廃校舎に月がさしのべる
光の中野エントランスの階段を
少しずつ確かめるように登っていく
昔のクラスの自分席に座って
月明かりに照らされて
まぶしいので目を細める ....
幹に巻きつけられた
青白い麦球は
今年も
明滅を繰り返す
流れる光は
高い空に昇って
どこへ
すれ違う流れに
爪先を探す男は
今年も
うずくまる
染みだらけのジャンバーを
....
穏やかな風が吹く
冬の晴れた日の午後
寒い日のはずなのに
その冷たさはどこにもない
鳥たちはのびやかに飛び回り
土は生きている
めったにないこの日を
人も皆
外に出て心で祝う
....
砂が舞う
晴れた日ほど景色が白む
風のせいでもなく
冬のせいでもなく
グラウンドから逃げ出したい
砂のせい
砂が舞う
口に入る違和感
砂のせいだ
景色が、白い
覚えたての言葉で
精一杯表現していた頃
小さな町の小さな囲いで
小さな喜びを模倣していた
道端に咲いている花は
意識して歩かなくても
簡単に見つけられた
そっと顔を近づければ
鮮明 ....
正しいことを言うよりも
正しいことをすることの方が
ずっと正しい
立派なことを言うよりも
立派なことをすることの方が
ずっと立派だ
正しいことをする人は
正しいことを口にしない
....
はみ出した所から全てが始まった
海に浮かぶごみの中に紛れ込んだ
君宛の手紙を運ぶビンはもう
壊れきったままのものでしかなかった
それくらいいいんじゃないか
突然 ....
緑色の思い出
悠々と流れる時の中に
そっと置いていく
くすんだ深夜の幻想
俺を誘うノスタルジーを
端に置いて
崩れることのない
物語を作っていく
まだ見ぬ光 ....
なぜだか自分は
昼と夜のあいだの薄暗がりにいて
テレビから流れる声を
聞くともなく聞いている
闇が部屋 ....
机に置かれた一枚の写真
若い母が嬉しそうに
「 たかいたかい 」と
幼い彼を抱き上げている
年老いた母は安らかな寝顔のままに
「 たかいところ 」へ昇ったので
彼はひとりぼっちに ....
冬の中に
君の白い息が眩しくて
なぜか視線をそらしてしまう
ぼくがいる
冬の中に
君の凍える姿が悲しくて
なぜか空を見上げてしまう
ぼくがいる
冬の中に
ぼくの凍える姿に手を ....
銀色の穂波は
斜陽に映える芒の原
光と戯れ
丘の向こう側まで
続いている
風は止むことを知らない
運ばれる匂いは
ひとつの季節の終止符
あるいは序曲として
わたしに交わるけれど
....
わたしのなかにも
ちいさな子どもがいて、
大人になってしまったわたしを
おおらかに抱きしめているのだろう。
それに気づかせてくれたのが
あなただった。
小学校の先生をしていたという ....
その石は座ったまま
足を出さないで
意志は黙ったまま
その意地だけは
味を出しながら
維持している
重い心を思い
なぜか恋しい気持ちが濃い
その力に負けて
自分の視線を曲げてしま ....
機能が完全に停止した僕の体はすでに
冷たい鉄クズでしかなかった
暖かい物を抱え込んでも変化など
当然のようになかった
毎日流した涙の数は
数えきれないほど積み重 ....
ようやく晴れた青空に
風船がひとつふたつ みっつ
きっと誰かの夢にちがいない
あそこの空からも
風船がひとつふたつ
いつの間にか
空には風船でいっぱい
大きいものや小さいもの
....
あなたの理想は
わたしの苦痛
あなたはそれを判ろうとはしない
(寝化粧なんて誰がする
腰に手を当て拳を振り上げて
いつから偉くなったのか
わたしには苦痛そのものなのに
(朝は誰だって眠い ....
1
寒さが沸騰する河岸に、沿って、あなたの病棟は佇む。
粉々に砕けた硝子で、鏤めている実像が、
剃刀のような冷たい乳房のうえに置かれる、
吊るされた楽園。
顔のない太陽は ....
朝と歌う鳥達と目覚めを奏で
沈んだまま浮いてこれない ガラス細工を
丁寧に 丁寧に 探す
そこが 原点であり真実であるから
朝を歌う鳥達は高い空へと舞い上がり
弧を描きながらもまっすぐに ....
お隣の洗濯物も
そのお隣の洗濯物も
そのまたお隣の洗濯物も
ふんわり今日は乾くだろうと
あったかい陽射しに
目を細めずにはいられない
冬だというのに
春の匂いがするのは
あなたの
洗 ....
中目黒。
都会なんか大嫌いで
ましてや渋谷から二駅のこんな駅で
あんたと暮らすこと夢みてたなんて
ほんと論外。
この5年でこんなに苦くなった。
『思い出は美化される』
あの法則はどこ ....
川から流れる清らな音が
侘しさと寂しさを
心に響かせ
山から吹く冷たい風が
静けさと悲しさを
心に染み込ませる
いつもと変わらぬ
その時の景色には
どこか遠い思い出を
蘇らせ ....
きっちりきっちり巻いたのに
はなれてみると優しく見える毛糸だま
早く終わらせたくて必死だったのに
もう少しで終わりと思うと
何故か腕に鍵が掛かる
はやくはやく巻き終えて
マフラーと手袋 ....
季節はもう冬支度なのに
たんぽぽの綿毛になるんだと
あなたは言った
過ぎ去った日々を惜しむかのように
ひとびとは
大きな樅の木の下に集いだす
そんな季節に
たんぽぽの綿毛になるんだと
....
パスワードに言い寄られて
逃げ出したのが
IDで
イスラエルが占領している地方で
Uターンしてきて
大きなぼた餅を嬉しそうにほおばるのだ
古くさい道草を
油絵の具で描いてから
デジ ....
昨日の雨は
本当に雨だったのかと
疑ってしまう今日の青空
くもの巣が水でできている
土に水玉の花が咲いている
風は冷たいけれど
その風に乗って
タンポポのように
きららふわわと ....
大切にしていた小鳩を
私がそっと取り上げて
早く大きくなりなさいと
あなたの耳に囁きかける
男の子なら
強い猟師になるべきだと
お父様もおっしゃいました
お父様は自由に空を駆け回る
....
気が付くと
地球はもう 46億年の日々を送っていた
見渡せば僕は
何不自由なく学校に通え
今日も父が 愛車を磨いていた
John Lennon は想像することの大切さを ....
いつもとかわらない朝
私はピアノを弾きながら
ふと
最近使われてないギターに
目がいき
手にとって
音を出した
「チューニングが合ってないじゃん」
バカみたいに
一人でしゃべ ....
何も
聞こえないふりをした
何も
見えないふりをした
周波数が合わない
自分だけじゃないだろう
頭の中のノイズ
消したくて
カーラジオのボリュームあげる
優しすぎる歌声に
そんな頃もあったね ....
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