一。
どんな関係なのと、
訊かれたことがある。
からだの関係です。
そう答えると、
相手は押し黙ったっきり、
何も言わず、
泣いてしまった。
....
君がいるから 何もいらない
君が笑えば 何もいらない
嘘じゃないよ ほんとだよ ホントだよ
ポケモン全部集めたよ
うちでのこづちも見つけた
だけど、君がいるから要らなくて いらなくて ....
沈めて
と願ったその刹那
更に深い夜はやってきて
静かな音を立てて流れていく砂時計
目に見えて時が落ちていく
君の指で触れられたうなじが
私の指先までも痺れさせ
それを悟られ ....
1
もう、
ふりかえらないのだ
髪をゆらしていった風は
束ねることはせず
つまさきは
後ろに広がる汀を
走れない世界にいて
こころだけがいつまでも
波になりたがっている
....
おそいおそい冬の訪れ
あるいはそれは
いつの間にか駆けて行った冬の残り香
遅咲きの梅花
早咲きの桜花
世界の色は鮮やかに
春待ち人の思いは賑やかに
そこに舞い散 ....
吹きぬける冷たい風の空高く
ひかりの鼓動は
静かにそそぐ
雪解けをあつめて川は哭いている
生まれたばかりのわたしの春に
ひとひらの可憐な花は弓使い
瞳砕けて曇りをうるむ ....
山鳥は、
語りえない
ゴム、しゃぼん
せかいは いとも
かんたんに
喧嘩する
きみを ぼくは零す
しゃぼんのせかい しゃ
ぼんの せかいは 簡単に
....
ショパンを弾いて
ノクターン
振り向かないでそのままで
夜をつむいで
夜をつないで
けして何処にも逃げないように
ショパンを弾いて
指先が
わたしを思い出さないように
雨をほどい ....
{引用=
金色が たおれる 欠伸が 蔓延する
蛙のうた こもる ねむれない 五月 日々の罅に 滲む
ゆううつの 書物 ふあんていの音楽
刺身 ....
大きな葉の下から
そっと空を見上げると
とても薄い緑色が輝いている
そろそろ夏が生まれる
風が吹くと
きららとした緑色は
暗くなるけれど
遠くで流れている川の水のように
他の場所で光り ....
八十円切手を
丁寧に千切りながら、考えていた
軽四輪だったかどうだか
切断された偉そうな記憶だけが
粗大ゴミみたいに
音、
みいいんって
ああ、またかまただ
....
こころは、
ころころしたいので、
いまからころころしますけれども、
ここでころころしても、
いいですか。
ころろ、
ころがったりもするので、
ころころもあもあ ....
焼けていくその空は
思ったより高くなかった
天に伸ばした手が燃え染まる
風が私と空をつなぎ
とけていく境界線
明け方の雨が露のごとく
草にとどまっている
匂い立つ今 ....
1
眠れない夜は、
アルコールランプの青白い炎に揺られて、
エリック・サティーのピアノの指に包まれていたい。
卓上時計から零れだす、点線を描く空虚を、
わたしの聴こえる眼差し ....
水の匂いが燃えてゆく
漆黒は
うるおいのいろ
こぼれてはじまる
灯りにけむる、
波のいろ
疎遠になれない花の名に
ひれ伏すともなく
かしづく儀礼は、 ....
悠々と二羽の鳥が、碧い空を裂いてゆく、
鮮やかな傷口を、
銃弾のような眼差しで、わたしは、追想する。
その切立つ空を、あなたの白い胸に、捧げたい。
・・・・ ....
小さな子供たちは
小指で誓う
幼稚園の無花果の樹の下で
色づく頬はうふふと笑う
遠くで鳴るオルガンはメヌエット
大きな子供たちは
唇で誓う
通学路を外れ孤独を埋めるものは二人以外には ....
朝刊から目を離さずに
気の無い空返事
それは。あなたの得意技
わたしが何を考えていようとも
お構いなし
空気のような存在
親しすぎる関係の果てに待ち受けるのは
そんな空虚さだ ....
夜はぴちょん。
月はぬくぬく眠りこけ、
ぽっかりお口を大きく開けて、
しずくを垂らして、
ぴっちょんぴっ。
月のしずくはほろほろほろろ、
夜をすべって、 ....
胸を開け
空を飛び
口をあけ
飯を食う
貴方を失う
山は連なり
思いは残り
心は切ない
靴音が哀愁を
君は振り返り
一層苦しめた
愛に渇望した
海を目指した割り箸は
川の途中で石にひっかかった
体を縦にしても横にしても
前に進まなかった
石を超えられるほどの水かさもなく
ただその場に押さえつけられた
自分が目指したのは
こんな壁 ....
夜の街で闇をさがし
身を隠す暗がりにも
灯りを求めたりして
中途半端なままだね
いつもぼくらは
言葉の空白にふるえて
粋な単語たちをあつめ
草の実に糸を通すようにつ ....
波打ちぎわに
光る、{ルビ蟹=かに}
蟹をみていた、飴色の
もう、よしてしまおう
人間なんて、よしてしまおう
白く鮮やかに咲きほこる、
一本のモクレンの木の孤独を、わたしは、
知ろうとしたことがあるだろうか。
たとえば、塞がれた左耳のなかを、
夥しいいのちが通り抜ける、
鎮まりゆく潜在の原野が、かた ....
やさしさもみんな抜け落ちて
そいつはセーヌの流れに消えた
キリストマリアを引っかいて
破れた爪で十字を切った
....
東の空が明けるころ
あなたはまだ
真綿の中で眠っている
朝の日のひとすじが
あなたの頬を
さくら色に染めて
はやく春がみたい
と言ったあなたよりも先に
春をみた
大講義室で机に突っ伏し熟睡
ようやく目覚めてもまだ教授は話をしている
大学の講義はやたらと長い
君はすこし呆れ顔で
顔に寝あとついてるわよって
解読不能な文字が並ぶ僕のノートに ....
木がいさぎよく裂けてゆく。
節目をまばらに散りばめている、
湿り気を帯びた裂け目たち――みずの匂いを吐いて。
晴れわたる空に茶色をばら撒いて、
森は、仄かな冷気をひろげる、静寂の眩暈に佇む ....
その竹薮の中は時が止まっていた
動いているものは風と
竹の軋む音だけ
空を見上げれば
青空の中を積雲が静かに流れる
心の中では
懐かしいオルゴールのメロディーが
小さく流れている
理に ....
長い年月を波に洗われて打ち上げられた
流木のように古びた椅子に座っている
おまえがいるだけだった
正午の青空のした 影もなく
呼吸さえ 受動で
降りかかる陽射しに ....
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