青い瞳の中に
沈みかかる方舟
手を振れば
手を振り返す
遥か彼方から
震えた体を
異人の言葉が抱きしめてくる
温め合う心と心
黒い瞳の中から
ありったけのサンキューを
....
四月病ってあるらしい
さりとて年度替りの初々しい賑わいとは
とうに縁遠くなっているのだから
花散らしの雨もあがり葉桜と化した桜並木を
これでよいのだと独りごちながら歩む
※
....
「二月」
貪欲がこの街の草を食み
鳩は広場の雪に足跡を付ける
紺碧には忘却のゴンドラ
「三月」
悲しみを折り畳んで春の子守唄
緩やかなカーブを横切って
風 ....
北風と紡いだ一月の空
背中越しから僕の肩を叩くと
うつ向いていた体内の蛹が割れて
一匹の蝶々が飛んでいった
海を渡り
消えていく
夏の蜜のある処へ
人と動物は
同じ自然を過ごしてはいれど
同じ世界には住んではいない
例えば今から
ここから一番近い
公園や広場にいったとする
そこに鳩の群れがあるとする
あなたを美しい女性と ....
昔、屠殺場に送られる牛を
トラックに積む前の牛舎で眺めていたとき
その牛は
あと何時間後かに死に
バラバラにされて
肉塊を急速冷凍され
お店に並び
食卓に並ぶというのに
交尾を ....
男であること
なよなよした言葉で
変装してみせる
中性の安全地帯がビーカーの液で黄色に変わり
青いリトマス紙に
夜な夜な試験にかけられる
女であったなら
明日の仕事勤めなんか考える必 ....
ゆうてみて
あたしのどこがきつねなのか
そらぁ
お天気の日に雨はおっかしわなぁ
そんでもなぁ
この雨を降らしたんはあんたやで
しょぼくれた顔してうどん食べてたから
声かけたん ....
煮つめられた、ような
まよなかのにおいを
くたびれた寝床で嗅ぐ、遠いこめかみの痛み、ディスプレイの照明を、受けとめ続けたせい
おとなしい雨の日の
波打ちぎわみたいな間隔で ....
割り切っている
良くも悪くも割り切るのが早い
僕は
公式なんかすっ飛ばし
一か八かの
答えだけ弾き出す
便利な簡易計算機です
愛してました
哀しみました
落ち込みました
....
知っていますか
あなたが長い黒髪をなびかせたとき
真昼の純粋で無垢な輝きを消し去ってしまうこと
知っていますか
あなたが落ち着いた声で語るとき
街中のにぎやかな喧騒を消し去ってしまう ....
一粒の私を
順番に潰していく
一粒の私は
潰れるたびにまた現れる
一粒の私は
いつまでも一粒の私でいるつもりらしい
あの日
真っ逆さまに落ちていく景色の中で
....
わたしは縄文の舟を漕いでいる
トチノキを刳り貫いた
粗末な舟だ
赤い犬をいっぴき乗せていた
これが最後の猟だと
わたしは思った
子どもたちは
夏の来なかった時代を知らない
もう ....
彼岸花
山の奥には残雪が
今日の風はやけに冷たく
ここにひとり
港
大型客船が停泊している
遠くには高層ホテル
約束の時刻
最後だ ....
母ちゃんと旅に出る
鞄に歯ブラシ、着替え、切符と
最後にわくわくを詰めて チャックを閉める
朝一番のバスに乗り込んだ
母ちゃんと座席に並んですわる
乗り物酔いの薬あるよ
切符は持ったか ....
忘れ去っていく言葉よりも
あなたのいのちの清さにふれて瞼が閉じる
いつまでも文字にならない
あなたの悲しげで透明な息づかい
反復するあなたの鼓動が
休もうとしている風を揺るがす
あ ....
ひとりで生きられる
生きられない
それとも、ひとりで生きざるを得ない
わたしってどれなんだろうね
※
無責任ってわけじゃないけど
ちょうど
満員電車のなかで誰かに寄り ....
私は
カラダの中に
海の記憶をとどめておくの
何度
再生しようとも
薄れはしない
漣の音
いつか
愛しいあの人が
私のことを手にとって
そっと耳にあてたなら
懐かしい愛の歌が ....
ときどき
なにかしずかによこぎる
そのあと
おきる
まっていたこと
まっていなかったこと
まんぱいになる
ロックンロールは
好きかい?
ロックンロール
最高!
ヘビメタがなければ
私は死んでいた。
明日を生きる力を
与えられる。
カラオケは好きかい!
シャウトをする。
雄叫びボ ....
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欠けた塊の怒り
輝くような怒りはあるか?
物質のように堅い岩石のような怒り
傷ついて欠けてしまうような怒り
純粋で結晶していて ....
困らせたいわけじゃない
だけど困ってしまったらごめんね
トーキン
はる
左の耳から出てきた紙くずが
右の耳へと入っていくような
かさかさしたおわりのなさ
木の間にぶら下がる健 ....
空も
海も
荒れている
鉛色した浜辺に
鈴をなげる
こんな日であっても
ひとは
生まれ死ぬのだろうか
鳥たちは
季節を選ぶというのに
どんな理由があって
生まれ死ぬのだろうか
....
自分も毛糸玉のくせして
プッチは毛糸玉と
戯れるのが好きだった
ふたつの毛糸玉は
所狭しと転がり回り
私は面白がってその糸を引いたものだった
小学生だった私と弟
そしてやっと歩き ....
なにもしなくて
いいんだ
どうすればいいか
わからないんだもの
わからなくて
いいんだ
だって
しらないんだもの
しらなくたって
いいんだ
すべてをしっ ....
あなたの闘い続けた十三年に深い敬意を覚えます
妻と愛児を殺されるという
私には計り知れないほどの
かなしみと
ぜつぼうと
うらみと
にくしみの中で
司法という巨大な組織とも闘い続け
....
食パンのみみが
初めて出会う言葉は
まだ星空が出ている時間から
働き始めるパン屋のおじさんの
「上出来だ」の嬉しい言葉だろう
スライスされる前は
全身が みみなので
工房の全ての音が ....
顔見知りの男が死んだ
いつも何かにイラついていて
斜に構える自らの姿に酔いしれていた
そんな一人の男が死んだ
※
よくある話しだけど
おんなが二人いた
別れた奥さ ....
独り暮らしに
慣れたのか
不安なのか
はたまた
楽しんでるのか
つまらないのか
休みの日の夜は
あてもなく
バイクでちょっとお出掛けをする
街から少し離れた
農道を走る ....
こんな朝に
カラスのカの字もありゃしない
太陽はふやけた面の木偶の坊だ
白い国道の上
黒いおまえは完全に死んでいる
暗がりのおまえは
いつも何かを舐めていた
おまえが前を横切る時には ....
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