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18
1 ....
涙の夜に
生と死を思い
絶望を失った。
生を楽しむ
そう決めた
明日は梅雨の中休み
曇りのち晴れだという
渓谷の奥深く入り
源流の王イワナを狙う
バッハの無伴奏チェロを聴きながら
未だ幼木の胡桃の木の後ろには籾乾燥施設があって
霧はそれらを囲むように包んでいる
疲労という疲労は
体のあちこちに固形物のようにしこりとなってとどまり続け
筋肉や腱を蝕んでいるような気がす ....
グラスの縁を
指でこする
音は
遠いあの日とつながっている
あの日もじんわりほほ笑んでいた
ゆっくり上がって
ゆっくり下りる
破綻のない円を
描き続ける密室の中
あなたと向かい合った
あなたが指差す方向に
ひきつった笑顔を向けながら
まだ信じることが下手だったわ ....
陽のかげる時
美しくなる人だった
陽の輝く時は
自分から遠くなった心を
捜しかねているのだ
まして雨の時など
濡れた頬に
昨夜のベーゼが生き生きと甦っている
....
「真実なんて、どこにあるんだろう?」と、ぼく。
「きみが求めている真実がないってことかな?」と、詩人。
でかかった言葉が、ぼくを詰まらせた。
文章を書くということは、自分自身を眺 ....
朝から雨
雨はすき間だらけ
貴女へと降りそそぐ雨
雨傘の下の
雨漏り
或る足音を乱す雨
アルコールを和らげ
甘く染まり
悪童に遊ばれる雨
雨に出会うと ....
大気の芯はつめたく溶けた硝子で出来ている
濃い影に瞳を浸し
耳は遠い過去でボートを漕いでいた
死んだ男の携帯番号を消していないのに気がついた
やせっぽっちの若造のまま逝ったやつ ....
風景が霞むほどの雨のあと
水たまりには青空が映る
梅雨明けも近い
空を見れば
もう次の雨雲が控えていて
ころころと変わる空模様
そんな空の下を
こどもたちが
笑いながら走ってい ....
あー、なにも変わらない、ボロの部屋
ゴミ袋の中の昨日と分別中の今日
そして明日も良い天気かな 少し不安
とりあえず、納豆&卵かけゴハンを食べる
おそるおそる粘つく息をして 咳き込む
叫 ....
{引用=
日々のいたみを忘れるように
ときおり視野の淵をはしる線
四季の陰影をかなでる奏者
モノクロームで、ことたりる
もう
彼方からの
....
光の骨をなぞる指のことを もう思い出せない
言葉を思いかえすほどに
少しずつずれて嘘になってゆく
そのグラデーションをせめて美しく
夕映えに織り込んで
待っているうちに
身体は闇の鱗で ....
今日は何の花?
白い花
線香花火、みたいね
名前はなんて?
名もない花、知らない草
ナモナイバナ? シラナイソウ?
ん?
そんな名前があってもいいね
降らないと思って降る雨よりも
降ると思って降らない雨のほうがいいにきまってる
It don't come ea ....
月が欠けてゆく
今宵は更待月
琥珀の水を傾け
夜は更けゆく
明日を占う指先が震える
{引用=たった一杯のカクテルに託した夢物語}{引用=月の流れのように見えたのは
私が酔っていたから
あなた自身の美しさを知らないあなたの
金糸雀の様な笑い声を
頭上高くに聞く}{引用=そのシル ....
掲示板
イタコです。週に二度、ジムに通って身体を鍛えています。特技は容易に憑依状態になれることです。しかも、一度に三人まで憑依することができます。こんなわたしでよかったら、ぜひ、メールください。ま ....
水の輪郭 固くうねらせる曲線
脈動も静かに 寛やかになでられ
水の流速 軽くとばされる集中線
はしゃぐ裸足 滴の臨場 踊る
一斉に鳴り出す風鈴
一斉に飛び出す飛行場
必要なのは傘と ....
{引用=ハイヒールの足許が男の鼻先を嘲笑う
「欲しければ尾を振ってついておいで」
街の角で ふと女の姿が消えた
「欲しければ、そこで涙をお流し」}
※
天上か ....
{引用=
潤んでいる。日差し。君のその白い面持ち。夏のプールの青さを反映させながら、水面に浸かっている君の、まだ少しだけあどけなさを残した、その朱色のくちびる。水色の水鏡(みかがみ)にそっとくちづけ ....
愛のためなら命を捧げよう
でも愛より大切なものがある
それは見えない我が魂
この身は仮の姿だから
いくらでもきみに捧げる
遡れば
ぼくらは一人の母親から産まれた兄弟なのに
殺戮を繰り返すのは近親憎悪なのか
この世の果てまで流血を求める
誰もが幸せを願っているのに
自分の周りだけが幸せでいたいのだろう
血を血で ....
瀧の轟音
小鳥のさえづり
風に揺れる葉擦れ
せせらぎの旋律
{ルビ渓=たに}は音に満ち溢れている
なんてことない夜に
マンガみたいなことないかな
おもしろいことないかな とか
ああ。今がそこまでおもしろくないんだ、と
面白かったときを一瞬
思いだして反射する
もう落ち葉みたいに
....
詩人は筆を選ぶと誰かが言った
釣り人は竿を選ぶ
今夜は憧れの渓流竿を落札した
宝石のような魚が呼んでいる
明日は雨だが深山の様子を視にゆこう
挙動不審でも怯えていたわけでもない
ただ少しだけ、自分自身から離脱したような感覚があっただけだ
道を歩いていたら、おばさんに声をかけられた、どこの方?
僕は、なぜ、人に声をかけられると、妙に ....
論理的には全世界が自分の名前になるということが理解できるか?
(イアン・ワトスン『乳のごとききみの血潮』野村芳夫訳)
ほかにいかなるしるしありや?
(コードウェイナー・スミス『スキャナー ....
彼には、入れ墨があった。
革ジャンの下に無地の白いTシャツ。
ぼくを見るな。
ぼくじゃだめだと思った。
若いコなら、ほかにもいる。
ぼくはブサイクだから。
でも、彼は、ぼくを選んだ。 ....
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