漁色の日々に
前澤 薫

漁色に耽った
日々に
思いを致し、
日は暮れてゆく。



俺が
舌の先で
乳首の先端を
舐めれば、
お前は
声を漏らす。
胸を震わす。
目を潤ます。
そう、
すべては微かに
蠢いている。

じっじっじっ……

俺の胸の、
扉が花咲く。

おお至極まで、
これは至極まで
連れて行かねば!

しごく!

誘き出せ!

俺は、
引き裂くように
お前の様々な敏感な場所に
槍を突き立てる。

唾きを
べろから
掌へと
べったり塗りたぐって、
槍と襞を濡らして。
奥底まで挿せる
その場所に、
一気に貫き通す。

そして、
槍を引込めると。

おお、
ヒクヒクと。

その肉の襞は
蛭のように
息づいているではないか。

舌を蛇のようにして、
蛭に纏わりつかせ、
粘着させる。

俺とお前は寄生する
生き物のようだな。

ああ!
もうこうなったら、
無限ループだ!

挿し抜き挿し抜き、
ひーるひる。
挿し抜き挿し抜き、
ピークピク。

ああおお
ひーひー
おーやんひーふぃー

あんあん
のんの
なんのその

如何だ!
空前絶後の
珍プレイは?

あ?
如何だ?

おい!
お前は
俺の頭を
必死になって
押さえてる。

生意気な奴め!

顔面を
引っ叩こうと
手を伸ばし、
お前の眸を睨めば、
雨でぐっちょり
濡れている。

濡らしているのは
蛭だけではないのだな。

槍が痛いか?
恋しいか?

俺は
お前の濡れそぼった眸を
近視の目線で
盗み取る。

そして、
お前の薄い唇を
べろで突付けば、
汁気と熱気で
ねっとりと。
お前はぐっちょり
浸りきり。

お前の肌に
くっついている
襞という襞は
ぜーんぶ
ぬーれぬれ。
ぐっちょぐちょ。
ぐっちょりんぼ!

ぽんちぽんちょりと
いかれちまった
槍の先。

痛いぜ!
だけんども
先端は零れる雫で
ぐっちょりんぼ!

ふはふは
はんはん
んんんー!

息も絶え絶え。

うん、そうだ。
襞と槍の競演さ。
俺らは、まさに
深く刻み刻まれ、
紐帯を形成するんだ。

タービンは
高速で回転して、
軋む音が
ギコギコと
何かの証のごとく
耳を劈く。

はーはーはーはー
逸るわ逸るわ

順行し、
反復していた
距離も約まり、
やがて違う方向へと
暴発する。

あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ、あああっ!

俺も、
お前も、
昨日犯した彼奴のことも、
その前の彼奴のことも、
碌でもねえ奴だったけど
俺に息衝く頭のおかしい彼奴のことも、
引っ叩きまくって
ひひんと嘶いた彼奴のことも……
きりがねえや!
全部が全部、
一緒くたに脳くそみそに組み込まれて
ロケットは
びゅーっと
妙に牧歌的な
(何だこりゃ)
夕景に放たれる。
そして、
揮発するオイルのように、
一気に
消えていった。

お前と
濃い目線を交わして、
逸らすと、
途端に互いが違う方向へと
袂を分かつた。



とうに
光と影の隔てなく
俺の身体は
闇に包み込まれている。

槍と襞で突付きあった
疾火のごとき行為のあと、
コンクリートの寝床には
欠片ばかりの
枯葉だけが
辛うじて残っている。

枯葉とともに、
住まう家を
焼き払おうでは
ないか!

あの熱に浮かれて
漁り惚けた
日々を思い出すために。


自由詩 漁色の日々に Copyright 前澤 薫 2009-03-04 17:27:56
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