すべてのおすすめ
6月の中旬
いつもと感じが違うメールがあった
いつもだったら
<いまおきた>だったのが
<いまおきましたよ>だった
ぼくは勝手にひどく傷ついて
それから
<〜 ....
水か影かわからぬものが
器の底を囲んでいる
円の一部を
喰んでいる
またいつか会おう
会うより速い別れを
くりかえし
くりかえし
見えると見えないのはざ ....
膝の上の猫
まるで愛おしい生き物でも見るような目で
わたしを見てにゃーと鳴くの
通り雨降る、夏の午後
その視線を
すり寄ってくる体温を
振り払いたくてそっぽを向いた
うっとう ....
みずうみへ
冷蔵庫から取り出した氷たちを口いっぱいにつめこんで走った
夏休みのティーンエイジャーはただただ暇だったのである
ウェディングドレスは溶けだし足手まとい管理職就任
主人はストーカ ....
誰もいない夜明けの街を
少年が黙って自転車をこぐ
真面目に呼吸を続けながら
サルは今も進化と退化の中を
死にそうになりながら
生きているころだろう
エロい身体をした僕は ....
【アカマきつね】
そのお社は
今は大きなスーパーの駐車場になっていて
たくさんの乗用車が窮屈に並んでは
ふうふう息をついています
(アカマきつねです)
蝉の声が木々に焼き付く田 ....
ペットボトルで
金魚を飼っている男が
近頃は断水が多くて
ままならないという
言いながら口をつける
そのボトルの金魚が
今飲まれるか
今飲まれるか
気になって仕方ない
六十六年まえの今日
セミが朝からの暑気を鳴いていた
あのひかりや
爆風や
炎熱の地獄のなかに
どうしておれはいないのだ
六十六年まえの今日
いまのおれのよ ....
子宮ではなかったという。
母でないものから生まれたということだった。
私たちはかつて男の一部を削られて
この世に生を享けたと
せんせい、ではこの器官は誰の名残りなのですか。
....
○電車――走る匣体。棺。中には死人が詰まっていてぼくたちはホームと電車の隙間の21mmを各々の足で越えることで死と生を繰り返す。
○ポニーテールの幼女――黒のギンガムチェックのワンピースに黒 ....
鋭い痛みが走る
きつく押さえた指の間から
血が流れていく
ポタポタと落ちて
流しに広がる
息をのんで立ちすくむ
いったいどれほど切ったのか
怖くて見られない
ニンジンを見つめた ....
観覧車が太陽と同じ様に空にへばり付いている。観覧車、観覧車の籠が、観覧車の車輪状の手足が、回転している。
辺りは太陽が燻っているかの様な厭な匂いがする。或はオレンジ空にありありと浮かぶ籠が燃えた後な ....
あなたのことが心配で戻ってきました
と言う男がいて
へっと思った
あたしは
その男のことをそのとき初めて見たのだけれど
まるで ずっと昔から知っているようなふりをして
腰のあたりで ....
金魚鉢に金魚
上から覗き込むと金魚
胸鰭を動かし
尾鰭を動かし
背鰭を動かし
何となく静止する金魚よ。
夏だけ生きている金魚
ほんの数リットルの水に漂う金魚
横から観ると大きく見え ....
僕が死んだときには
僕のペニスを切り取っちゃってくれ
抽斗に
ナイフを入れておくから
残りの部分は燃やしちゃってくれ
僕が死んだときには
僕 ....
今日、秋葉原の、
コインパーキングの前で、千円札を拾った。
ぼくが拾わなければ、
ぼくのうしろのやつが拾うのだから、
ぼくは迷わず拾ってやった。
千円札を拾うのは、小学校の、5年生の時以 ....
その日いつもなら
それぞれが
それぞれの場所で
夕飯を摂っている時間
私はおとこと向かい合って
注文したパスタとピザを待っていた
いつもより私はよくしゃべった
髪をきれいに固めた店員が
....
桃のにおいの手が
空を混ぜて
はじまる
闇のなかを見つめ返す
まぶたの奥の水があり
ひとつの葉に隠されている
海岸と夜
手のありか
通り雨
....
つつましい
緑に幹を染められていく桜の木から
舞い飛ばされた便箋は
アスファルトを焦がす日光で
降り続いた雨とともに入道雲になった
反射光の
ちかり、ちかりと眩しい海岸線が
潮の香り ....
ひょいと見ると出窓の内側で
そいつはいつものように
出窓に置いてある
真空管式の古いラジオに
じっと耳を傾ける
ビクターの犬のようだが
そいつは黒猫だ
出窓からは朝の港町の風景が広が ....
その家に入ると
今しがた誰かがいたかのように
明かりが灯されていて
食事までも用意されているのです
でもそこに
人は誰もいないのです
これは深い森で迷った果てに
たどり着くという
....
視認性に欠ける水色は、ひたすら直進する境界線の色。どこかに背びれを伸ばすわたしに、そのどちらにも泳げない六番目のセンスがこみあげる。周期表(periodic table)の薄い領域。
いずれは呼 ....
ねえ、あなた
ワタシ
出会いの旅に出ます
ええ、わかっています
あなたがワタシを
好いていてくれてる事
なんでも分かってくれようと
熱心な所
これまでの御恩は忘れません
忘れ ....
あ、義父さん
ハンカチを一枚お借りします
+ + +
初めて会うひとはわたしのすべてを見透かしたあとに
無学なバイトの若造が生活(いちにんまえ)を語るのかと息巻きながらも
そ ....
ダイヤモンドより確かな一瞬に
石版みたいな青い空をみつける
だれの名前も刻まれることはないし
法律だって記されていない
ましてや
墓碑銘なんて思いもよらないのだ
だれかが今も死にいくなんて ....
なんでも持っているひとっていいよね。
と、友人が言うので、
たしかにそうかもしれないけど、なんでも持っているひとを見たことがない。
と、返した。そうしたら、
あなたは、なんでも持っているじゃな ....
実りすぎたのだろう
夕暮れ
ぼたぼたと光は落下し
夏の川に
鈍く奏でられる
水は鳴り
子等も響く
夏の川は
ひとつなぎの譜面とな ....
探査星という名前の
もう戻ってこない人工矮星を
私たちは見送っている
稜線に海面が沈み
草原がブルーに染まっていく
追いかけるように
次々と浮かび上がる船団は
私たちの乗れなかった最後の ....
急いでって君の手をとって
駅の階段を駆け上る
発車のベルは鳴り止まない
このままこの階段で
いつか波音を聴きながら二人で眺めた丸い月まで
登って行くことは出来ないだろうか
お別 ....
今日はずっと雨だった
鵲は傘のまま
駐輪場の紫陽花をみていた
「中に入ってればよかったのに」
「さっきまで遠野さんが」
手をつないで歩いていると
鵲は「ヒュン」と言って、タンポポを摘ん ....
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