咳き込んでいるのは僕から逃げ出したいから
なのだろうか。僕の身体はもう値しないもの
になりつつあるのかもしれない。濁音が空を
汚す。ひとつ。暫らくして、またひとつ。藻
みたいにドロドロして、蝕 ....
野生の鶏が森に溶ける朝
立ちのぼる夜の残り香
白く踊る靄
女たちのはごろもの袖が
空に還るよう
斜めに抜ける鉄道の跡地に
芽吹く春を見守っている
私の肩に麦をふりかける人よ
瞳は黄金を ....
にょうろりにょうろり長い紐
トタン屋根またがり
ポストくぐって
にょうろり、にょうろり
どこまでいくのか
酒屋のシャッター錆びの穴
にょうろりにょうろり
中に ....
草のなかにレールをみつけた
錆びた鉄の平行な二本線が
弓なりに
ここから延びていた
または
この草のなかで
すっぱりと裁断されて尽きていた
あおぐらい記憶 ....
ゾロリ
色のない
貧血の頬を
滑るカミソリ
ピリリ
痛みのような
微弱電流
プクリ
鼻の左下
盛り上がる
赤い液体
チッ!
煩わしいだけの
日常茶飯
ゾ ....
もしも、もしものことだけれど
ぼくに彼女ができたら
ぼくは回転寿しで、
絵皿ばかり食べようと思う
お祝いに
ビートルズのUKオリジナル盤を、
まとめて買おうと思う
ラバーソールは ....
ほらっ、ジュン、早く!
運転手さんを待たせちゃ失礼だぞ
それじゃあ、よろしくたのみます
おにいちゃ〜ん
レイちゃんの居場所がわかったら
連絡するから〜
小さく頷いて、ジュンはトラッ ....
頭の中で 鳴るんだ
音を飲み込む音 音を噛み砕く音
音を叩く音 音を破る音
音を切る音 音を捻る音
音を削る音
それらが それぞれ七色に発光して
カウントダウンが始まる
サーカ ....
エリカの部屋へ電話をかけて
ハイパーメディアクリエイターの芝居
続けてみたけれど
あの娘ももはや
興味なさそうで
そうそう付き合ってももらえない
用事がなけりゃ
連絡するな
そもそ ....
世界の果てに 椅子を二つ置いて
暮れつづける夕暮れと
明けつづける夜明けとのあいだで
いつまでも 話をしていよう
横はいりなんかしてないのに
ちゃんと並べと咎められたことがある
トラウマになってしまったのか
また文句言われてしまうのではとオドオドしてみたり
私って気が小さいのかな
それからは ....
いきる
燃えさし
あがってくると
( こころは バイパス
爛れた
くちびる
あてがいながら
眼窩(すかいらいと)
から
入水
....
新緑の風は
棘がなくてとてもよい
海が近くになくとも
森が近くになくとも
ほんのすこしの
風の匂いは
生命の香に満ちている
ほんのすこしの
ざわめきは
生命の音で満ちてい ....
ゴルフ場の空に日暈が出ていた
ぼんやりとしたでっかいわっか
それが次第にはっきり虹いろになっていった
日暈に背をむけながらフェアウェイを歩いていた
だれかがオレのために祈ってい ....
「明日の情」
優しく蛇行して
適度に濁って
こそばゆく岸を撫でながら
僕の根底を流れる
情の小川は
ときおり
なす術もない豪雨に
のたうち回って
....
星形のサボテンの気分で目覚めた
窓の外に
柔らかい青空
いっきにトゲとけた
ふにゃりくにゃり
もぞもぞさがす右手
君に報告
生きてますよ
あのね
ありがとう
サバは猫ではなかった。
猫がサバだったのだ。
おもい。
わりきれない素数のように
バサッと
樹のうえから降ってきた新しい猫と屁理屈を彼女はうけとることにしたのだ。
おもてなしうらなしてだ ....
絵描きの家には絵筆が数えきれないほどあった
太さが様々な絵筆が ところ狭しと並んでいた
絵描きは嘘をついていた
彼は絵描きではなかった
どこかに球体があった
それはそれは丸かった
....
古い家屋に手を入れてできた料理屋さんは
まるで人をこばむように
さっさとおゆきなさいと
言うように人の気配を消す
庭に咲いた花まで
初老の店主は言う
ひとつひとつ皿を運び
魚です ....
「時」が地の底へ地の底へと
流れ墜ちてしまうのかなぁ
いつ止むともなく
ざらめ雪は降りつづいている
じっと眺めていると
....
午後 4時44分
見上げると
東の高く
薄い青空に
少し欠けた
白い月が
浮かんでいた
立春もとうに過ぎたのに
しばらく
引きこもっていた
たまっていた
所用 ....
コンビニの
100円スイーツを食べて
心に膜を張る
むき出しのものに
触れないように
誰のせいでもないことを
誰かのせいにするみたいに
のどがかわいたって
いつも用意されている
....
{引用=それを、聞きのがして、
提燈アンコウのように、ひかり、
ただ、
春を、まっている、
鋏をいれて、ほつれをひろげる、
物語がはさまれる、
この浴槽で、犯行におよんだのだ、
強い、断 ....
道路も屋根も電信柱も
みんな銀色に覆われてる
子供たちは喜び
雪合戦をしている
君と過ごした冬は
寒いけど暖かかった
今年は一人で子供たちの
歓声を聞いて ....
人は飛べないから
歩かなければならない
羽がないから言葉がある
人の行き先は
未来なんかじゃない
人の行く先は結果という街
理由探しを立ち止まる方法にしたとて
ないものはないから ....
ここのアカウントを貰って、再び書き始めたとき、過去作は絶対に投稿しないと心に決めていました。けれども、ある話をするために自分が10代のときに書いた詩を再投稿することにしました。ただ、自由詩として投稿 ....
自然はいつも新しい
新しいものはいつもキレイ
キレイなこころはいつも新しいこころ
傷つきやすくて
ひとなつっこいこころ
好奇心いっぱいで
いつもなにかを発見してしま ....
網戸に
みっしりと
あたしの嫌いな
蛾が
はりつている
義母が
買ってきた
生貝を
食べる
喉元に
違和感を覚える
吐く
あたしは
貝殻の ....
咳込みながら考える
このまま息ができなくなって
瞳が閉じればいいのに
狭まっていく世界に
初めての愛を贈ろう
「死ね。」
うすあかりの光りがまだら模様をえがく夜
わたしは、私を忘れる
「風が出てきたみたいだ。梢の影が踊っている。
ここには、街灯はないのだから…」
「月明かりね。風音が変わった ....
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