すべてのおすすめ
きみに死んだ弟をあげるよ。
もうじき死ぬんだ。
そしたら{ルビ暴=ほたえ}たりしないからね。
もう駄々をこねたりなんかしないからね。
手間のかかんない
とってもいい子になるんだ。
....
月に葉隠れとはいうけれど
そぞろ虫の影におびえる酩酊者
道端で眠る小地蔵が倒れて
まだ青い無花果の実が零れ落ちている
....
卒業式より入学式
きっとそのほうが近い
おわかれが悲しいより
ちょっとどうなっていくのかなって
そわそわ、未知の道
ようこそと迎え入れる
手の花束を渡って
そこはしばしの ....
これは季節感のない冷蔵庫
一定の地位を占めるドライフルーツは罪なのであります
森の中で目覚めたまま立ちつくす僕のハムストリング
....
それはこれのパクリやんて続けたら
いつのまにか独り
パクリでもすがりつきたい
みかづきのはじ
新月になれば落下する
不時着し
さがしもとめた
蜃気楼から
かきならせさけべ
....
ウププププ。
「あなた、サツマイモのにおいがするわ。
それも生のね。
けっして焼きイモじゃないわ。」
恋人のドリーム・スネークが
どもりながら反論する。
「き、きみだって。」
「 ....
まやは水草の満ちる夕暮れでも
草原しかなかった過去のように
かたわらの湖をみつめる
修理費のいらない世界だから
ただ自然に流れていく世界だから
森の陰でその光景をそっと見つめ ....
尻の曲線に墜落した
堕ちたのは、
きっと酒のせいだ
窪みから下腹部を抜けて
波打つサテンのシーツを泳ぐ
女の夜は満天の星空で
凍った涙のように美しかった
柔らかな乳房の谷間で
....
コリコリの農家の子として生まれたカタコランは、
九才の時に神の声を耳にし、全知全能の神カタコリの
前ではみな平等であると説いた。布教は、カタコラン
の生誕地コリコリではじめられ、農家で働く年寄 ....
すぎさるものいとし
いつものみちよるべなく
てのうちいれた指の
すぎるもの零れぬよう
はかりにかけるちのこえ
わすれてに仕舞う
いちぢくのみの爪さき
海のうちおちてくみ
ゆうど ....
夜中に目が覚めた
真っ暗な部屋に夜がひとり
しんと静まり返った夜が
ぽつんと立って、
なにも言わずにずっといる
朝まで立ちつづけたら
きっと疲れるだろ
よかったら、
ボクのそば ....
(内臓はからっぽ)死んだ馬の胸の中に、
{ルビ紙縒=こより}で拵えた聖家族が暮らしている。
1:12 a.m. 雨が降りはじめた。
聖家族の家は茸のように雨に濡れる。
小鳥は頭蓋骨に雨を入 ....
――外気温2℃。
深夜の阪和自動車道を
オートクルーズで突っ走る
後部座席には竿がある
目的は、磯釣りだ
前回の屈辱を晴らすべく
ウキをハリス側にセットした
これで仕掛けは撒き餌と同 ....
こんにちわ、
北風さん
扉のない家にようこそ
ひとつしかない部屋には
暖炉があって、
メラメラとよく燃えているだろ
冷っこいおまえさんを
ポカポカにしてあげたいから
しばらく暖 ....
{引用=
そのことについて
その後のことについて
しゃがんで空を見た
そこには何も無い。
そのことがそのあとにあったのであれば、
その前のことを想像しま ....
桃の実の、そのなめらかな白い{ルビ果皮=はだ}は
――{ルビ赤児=あかご}の{ルビ頬辺=ほつぺた}さながら、すべすべした肌触り、
桃の実の、その果面の毛羽立ちは
――{ルビ嬰児=みどりご ....
小さな青虫が
葉っぱを虫食いにして
生きてゆくみたいに、
夢を壊して、
優しさを捨てた男と
胸のはだけたドレスの女
ふたりはいつか
美しい蝶になって
この街を、
飛び去りたか ....
今朝出したゴミがそのまま残って
「燃えないゴミは水曜日です」と張り紙がしてあった
水曜日の朝も残ったまま
「今日は水曜日です」
仕方なく持ち帰り部屋の隅に置きっぱなしにしていたら
いつの ....
川べりの道を歩きながら
ここにいることを確かめる
ここを僕は歩いているということを
そして車の音だけがしている
川べりの道を歩きながら
魚の跳ねる音がすると 僕は すぐに
そこを ....
1584年の天正遣欧使節の後、
反カトリック勢力である
ネーデルラント北部7州の独立後、
オランダ東インド会社の設立と
アムステルダム銀行の設立を見たうえで
伊達政宗は支倉常長に命じて
ス ....
あれは五年前、ぼくがまだ大学院の二年生のときのことでした。実験室で、クロレート電解のサンプリングをしていたときのことでした。共同実験者と二人で、三十時間の追跡実験をしておりました。途中一度でも ....
ズズズズズズドンッと
とつぜん、学校が
手足をのばして
立ち上がる
で、ドドドドドッスン
ドスンと、しこを踏むと
走り出した
窓から、扉から
子供たちがこぼ ....
{引用= object. }
人の手
に依る。
風雨の蒼に堆積した
埃を払う
木肌
に触れる
涼しげな冬
の絵に
雪が降っている
窓の外には
いつもの
静かな朝
....
三つの色、
一つの終わり
声と息が重なり、
いのちを紡ぐ
春、
菜の花が咲き
夏、
青い夜に
秋、
幾度もの口づけ、
瞳に映るのは
紅蓮の炎
めぐる季節と
想いは ....
もはや零戦、
向いにたなびく羽根
とおりの母屋
の棚
そっと舞い降り
終着地
辿りついたのは
平屋の
墓地
置き忘れたもの
戸 ....
登場人物 夫──壮年のサラリーマン。
妻──夫より三歳下。専業主婦。
娘──短大出たてのOL。
舞台 東京都世田谷区の一戸建て住宅。
(平成二年、八 ....
君のこと 好きに決まってるだろ
もちろん君の旦那も 君以上に好きだ
ゴメン ボクたちには
君に話せない 秘密があるんだ
察してくれ あまり深く訊かないでほしい
ボクたち 誰か ....
ぼくが帰るとき
いつも停留所ひとつ抜かして
送ってくれたね。
バスがくるまで
ずっとベンチに腰かけて
ぼくたち、ふたりでいたね。
ぼくの手のなかの
きみの手のぬくもりを
いまでも
ぼ ....
その手についた砂が
立小便したペニスにはりつく
まなざしは少し不安げで
夜の川の冷酷さに溶ける
パンダを見た先週の
頭のふけがサラサラと落ちる
まるで小穢い悪魔の様だ
弱い酒がくるりと廻 ....
あのラーマが販売を終了する
ラーマとは、インド神話最大の英雄の一人で
タイの現国王もラーマ10世なのだが、
販売を終了するのはマーガリンの名前だ
ボクたちは、あたりまえのように
毎朝パン ....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70