共感と励ましを詩にしていた頃
深水遊脚

 ここのアカウントを貰って、再び書き始めたとき、過去作は絶対に投稿しないと心に決めていました。けれども、ある話をするために自分が10代のときに書いた詩を再投稿することにしました。ただ、自由詩として投稿するには最後のところでブレーキをかけました。


「朝陽〜See the Morning Light〜」

自信なげな 君の顔
何故か 心惹かれたよ
失くしたもの 悔やんでた時の
僕と きっと同じだね

遠くを見つめてごらんよ
たまには気分変えて
まわりをよく見てごらんよ
誰も 君を責めてない

うまく行かないことばかり
続くうちに 君は
心疲れてしまって
大切なもの 失ったね

些細なことで 簡単に
自分を責めたらダメさ
愛する勇気 持っていれば
人も そして自分も 暖められる

今までの mistake 悔やむより
これからの出会い 大切に
笑顔を取り戻すための
つらい記憶 捨てる勇気

今までの mistake 悔やむより
これからの出会い 大切に
傷ついてきた 君ならば
優しい心 持てるはず



 ブレーキをかけた理由は、誰に語りかけているのか、語りかけている相手のことを本当に分かっているのか、実は語りかけている相手は自分自身ではないのか、今の私はそんなふうに考えてしまうからです。そして、相手が自分自身ならば、安定して落ち着いた地点から悩んでいた自分を、未熟者を諭すようにみる視点が嫌らしく思えてしまうからです。

 なぜこの詩を蔵出ししようとしたか。それはある名前の長いスレッド(「詩と散文スレ」で通じると思うので以下そのように書きます)でいつものように書き込みをしていて、これは収まりきらないな、と思ったからです。こんな書き込みです。
http://po-m.com/forum/thres.php?did=217908&did2=800

 詩を書く動機になったものを説明するためには、どうしても結果として書いた詩を出さなければやりにくいし、書いたとしても一般化しすぎた空疎なことしか書けないので。そのスレッドで書いたように、最近私のことを厳しく、そして優しく見守ってくれた人を亡くしました。厳しく、の部分は半端なものでは有りませんでした。それこそ身も心も染められてしまうのではないか、と思うほどです。自分の本心を受け入れてくれないであろう、所詮相容れないだろう、ということに軽く絶望し、それでも自分の果たすべき役割はきちんと果たそうと努力もしました。手に余る仕事を抱え、たいしたものも返せないままでした。いずれ本心をぶつけて話し合ってみようと、あれこれ回りくどい考えを巡らせましたがそれは実現することがないままでした。

 確かにその人は、初めに会った私が彼の理想のかたちからあまりにもズレていたために、生き方から根本的に変えてしまうような、当時の私の過去と現在を全否定するような罵倒のような言葉をいっぱい浴びせました。全否定しながらも全然私が見えていないと知っていた私は、すべてを受け取らず的外れな部分は聞き流すことにより何とか自分の芯を守りました。でも、後になっていろいろわかってきました。厳しい言葉にはその人のこれまでの生き方の裏づけがあること、その経験をもとに人に幸せに生きて欲しいと強く願っていたことを。彼の厳しさ、理不尽さに反発もしたけれど、彼がそのようにして伝えようとしたエッセンスは確かにこれからの私の人生に必要なものだと今は納得しています。

 共感は実は相手を見ていない、自分自身への慰めだったり鼓舞だったりする、そのことは確かです。的外れな共感で人にある倫理観を押し付けようとすれば、モラルハラスメントということになるでしょう。彼の厳しい指導は決して誉められたものではありません。この散文でことさらに彼を賞賛するつもりはありません。それでも、相手を強く思うこと、強烈に何かを伝えようとすることもまた言葉を発する動機になります。それは根源的な動機に近いものだと思います。発せられた言葉を理解するために、自分についたいろいろなものを一時的にどこかによけて、言葉を言葉として受け取ることも、言葉を発する動機をみつめることも、時には必要なのでしょう。彼を亡くしたいま、私に出来ることは、彼の言葉と対話することです。彼の言葉は私の体が覚えています。ボーっとしていると怒鳴られました。常にまわりの変化に気づき、工夫と改善を毎日行いそれを積み重ねて行くこと、気づいたら瞬時に実行すること、それらを仕事で、日々の生活で実践して行くことが彼への供養と心得ています。

 書く動機として、共感はあり得るものであり、むしろ根源的な動機に近いものかもしれない。そのようなことを、自ら人への共感(実は自分自身に対するものだった)を動機に詩を書いた事実を踏まえて、散文にしてみました。読んでくださり、ありがとうございます。


散文(批評随筆小説等) 共感と励ましを詩にしていた頃 Copyright 深水遊脚 2011-02-18 16:55:14
notebook Home 戻る