チャイルドロック
小川 葉

 
 
扉がひとつあった
父さんの扉だ
厳重に施錠されてるので
誰も開けることはできない
父さんの少年時代のことは
聞けば話してくれるだろう
けれども僕は聞かない
なんとなく照れくさいから
ある夜母が貸してくれた
その鍵で父さんの
扉を開ければ子供の頃の
父さんがわかるはずよ
と言って笑うけど
僕はまた照れくさくなって
鍵は使わなかった
僕もいつしか扉になっていた
厳重に施錠されてるので
誰も開けることはできないけど
息子が扉を開けたなら
彼になら話してあげたい
僕の少年時代のことを
けれども開けてくれない
きっと妻から借りた
僕の鍵を手にしてるのに
男同士とはやはり
そうであるかのように
 
 


自由詩 チャイルドロック Copyright 小川 葉 2009-04-01 23:45:40
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