしている
辛さに蓋をして幸せになるぐらいなら
辛いままの方が正直じゃね?
おれの息子はそう言って戦争に行く
2年間
中央の大学で学位を ....
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