すべてのおすすめ
羽も 曇のかけらも息苦しく
空の喉から吐き出されている
水平線に生い茂る咳
白く白く渦まく風
動かぬ曇の歯車が
動かぬままに重なりつづけ
やがて月に照らされながら
....
砂の時計をひっくり返し、3分待ったらふたたび汗にまみれてきっと目覚めるだろう。階下で眠る私の家族を起こさぬようにそうっとタオルをとってふたたび夢にそなえる。祈りを言葉にかえてとなえる。
....
ナホちゃん
花を摘んであげよう ほら
短い時の中に隠れていた
にじんだ星みたいな花です
砂利の敷かれた軒下で
開いた春のままごとの
ほんの少しのお客さま
困った顔のお客さま
....
わたしの前の席が空いたけど
今しも都市のかなたに沈もうとする大きな夕陽を
見続けていたかったので
座らなかった
燃え滾る線香花火の火球のような
太陽だった
それを反射して真紅に光る壁面 ....
暑い
むしむしと暑い
〈病院の冷房は皆さんの健康のため26度設定です〉
自律神経失調症の僕は
ぼうっとしてしまう
ぼうっと遠い海を思う
青く涼やかな海原が
静かにたゆまず波打って
潮の ....
園芸すきな
こてんはあげん先生
満点くれへんかった
こたえのない問やから
空欄のまましとったら
そんでは点やれんのやと
ほんならまともなこたえて
そん花壇に
さいてたんかいの
....
やまどりの
朗読するように
心涼やかに
鳴く声を
聴く
山頂の展望台好きな
ヤマノムスメは
深い谷川に
落とされて
沈められ
あられもなく
ただ死にゆく
そんなさだ ....
いとしくていとしくて
星空を仰いだその
裸の心
ではなく
裸の体
を
そこにみつけたい
ずっと伝えたかった
生まれ育った田舎の田んぼのあぜ道
泥まみれになって駆け抜けてたあの ....
今朝、新聞で見た6文字
「帰還困難区域」
関係ない人だというのに
ふと、ふうっと、ため息が伝いました
だれかの家に残された
食器や、棚や、ドアの傷
スーパーのビニール袋や、プラスチ ....
年末年始の休みは若い二人にとって
一緒にいるだけで十分だった
ただ大晦日の大掃除の時は派手な喧嘩もしたが
弾ける二人に年越し蕎麦なんて関係もなく
ましてはおせち料理なんて気にもしな ....
ぜんぶ、紙吹雪になったらいいのに。
そう呟いた人から順に紙吹雪になっていく。
街は君の涙を無感動に見つめていた。
僕達の毎日は、いつまでたっても世界に届かなくて、
幸福な朝にだって白い孤独がち ....
落ち葉が集まる
回転ドアの中
振り返る季節に
折り目をつけようと
頬を叩いた紅葉が
赤くなって
蟹みたいな歩き方で
立ち去る
人に踏まれながら
指を捨てたら
大事な約束を
....
そのころの
ぼくの悲しみは
保健所に連れて行かれる猫を
救えなかったことで、ぼくの絶望は
その理由が彼女が猫は嫌いだからという
自分というものの無さだった
ぼくの諦めはその翌日も同じように ....
こツン、と
硝子戸がたたかれ
暗い部屋で生き返る
耳鳴りがしていた
からの一輪挿しは
からのままだ
幼い頃、祖父が置いていた養蜂箱に
耳をあてたことがある、蜂たちの
羽音は忘れたけ ....
帰り道に空になった弁当箱に納めたのは月でした
夜の道路にころりと落ちて悲しくて
これでは死んでしまうと思ったので
それにしても十月は騒がしく
息は
吐かれるのを忘れられたまま
コン ....
丹後富士の頂へ
うろこ雲が巻き上げられていくと
明日は雨が来るといつか聴いた
あれはだれの言葉だったのか
町を歩く人びとは明日の雨を思い
空を見上げることはないようで
誰もが今を足早に ....
秋が来て
少し硬くなった
夜と言う果実
その表皮を
ゆっくり
ゆっくりと
冷えたナイフが
削り取っています
水のような風が
ダイアモンドの粒を
吹き上げながら
刃先へと運 ....
石ころになりたかったんです
道のはしっこで
誰の目にもとまらないように
ときどき蹴飛ばされても
誰のことも恨まないような
ちいさな石ころになりたかったんです
たいせつな物は思い出の中に ....
やさしいひとが
笑えない世の中で
山河に吠えている
一体何と戦っているんだ
言葉を交わせないひと
心を通わせ合えないひと
ひとつの世界しか見ないひと
ふりかえることのない ....
空を横切るシャボン玉に映る
街は水槽の墓場みたいな
プランクトンを浮かべた光だ
高層ビルが歪んで見えるから
手が届いたらタイムカードを押して
ブランコを漕ぐ時間が欲しいな
腕時計の ....
瞬きするたびに肌を刻んで、わたしは大人になっていく。昔よりもぼやけた視界のどこかで、この街では星が見えないと舌打ちが聞こえた。ここも誰かの故郷なのだと、わたしたちは時々忘れてしまうね。この目が誰の輪郭 ....
朝焼けから逃れ
倒れ臥した
ささくれた木目に
つらなる
鳥のまたたく気配に
髪の伸びる音は擦り寄り
はぎ合わせた日々に刺さった
あかい
年増女の怒鳴り声が
ふるえる
二重ガラスはあ ....
待つことになる約束などしなければよかった
待たせるような人を好きになってしまった
待っている間に雲を水平線を見ようか
暑い夏のこの駅で私はあなたを待つ
そういえば乗降客はいない
気の早いアキ ....
一日の終わりに西日を拝める者と 西日と沈む者
上り坂を登り終えて病院に辿り着く者と そうでない者
病院の坂を自分の足で踏みしめて降りられる者と 足のない者
西日の射す山の境界線で鬩ぎあいの血が
....
半粘性の液がとくとくと垂れ流れている
青緑の、今は白反射な広野に透き緑な液が注がれている
心地よく伸びる地平線に赤若い太陽は沈もうとしていて
斜度の低い残光が針としてサバンナを走り抜ける
その ....
猫のように飛べたらいいのに
草原を這い進む低空飛行で
ミステリーサークルを君に作ろう
気がつくとひとりで夜汽車を見つめて
オーンオーンと長泣きする
疲れたから全部を垂れ流して
引きずるよう ....
風が吹いていないのに
道路沿いに植えられた背の低い植物群が
多分、何百万枚もの小さな葉を従えた
何万本もある細い枝を
台風が過ぎ去ったばかりのように
すべて同じ方向に振り上げているのだ
ま ....
霧と緑と
夜に立つ巨樹
空と地を埋め
ひとり高く
低い曇の下
平原を
草より低い影がくぐり
最初の雨を引き寄せている
夕暮れのかけら
まとわりつく糸
....
星の光が時を教えてくれる。
まだ1週間もたたないから
山頂から見た星をおぼえている。
夜風はまだ少し冷たくて、
あなたは小さな声を、
(寒い)
僕をみあげてそっ ....
助手席に猫がいる
仕事を終えて帰ろうとすると
どこからかやって来て
そこへ座る
猫といっても猫らしくなく
長靴など履いて
シートベルトもきちんとしめる
近くの事務所に勤めているらしいが
....
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