木立 悟





凪と鉛
曇が地へ落とす火
色より広いまぶしさの
まなざしのふちを洗う雨


水を踏み
坂をのぼり
鈍を振る
頭は 音になる


空に浮かぶ火が薄まり
他の火を映す鏡となり
火に戻ることなく沈むとき
朝はひたすら騒がしい過去


影のないもののための灯り
人のかたちを忘れゆく道
次の野まで野をまたぐ
巨大なけだものの一歩を嗅ぐ


内に傾いで鳴りながら
ひとつまみ 鈴ひとつまみ
夜を滴に閉じようとして
あふれあふれて街は流れる


水が水に刺さるかたちに
雨音は残り雨は去る
ぬぐってもぬぐっても鳴り止まぬ片目の
まなざしをまなざしを歩みつづける


















自由詩Copyright 木立 悟 2008-12-20 17:31:26
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