海辺
木立 悟






だらしない服が
花のように香る
からだの線が
浮かんでは消える
あなたは
無言にたなびく


降る曇
くちびる
とじたまなこ
うしろあたま
ひとつかがやく


岩のなかの声が溶け出し
己ればかりが流れてゆく
蒼が来て 蒼が来る
夜になり 夜になる


湧き水が
近づいては遠去かる
器をのぞきこみ
他の湧き水のまわりをまわる


影が集まるところ
音もまた集まる
水が向かうところ
水が向かうところへ
たどりつくたましい


あなたの服ではないのに
なぜそんなにもなじんでいるのか
凛とした無表情と
あどけないからだのはざまを
なぜそんなにも満たしているのか


水や音や過去や震え
それら粉の多い夜の
冷たさばかりを肌に残して
息は狂おしく緑を分ける


既にそこには無い鳥や波
飛び立つと同時に消える影
あたかもあなたに似ているようで
なにもかもあなたには似ていない
あなたは砂を統べる砂
常に生ある砂なのだから


小さな器を逆さにすると
小さな滴がこぼれ落ちる
すべての波のはじまりのように
色と痛みは打ち寄せる
そのままのあなたに打ち寄せる

















自由詩 海辺 Copyright 木立 悟 2008-07-12 12:58:22
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