すべてのおすすめ
落とし穴を掘った
たくさん掘った
通り行く人たちが
すこんすこんとはまっていった
はまった人のいる穴に
名札を立てかけて
名前なんて知らないんだけど
名札があった方が便 ....
夕暮れ色の飛行船、
たくさん空に浮かんでいたけれど
空と一緒の色だったので
誰にも気付かれないままでした。
*
毎朝、起きたらすぐに顔を洗います。
....
帰ろうとしたら壊れていた
自転車
サドルが遠く 曲がって
きっと人ごみに
押されたのだろう
かたちあるものは壊れていく
いつから
怖くなくなったんだろう
父の記憶も
それに似 ....
ある学校の授業で
問題が出されました
イヌ クマ ヘビ ヒツジ ウサギ
この中で仲間外れはどれ
先生も生徒も
別に答えは何でもよかった
答えの理由を楽しむ
そんな問題でクラスは盛 ....
反芻し過ぎて擦り切れそうな程ささいな逢瀬
回想から想像に変わる
あなたの表情より手のひらの感触が伝えてくれる
淋しい言葉は口封じされる
甘く甘くいるためには2人は申し合わせない ....
猫が激しく鳴いて春で
いや正しく言うなら地球のこのあたりは春なのだ
こちら地球そちらは
あずかり知らぬあっち側の諍いに
液体ヘリウムをぶっかける
それから逃げだす
ものすごくものすごく ....
ひかりが刺す
季節を切り取って
差し出す
ひかりがさす
まぶしいから
細めて
睫に燐光がいくつか
引っかき傷もいくつか
ついて
それできみの輪郭がようやくはっきりした
....
駐輪場で鳩がむねを撃たれて
仰向けに休んでいる
白い翼をとじ
両足を揃えてたたみ
なにを見ているのか
つめたい檻の外へ
まばたきを急ぎながら
その心臓は重すぎる
あかをはき出し ....
柔らかく 昏い光が
ひっそりと漏れだしたように
わずかに傾斜した平坦な地の
襞に、影
鉦がきこえて
列がゆく野は
さびしい海にむかって開けていった
或るひとつの手の
美しい ....
・
友人に
擬態する癖のある女がいる
よく家の中で
かくれんぼうをする
二人で
わたしが鬼で
十数えて振り返ると
家の中はしいんとして
空気がうす青い
百年前からこうし ....
互いに背を向け
曲がり またたき
空と波を
指おり数える
月が隔てる言葉たち
手のひらの海
無数の帆
とまどいは澄む
濁りのあとさき
透明でもなく鏡でもな ....
いくつかの知識を失くしたために
それの侵入から逃れるプログラムを
組み立てられなくなった
僕は時々あなたと話しているつもりで
言葉を発していないことがある
あなたは僕を寡黙だと思っている ....
ちょうちょ
菜の花
羽のどこかに重たさを持って
原色を彩り続けて
その向こうに
ねえ
聞こえるかしら
見えているかしら
この先に ....
はやくおとなになりたいなあ
あしをぶらぶらさせて
リリコちゃんがいう
ほっとけーきをじぶんひとりでやいたり
(たこやきも とつけくわえる)
おおきないぬをかったり
ぱそこんでむずかしい ....
小瓶に詰めるものは
失くしたものなのです
悲しいものなのです
いいえそれとも
ザラメの飴玉
つやつやと輝くルビィの様なりんご飴
夢で拾った銀の螺旋
ああ、其らも失くしたもので ....
すなを ふむ
ひかりのかたちをした すなを
さされば いたいよ
ひかりをかたどった すな
ながされてはやく
てのひらにむていこうなすなになりたい
すなお
にぎりしめて くずく ....
「ぼかぁ…こっちにいきたいんだよ」
暗夜のY字行路に、かみそりの如く光るレイル
中年で細身の車掌が傍 ....
赤ちゃんが乗っています
世間でステッカーがはやりはじめると
和泉町3丁目にある零細ステッカー会社の社長はへそまがりだから
赤ちゃんだけ特別扱いするのはおかしい と言い出し
次のような亜種をどん ....
木は影になり
しずくを流し
銀はせつな
銀はとこしえ
光の粒が
川になり
見つめるまなこ
満たすはじまり
昼の星の
糸をたぐり
ふたりで赤子を
紡ぎま ....
さびれた館の馬像の陰から
子供が数人こちらを見ている
塀は陽に照らされ指にやわらかく
その上で子供のひとりが
虫喰いの木洩れ陽を目にあてて笑う
水たまり ....
威風堂々 彼は荒野を行く
その足音は 大地を揺るがし
その瞳は 燃えるよう
ある者からは 恐れられ
ある者からは 忌み嫌われて
彼は広大な領地を手に入れた
一人の男が無断で入ってく ....
ピアノ、ピアノ、ピアノ
ピアノが招く
ピアノの国へ
音から生まれた
音の鳴る子が死んでいく
生まれることが寂しいと
音の鳴る子は死んでいく
船縁叩いて鳴るピアノ
ピアノの国から
ピア ....
雄株は欲情に駆られ
自慰を繰り返し
めしべは空気中から
出所不明の花粉を受けて
子を宿す
植物界は古より
一婦多夫世界を構築している
誰も僻まず
誰も疑わず
動物は一人きりを ....
「ねこの手」
ねこの手も借りたいような
忙しいとき
君はさりげなく
手伝ってくれるけれど
君の手が小さく動くたび
僕は何もできなくなってしまう
*
....
意外なところから
闇が降りてきた
その中で書いていると
母が向こうを向いて
おばあちゃんと
しゃべろうとしている
しかしお母さんの許せない気持ちが
歯の形になり
お母さんの言葉は
....
観測史上最大級の台風が上陸した日の夕方
未確認の大型生物の屍骸が
四国のとある漁村の浜辺に流れ着いた
地元漁協の連絡を受けて
ある大学の海洋生物学の調査チームが到着したのは
発見から14 ....
奴は
山に登るのだ
そう言っては、ニコン党のくせに
私のオリンパスを借りに来る
高山植物を撮るのだという
いつも汚い日焼け顔をしわくちゃにして
稜線を越えていくホシカラスの夫婦
....
”管制塔
管制塔
わたし、もう大人です”
インカムをつけた父親たちの
腕組みと低調な呼吸音
誰かが返答をしなければならないが
彼らは呆然という姿勢で腰掛けたまま
....
街には、真夏と人ごみがあった。
真夏と人ごみは、高架橋のしたの、タバコの吸殻を知りはしなかった。
ただそいつは、そのことを知っていた。
タバコの吸殻には、銘柄が刷り込まれていた。
銘柄は、 ....
空に高く 灰にひとり
思い出の外へ繰り返すもの
夕暮れのない夕暮れを見る
銀の鱗の目に指をあて
器をめぐる光と火を聴く
底にはじける姿たちを聴く
波を走る白い炎が
し ....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42