虫を焼き殺すあの青い光のアレは
なんて名前だったか
誘うとかそういう漢字だったと思う
誘虫灯とかそんな名前だったかと思う
「ライトセイバーみたいやな」
なんとかレンジャーのお ....
アシカの着ぐるみは、
足から着なさい。
と、
園長先生がいいます。
だけど、
そういう園長先生の、
背中のチャックは半開きで、
中からクマの毛がはみ出 ....
また夏がめぐり来て
空も緑も色深まり
光と影が幻のようにあざやかに世界を象っています
夏の花々も色が強く
私には似合わないのです
降りそそぐ{ルビ眩=まばゆ}さと熱にも
ただただ圧倒さ ....
高くそびえる木の下に
新たな生が登り出し
土を見下ろす暗がりが
長い時間を物語る
低く広がる根の上に
新たな生が動き出し
空を見上げるまぶしさが
広い世界を物語る
この日のため ....
鬼の葬列とは、
かくも美しいものか。
日の沈む、
餓えた幻野。
果てへと続く、
燐光の列。
櫻草の上、
風に撫ぜられ、
虚ろ漂うは、
鬼の魂 ....
火を熾した後
喧騒の後の静寂
虫の音
夏の夜風
心地よく通りすぎて
汗と食べ物と酒の香りがまだ微かに鼻を指す
「おつかれ」
鳥居を背に
親友と境内の最初の階段に座って
ゆっくりと飲む ....
泣いたら負ける
負けたら死ぬと
駆けながら思う
空は死んだように青く
水色の冷たい光が落ちてきて
風が回りながら蹲ったように
垣根を検閲しながら
腹を出した蛙の子供達を
踏みつぶし ....
流れる水の哀しい感触に運ばれて
街の隅にたどりついた
前世の匂いのする風が
頬と首筋を等しく撫でた
桃の薄皮のような
日に焼けた 心細い皮膚を
誰かに引っ掻いて欲しかった
痛がりで ....
あれは暑い日でした
いつも通りに長い坂を自転車で下り
数十年前に廃校の中学校を横目で見る
校庭は手入れがされてなく雑草が高く伸びているが
近所の小学生が野球をする場所はなにもない
ざ ....
冷たい消毒槽は
三歩で渡ると決めていた
プールサイドの足跡が
しゅわしゅわと、夏にしみこむ
浅黒い肌の散らばる奥に
見え隠れする
白い朝顔
先生の御子だという
なるほど、鼻筋はそっ ....
その日
美しいものに出会えたのなら
喜びの音が聴こえてくる
その日
楽しいことに出会えたのなら
温もりの音が聴こえてくる
その日
大切な人に出会えたのなら
幸せの音が聴こえてく ....
いっぱい入れると
足りなくて
足りない
足りない
もう
全部要らない
と
箱をひっくりかえして
からっぽ
いっぱいあると
足りなかったのに
何もないと
一つ ....
浴衣に片思いを忍ばせて
ぼうっと光る
夜店の明かりに吸い込まれていく
君は決して
私を待つ人でなく
私は決して
君を待ったりしないと決めていて
今思えば
それだけで
私た ....
虚空を望むと広がる視野
ぎりぎりと絞られているのが嘘のように
《いま》から《いま》へと動いている
かなしみの海原が轟いている
黄昏のしじまの中で
わたしは世界を見ているのだ
浮標は ....
わたしがサミーラと知り合ったのは
見知らぬ国への好奇心と
ちょっとした向学心
辞書を引き引き書いた拙い手紙を
赤と青の縁飾りも可愛い封筒に入れて
生まれてはじめての海外文通
切手一枚でつな ....
夢よ飛べ
正しいと思ったことを
正しいと信じるがゆえに
君は今
君の夢を現実へと歩き出す
不安を抱いたとしても
君の希望があるじゃないか
夢よ翔けよ
本当と思ったことを
本当 ....
歪ませた感情
機械にねじ込んで
軽く触れれば
両耳に爆弾を食らう
透明な血は
重力に素直で
両目から止まることなく
ただ落ちる
真っ赤な爪は
モノクロの地上を動きまわり
ピ ....
夜空の星が一斉に僕に向かって
急降下してくる
星のシャワーを浴びながら
僕はひとりブリキの機関車の
おもちゃで遊んでいただけ
ひとりはなれていた
いやな ....
と
と
と
と
と
と
と
と
と
と
と
と
と
と
と
と
と
と
それは
狙っている
のだから
時間は
ありません
ただ ....
封を切った宇宙からは、
懐かしい薫りがしました。
お久しぶりです。
と、
挨拶をして、
あなたを二匙。
ゆっくり沸かし、
ふんわり注ぎます。
....
わたしは 貝殻
海に 寄せる 貝殻 。
同じことを 思っては
眠っている
明日は 晴れるだろう
ついでに いえば あの人にも あえるだろう 、
雨も 上がり おひさまが
顔を 出すだろう
か ....
どうせ歩くのなら
なるべく遠くまで歩いてゆきたい
みんなが知っているところよりも
知らないところを歩いてゆきたい
どうせ歩くのなら
なるべく遠くまで歩いてゆきたい
自分だけが知りたいと ....
女はいつも災いをもたらす
憂いを含んだ微笑みで
鏡に向かい髪を梳く
後ろ姿に見惚れてはいけない
鏡の中の女と
視線を合わせてはいけない
男はいつも災いをもたらす ....
あ、いたい、
歯が痛い、
急いで、歯医者に行かなくちゃなんだけど、
でも、そんなことより君に会いたい。
今日、今すぐ君に会わなかったら、
僕の気持ちは伝えられない。
君のこと好きな ....
草原の海に身体を沈め
その波音を聞きながら
清らな青空は
入道雲に右から左へと染められつつ
その上を鳥が大きな翼を広げ
背中で滑ってゆく
風は波音を強くし
潮の香りを濃くし
今の季 ....
雲の坂道を走る
小さなバイク
蝉時雨を横目に、ぼくは
食事の支度を
プツプツ
音を立てる落し蓋が
砂埃を笑い
山の辺の切りたつ階段を
葉っぱといっしょに転げ落ちてきた、きみを
乾いた ....
海に来て月の遺骸を{ルビ面=も}に浮かべ
白貝割りて指先を切る
貝やぐら沖に燃え立ち{ルビ蒼蒼=そうそう}と
胸に巣食うは十三夜月
月葬に送り遣るのは{ルビ鸚鵡 ....
あなたはただひと掻きするのがよい
みぎもひだりも きにせずに
記号音を置いていくのがよい
まえもうしろも きにせずに
かなしみの波形のささやきには
からだを削いでみるのはどうだろう
か ....
ひたひたと打ち寄せる若い海が、
青い匂いに弄ばれて、言葉の果てで立ち尽くす、
夏に縛られながら。
波は立ち眩んで、一滴ごとに、ほころびる海の雫が
暑さに滲んでいく――。
散らばる熱が ....
夜空に、ひしゃく星
くらやみは
すくわれることなく
すりぬける
あなたとわたし、
街灯りを遠くに眺めながら
水を打ったように静かな公園を歩いていると
一 ....
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