バイバイ カザルスホール

最初は静々と
自信のない歌声は
旋律の迷いを消すだけの声で
他人の声は聴こえない
自分の声も聴こえない
歌に詞(ことば)はなく
声に魂はない

次に粛々 ....
Englishman in New York が聞こえる
懐かしい香水の匂いが通り過ぎる
地下へもぐる階段で
地下鉄の隣の席で

自分の左手を見つめる
指輪がひとつ
そのほかはヌード
 ....
きみのおかげだよ
ぼくが
何もかも
投げ出してしまわないのは
感謝してるよ
だから
ぼくは
きみに平手打ちをプレゼント
痛いだろ
生きてる証拠さ


寝付いたきみの横顔 ....
1  月はまるで、地球の薬指に光る真珠のようだ。
2  月はまるで、大きな藍闇に光る女の目のようだ。
3  月はまるで、私の心を映す鏡のようだ。     欠け行き満ち来る銀鏡。
4  月に呼応し ....
これって何かの間違いだったりして

夕方近くに先日面接受けた問屋さんからの着信
胸の震え抑えつつ電話に出てみれば採用しますの吉報だった

他の誰かと間違えていないよね

いつもの野良猫に ....
お早よう! 夜が明けた
全くひどい嵐だったが
ノアの箱舟の諸君、
どこでも好きな所へ行きたまえ

全くひどい夜だったよ
川を流れるオフィーリア、
太陽の光は残酷なものだ
もうお前の顔に ....
桜の花が咲く 花が散る
花の影がわたしを斑に染める

晴れた空はうつろに息づいている
わたしにきららかな憂愁が降る

胸のうちをほの白い人の列がゆく
半透明に やや蒼ざめた横貌を見せて
 ....
 
 
鳥かごの中で
小さなキリンを飼ってる
餌は野菜だけでよいので世話が楽だし
時々きれいな声で鳴いたりもする

夕焼けを見るのが好きで
晴れた日の夕方は
日が沈むまでずっと西の空 ....
捩れた煙草の空き箱の傍で
うずくまって眠り続けていた夕顔が
霧雨に揺すられて
今 目覚める

目覚めろ もう一度
果たせやしない使命
霧露に溶かされて
もう一度

こわれたヴィオラ ....
待合い室で座っていると隣に「過去」が座っていた

反対側を見るとそこでは「未来」が新聞を読んでいた

「過去」はそわそわと落ち着かず何度も鏡を見ている

「未来」は老眼鏡をずらして ....
あなた、愛してやまない
あなた、そんなあなたに欠けているもの
どんなにあかい林檎でも
その甘さをもってしなければ
結末のないお話

あなた、愛してやまない
あなた、そんなあなたに欠けてい ....
叫びにも似た咆哮が
鼓膜をつんざくだけで
気が付くと
装填された散弾銃を
こめかみに押し付けられ
射抜かれた処女膜は
10ドルで精巣をたらしこむ


どのくらいひどいんだ?
 ....
知らずに
湧き出る
美しい泉を
探す
旅から
私は
知らずに
戻っていた


「きっとまだ
 あそこにあるに違いない」


やっと戻った
夢見がちな私に
窓辺の黄色くて ....
あの遠くに見えるのが、
ダウンタウンのビルの群れ
ガラスの建物達が、光りを吸っている
白い家並みが黙っている木々の中
赤煉瓦の屋根は、みなが城と呼ぶ屋敷 
尖塔を空に向け 
放ち、教会のよ ....
{引用=


それは

空洞と
いう名前の

留保に過ぎないのだと

口に出していた
或る夜

人はすべて
寝静まり

ベッドの上で時間が
ぐんにゃりとする

 ....
 
 
冬の雪の下
土の中で正座していた足を
今ゆっくりとほどいていくように
私の足にも
春がおとずれている

痺れる感覚に
気を失いそうになりながら
すみずみまで血がめぐる
生 ....
      螺
         旋
              階
                 段
               の
     ....
 
 
 
【死が二人を分かつまで】
 
 
 
 死が二人を分かつまでに、あとどれくらい
 私はあなたを愛することだろう。
 
 かけがえのない時を刻みゆく中で
 限りあるこの ....
落ちる.

落ちていく.
落ちていく,自分が分かるのがイヤだ
すれ違うだけで
目を合わせるだけで

落ちてしまう.


離れていくのは簡単で
崩してしまうのは容易くて
ヒトは
 ....
本を閉じるように雲を抱え
糸くずのついた縫いぐるみに
兄弟の名を教える

のぞきこまれた気がして
草のつぶやきに
片言で行くと答え
噛み付くように
草をむしり切り捨てた

 ....
君に対して
誠実な言葉を口にすることが
できなくなったのは

君が僕を軽く扱うから

それは僕が
気が付かないまま
不誠実な行為を繰り返して
いたからなのか

ゆっくりと壊れてゆ ....
扉が
しずんでしまう前に
瞳をひらく
決意をしよう

内に
あふれる
海原をのがれ
足を
こわごわ立たせる場所が
小さくてもいい
流れ着いた
この岸を
いまは
瞳に焼き ....
砂漠の昼
降るはずのない雪が
乾いた砂を覆い
静かに静かに降り積もる


大人は光景に言葉を失い
子供は寒さを忘れて遊び


静かに静かに降り積もる
白い結晶
鳴り響い ....
光のない部屋で

草木は頼みもしない花を咲かせ

ほころびた香りが鼻先にまとわりつく


風の無い部屋で

種はその不幸に気付きはしない


(今夜 ルーリードに手 ....
あの夕焼けを誰よりも美しくしたためることが出来るなら
まかり間違って詩人になってもいいと思ったわけだし
ポジティブシンキングで幸せになることはないことぐらい
鱗を散らして空に溺れた魚の目を見るよ ....
土色に枯れた千の蛾が部屋を覆い尽くす
それに 白粉の殺虫剤を 噴きかける
ぽそぽそと 大小の蛾が 落葉になって
床に重なると 兄さんが 粉で真白の瞼を擦って
真赤な涙を垂らしながら言う
「一 ....
その街は静かになりました
もう、人間しかいませんでしたから
精霊も、神様もいませんでしたから
なのに彼らは恐れていました
もう、人間しかいませんでしたから
精霊も、神様もいませんでしたから
 ....
あなたの部屋にどういうわけか
一本の木が生えてくるでしょう

勘違いしてはいけません
それを自分の一部なのだと
脈を通わせてはいけません
それがたとえ同じ血をひくものだとしても

それ ....
雨が降っている
雨は私の屋根を打ち
  私の壁にしみ込んで来る
雨が私の枕を濡らす
  水というより、夜の、宇宙の体液だ
雨は、私のマスカラに降り
   私の服に降り
   私の靴に溜ま ....
耳の中、ゆっくりと流れ込んでくる群青色の金属音は
きりり、きりり、と子守唄気取り
前に進めば、曖昧なクラシックが見えてきて
立ち止まれば、冷えきったエレクトロニクス

遠い国か?     い ....
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