大覚アキラ

ねえ 凜
前にも話したかもしれないけれど
きみが生まれる前に
きみのために考えていた名前が
ほんとうは ふたつあったんだよ

どちらかといえば
ぼくはもうひとつの方が
ほんの少しばかり気に入っていたんだけれど
生まれたてのきみが
ふしぎなほど微笑んでいるのを見ていたら
きみには
凜という名前がぴったりだと思ったんだ

九年前
きみが生まれたころには
それなりに個性的だったその名前も
同じ名前の女の子が登場するドラマのおかげで
今ではそれほど
珍しい名前ではなくなってしまったね

だけど 凜
きみのために
ぼくが考えたその名前は
きみだけのものだ
そう たとえ世界中の女の子がみんな
きみと同じ 凜という名前になったとしても
きみの名前だけは特別だ

その名前は
きみの一生を ずっとずっと明るく照らし続け
どんな暗闇の中でも 道に迷うことなく
まっすぐにきみを導いてくれることだろう

きみにその名前を与えたことで
父親としての ぼくの仕事は
もう半分ぐらい終わったような気がするけれど
これから先の
きみと一緒に過ごす時間をかけて
ゆっくりと のこりの半分の仕事を
こなしていこうと思うんだ

だから 凜
きみもゆっくりと
ゆっくりと
大人になっていってくれればいい








自由詩Copyright 大覚アキラ 2005-07-15 02:13:32
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愛みたいなもの。