遠い飛行機のような音を立てる
夜の、曇天
その鳴動、鳴動、鳴動、
大気は夜を続けるも
わたしは仰向けの形、ひっそりと静まり返り
暗く目を開けるだけで
何かを促す性能はな ....
卒園式ではいつも以上に
園長先生のお話 長いね
と うちの子供が気にかかる
寝てはいないか
ちょっかい出してはいないか
そんな心配もなんのその
みんなちんまりと神妙な面もちで
....
最近ずっと夕焼けを見てない
柔らかな雨が頭に響いて痛い
稲光を何だか遠くの星の出来事のように聞いていた
知識の詰まった紙の束は
三枚の銀貨と交換された
片手におさまる一個の世 ....
朝の駅の構内で
改札の向こうからホームの階段を上る
黒い制服の青年が障害を背負う体を傾けて
こちらに向かって歩いて来る
眼鏡の奥の瞳には
いつも光を宿らせて
不器用な歩幅を
一歩 ....
「おお、神様、いったい何故、誰がこんなことを!」
「お前が犯人だ」
「ど、どうしてそんなことを。何を言っているのかさっぱり…」
「まだお前しかいないんだよ、アダム」
....
黒いシャツにズボンじゃなくてスラックスをはいた
あどけなさの残る女の子は
中学生くらい
うつむいて
診察室から出てきた
お父さんは座る場所を探していた
女の子は体とは不釣合いに
幼児 ....
駅の階段を上がると
おいしいトマトソースが食べられるパスタ屋さん
「どうして地下鉄が地上にあるの?」
そう聞かれても
コーヒーとパスタのセットは550円で
メニューは二つしかない
トマ ....
わたしの皮膚は薄いから
毛細血管が透けてしまう
血管人間
欠陥..
理科室の
あの人形が
かわいそうに思えてきた
だれか
服を着せてやってくれ
色白の人は
とくだね ....
青森の三月 あなたへ伝えたくない事
小学校四年
母がまだ居た頃なので多分小学校4年生だろう。
僕は母に連れられて、
青森市の新町という繁華街へ買い物へ行った帰り映画をみた。
母は ....
加速中の一歩は、減速中の一歩よりはるかに重い。忘れることはたやすいが、思い出すことは更に容易だ。
地下鉄を歩く。
離島をイメージする。
ほぼ真円、全周三キロメートル、最高標高百メー ....
探しものはあっちみたいだ
ゆっくりと
確実に
足取りは早くなる
あおそらの下
知らない内に僕は笑って
オレンジ色のワンピースを着て
散歩に行こう
目的はないけれど
一緒に行こう
あなたは
「心が血でいっぱいだ」
と書いていた
あなたの目に空が何色に写るのか
私の顔がどん ....
広い、窓のあった部屋
私の一部分がそこで途切れていて
確かな
薄い胸で必死に空気を集めていたこと
息切れと
ほんの少し気持ち良いと思える
ぴりぴりとした痺れとで
滑り込んできた電車は目眩 ....
歴史にもしもはないという
死傷者の数はこれから増えていく
けれども
出来ることは出来たのだと思う
病院はくずれていなかった
街は街ごと崩れてはいなかった
死んでしまっていたかも ....
10貫目は
37.5Kg
子どもと大人の境の
重さというわけで
それなりの意味があったと
思うのだ
37.5℃は
体温より少し高く
芸術家の卵を孵し
キタキツネの缶詰を
....
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