硝子造りの七色都市構造が、瞬間的大瓦解を経験した夜明け
かつてない沈黙と瓦礫の地に、透明な砂がきらめき流れてゆく
ひときわ目立つ明星の下、
青く波立つ薄い硝子板に挟まれて
銀の髪もつ鉄製の ....
つないだてをはなさないままで
わたしはねむりにつきたいのです
あなたは ないてない とつぶやいて
またなくのです
あのひわたしが すきだ といった
ゆりのはなのかおりをただよわせたま ....
初夏の風がゆるやかに舞い込む白い部屋で
微睡む少年
本を読む青年
壁には無造作に留め付けられた
幾枚かのモノクロームの写真
天井から吊り下がるのは
模型の銀色の飛行船
窓近くの硝 ....
雨が花の形を整えていく
わたしたちは共通の言葉で話し
共通の言葉で
触れるべき場所に触れる
民家の前にぽつりと置かれたバス停で
傘を差してバスを待つあの二人は
親と子なのだろ ....
1センチメンタルの感傷を
長さの単位に
置きかえていく
長さは日々伸びていき
縮むことはない
ただ、忘れてゆくのだ
見あげる夜空に輝く星まで
何センチメートル
ある ....
あめがふると
くさがはえるのだと
こどもがおしえてくれた
わすれていただけなのだ
やくにたたないと
しってから
おとなになるために
すててきた
わたしとこどもを
....
光は屈折し
やがてその先端は
壁の末期へと続いていく
何かあってはいけないので
あなたは洗面所で
数を数えている
川幅の狭い橋を渡ってきた、と
わたしは告げ
手を握 ....
胃の中にへばり付いた
アニサキスみたいに
僕の神経をかき乱す
やり方が
良かろうが悪かろうが
僕の都合なんて
最初から
気にかけもしない
それが当たり前の事
....
姿の無いものの気配がする
ガラス戸が小さくカタカタといって
何処か遠くの出来事を伝えようとしているのか
本当のことは良くわからない
日常の大部分は
そうやって解体されることなく消化される ....
その日ジリはキリカの部屋の近所の居酒屋で、キリカと一緒に夕食がてらビールを飲んでいた。
近くに住む常連客が集まる、気取りの無い賑やかな店だ。
「なあ、キリカ一緒に住まないか?」
アルコ ....
ジリが山手通りを自転車で飛ばしている頃、キリカは水を張ったバスタブに腰まで浸かってぼんやり天井を見上げていた。
「ジリのヤツ遅いなあ。」
ジリは山手通りを右折して、かむろ坂を登り始めたところだ ....
牛です私決めました出産ですお立ち会いのもと牛です私牛です出産です決めましたお立ち会いのもと出産します牛ました私です決めました私牛を出産します。
産まれました
白と黒の牛は仔牛と呼ば ....
サイダーは陽射しで
わたしはまなざしに
溶けてからんと音がなる
はずかしいくらいに慾をむきだしにして
蝶々が卵をうみつける
濃い影が床を一周するあいだに
わたしたちは手をつなぐ
....
宇宙から地上へとのびる滑り台を滑り降りて僕らは生まれた
あまりはっきり覚えてないけどあの光景をもう一度見たいから
僕らは長い時間をかけてより高い宇宙への階段を登ってる
大空に手を伸ばす
太陽でこの手を焼くために
ほしいほしいほしい
私は全てのまっとうなものがほしい
備わっていないものをほしがり
すでにあるものをみないで
それらは
当たり前に動くから ....
お前の母ちゃんの子宮にはアリゾナの青い空があって
乾いたハイウェイ沿いにただ1軒あるガソリンスタンドで
お前の父ちゃんが働いていたんだよ。
ただお前は地下に埋設されたガソリンタンクからではなく
....
{引用=
さみしさを肯定できる朝だった、誰とも笑える人間だった。
どこまでも飛んでいけたら良いのにと 空にまたがりきみが呟く
隙間から風でも入る家 ....
山奥の針葉樹林で生まれた
朝露のひとしずくは
無数のひとしずくと共に
苔や羊歯の間を縫って
ひたすら傾斜に従う流れになった
渓谷では
無邪気にはしゃいで
いたずらに透き通って
....
目測で30センチ 幸せと君との距離を間違えない距離
また君は花の匂いを間違える桜の色を愛するのだね
三月がやっと始まるこの街に誰が桜を埋めたのでしょう
この街も桜の匂いが少しする ....
絵の具の年譜
金の闇
渇ききった既視の風に
名を呼ばれては遠去かるもの
暗い霧をつなぐ虹
ところどころ消えながら
雨を照らし
雨を鳴らす
岐路の前の影
....
哲学
自分と向かい合うための時間を作るために
未来と向かい合う時は既に過去になっていて
過去と向かい合う時も既に過去になっていて
現在の自分と向かい合う時は既に過ぎ去って行く
作 ....
貴方に愛されたいと願った 声を失くした人魚姫のように
新緑は 初夏の日射しに 色を増し ヒレの無い足で 外に駆け出す
満月の夜は 鱗を落とす 微かな潮風に 故郷を思う
ギターをかき鳴らせ
かき鳴らせ
かき鳴らせ
かき鳴らせ
かき鳴らせ
あの娘が
幸福でありますよう
オレの命を削って
ギ ....
81
棚の上に置かれた卵の装飾から産まれたカッコウのひなは、早速、置き時計を下に落とした。
82
あなたは、私の中から一回り小さい私を取り出し、その中からまた一回り小さい私を取り出し、を繰り返した。 ....
お前の体が長く伸びる
影が増したのかと思うが
少し違った
のど元から
違う声が漏れる
口から漏れる声と
交互にささやく
お前が伸びて
私の肌を刺すときに
私は内面からもえぐら ....
*一時限目 数学*
美しき微分/麗しき積分/淫らな糖分=知性の所望するもの<睡蓮たちの睡魔
無限の輪っか((エタニティー=ハニーディップ×2))
を、黒板の隅に小さく描く
カリカリカ ....
シャガールの恋人たちよ天蓋に夜を満たして水浴びしなさい
留守にして帰り着いたら生き延びた薔薇が幾つも咲いていました
ビッグバン、インフレーション自鳴琴の箱を開いた誰かがいました
鎌倉 ....
真夜中のシナモン・バー
蒸気に琺瑯が 咽る
窓をけして開けてはいけない夜
捉えて、捩じる、からだ、
初めて会った他人の中に
この身を千切って置いてきている
毎日を、つづけると、
....
悠々と空を飛ぶ鳥に生まれたかった
大地に根をはる木に生まれたかった
水を泳ぎまわる魚に生まれたかった
さなぎから蝶になるように
そんなふうに美しくなりたかった
彼らのような日々を過ご ....
GoodBye May
Tsukasa Okazaki
窓から入り込む鈍い光が睫毛の上に乗って、爆ぜていた。あたしは、何度も瞬きを繰返して朝の角度を研究する。息を吐くとそ ....
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