神様の爪先からこぼれた水が
南極の氷になってアイスコーヒーを冷やしている
ふつふつと白く昇る泡が
46億年の想念とブラックホールを残していく
果てのない黒い海
....
冬と春が手をつないでいる夕方に
静かに立ってそとをみていました
わたしはもう少女ではなく
絶望と仲良くもありません
ひとりで
静かに立ってそとをみていました
燃えつきる煙草、蘭のつ ....
苦痛の中に感じる快楽
快楽の中に感じる罪悪
罪悪の中に感じる恍惚
恍惚の中に感じる失意
失意の中に感じる優越
頭の中で千匹の回虫が
サラサラ崩れる米の山ように ざわめく
額の汗はきっ ....
草のなかにレールをみつけた
錆びた鉄の平行な二本線が
弓なりに
ここから延びていた
または
この草のなかで
すっぱりと裁断されて尽きていた
あおぐらい記憶 ....
頭の中で 鳴るんだ
音を飲み込む音 音を噛み砕く音
音を叩く音 音を破る音
音を切る音 音を捻る音
音を削る音
それらが それぞれ七色に発光して
カウントダウンが始まる
サーカ ....
それは男が汚れた靴下を脱ぐ時
それは女がきついガードルを脱ぐ時
みじめに軋るベッドの上で
広い背中を白い手指が所在なげに抱く時
愛はそれぞれに
互いを壊し満たそうと足を引きずり
見栄えのし ....
世界の果てに 椅子を二つ置いて
暮れつづける夕暮れと
明けつづける夜明けとのあいだで
いつまでも 話をしていよう
西脇順三郎は「詩的な美」とは何か、について次のように言います。
{引用=
「その存在は一つの抽象的な、眼にみえない理論的な(譬えれば、原子形のようなもの)フォルムである。それは通常の経験の ....
皮膚、
さらけだした衛星が視える
はだしだけがきこえる、まばたきをすれば凍死は白
子宮は やせほそっている
{引用=
あ ほら また切ったよ、指
}
つまらない人といわれたくて
....
ショーウインドゥの中にはド素人の描いた
ローランサンの贋作が飾ってある
どんなに遠くから見ても錯覚すら起きない
紫と赤の花弁の中で白い少女が
脂蝋化の死体さながら微笑んでいる
車のフロントグ ....
白濁が白濁に午後つらぬいておまえを息に刻む刃の先
一時から一時半にてひとり縫う花の棘の指つぎはぎの指
夜が消え夜の代わりの夜が笑み早すぎる星に刺 ....
僕が火傷をした子供の頃
母さんは泣いてばかりいて ばあちゃんにきつく接するようになった
父さんは酒を飲むようになって 母さんと喧嘩ばかりしていた
じいちゃんは無口になって そのまま死んで ....
わーがやげどしたわらすの頃
かっちゃ泣いでばりで ばっちゃさきづぐなった
とっちゃさげ飲みさなって かっちゃど喧嘩ばりしてら
じっちゃ静がさなって そのまま死んでまった
だばって
ばっち ....
{引用=
崩れる
崩れ落ちる
私の
下半身を見ている
夜遅く
変容する
誰からも知られない場所で
私の過去、現在、未来
誰にも知られない場所で
蛙が溶ける
私の隣 ....
ここのアカウントを貰って、再び書き始めたとき、過去作は絶対に投稿しないと心に決めていました。けれども、ある話をするために自分が10代のときに書いた詩を再投稿することにしました。ただ、自由詩として投稿 ....
そんなことはない、が
結局は開かれることなかった口の内側で吠えている
不便のないところでは
それがどんな狂犬だろうと
誰かしらがいい薬を処方してくれるでしょう
それで利口に生きていける
....
「どこかにいきたい」と
ふいにあなたはいった
ぼくは
「どこにいきたいの」と
あたりまえのようにきいた
「やさしさのあるところ」と
さびしそうにあなたはいった
ぼくは
「こ ....
うすあかりの光りがまだら模様をえがく夜
わたしは、私を忘れる
「風が出てきたみたいだ。梢の影が踊っている。
ここには、街灯はないのだから…」
「月明かりね。風音が変わった ....
「神の国は近づいています」
「悔い改めなさいと」
「イエスは…」
ビルの谷底に流れる歳末の{ルビ声音=こわね}は伝道というより脅迫めいて
拡声器で繰り返されるその文言は
オーウェルの『1 ....
流れ星
鮮やかに降れ
今すぐに
僕の心臓
射抜け貫け
....
雨が降った。わたしは雨の足に圧迫された。爪先から踵まで力に満ちた足は、わたしの体に、触れず、目の前を塞いでいく。雨水の、どの部分も干からびていて溢れてくる。一粒でも零れると、それは止まらなくなり、旱魃 ....
{引用=
僕が中学生だった頃
ボブ・ディランを聴いていると
笑われたことがある
ビートルズでさえも
ダサかった
でも
今は
時が流れて
ボブ・ディランはとっても
かっこいいといわれ ....
水にとける傷
とくとくと
しるしのように
書き換わる
何ものもなく何ものもなく
気付くと在った手のなかの音
微塵につづく
こがねの拍手
鳴りひびくの ....
凍ったまま
凍ったままで
夏を待て
降りたシャッターの前に
右手をかざし
瞑目の、水晶の立像となって
冬はお前を追憶の塔にした
透明なお前の体を通して
青い青い海原が見える
光の ....
地図上の大部分はおだやかな晴れ
真ん中に私のこどもが立っている
雪が降って嬉しい、と言う
もやしを育てる
かびくさいキッチンは粘土のようにつめたい
つまり
息はしていなかったとおもう
....
随分とのんびりした赤ちゃんが生まれた
優しい木漏れ日の中で たったひとりだった
声が誰の耳にも届かないのを知ったら
泣くのをやめて誰にも知られずに眠った
首のない人形は歩いた
喫茶店 ....
いつからか
「小野 一縷」という名を目にすると迂回して
その日の最後か翌日に読むようになった
覚悟を要したからだ
突きつけて来るのが本当の別世界だったから、
背筋を伸ばして対座せねばならなか ....
それは、静かな石だから、(青い)のです。
きっと美しかったであろう、
きみの石。
一億年の沈黙が(きみ)を呼んでいたから、
石は、ゆっくりまわれ右をして、
きみのもとをはなれていった。
....
手元にある本を手に取り
173ページを読みましょう
一番難解な言葉について
頭をフル稼働して
考えに考えて下さい
見つけた何かは元々
あなたに備わっていたものです
その何かを生かしま ....
{引用=
古びたクローゼットを
覗き込むことは
できません
その代わりに
レコードで
ラブミーテンダーを聴きながら
君の過去を想っています
思い出は増やすものなのか
減らすものな ....
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