偏食 三
落合朱美

3匹目の獏は道端で
へたりこんでるところを拾った
小さな獏は虚弱体質で
夢はもちろん秘密も嘘も受け付けず
今にも消え入りそうに震えている

私は必死で噂とか言い訳とか
いろいろ持ち帰ってみるのだけど
小さな獏は食べなくて
どんどん弱っていくようで
もうこの子はダメかもしれないと
思わず深いため息をついた

とその時
小さな獏は遠慮がちに
そのため息をたぐりよせ
目を伏せて申し訳なさそうに
かじりはじめた

そうか
おまえはため息が好きなのね
と安堵のため息をつけば
小さな獏はまたそれをたぐりよせ
今度は上目づかいでこちらを見上げ 
恥ずかしそうに食べる食べる

小さな獏の出現は救いだった
日中集めてきた秘密と嘘を
夜な夜な2匹の獏に向かって吐き出して
すっからかんになった後のため息は
小さな獏が食べてくれるから
精神のバランスがほどよくとれているみたいで
この頃の私はちょっと充実してる

すくすくと育ち
すやすやと眠る獏たちを見て
私はすっかり母性のかたまりとなって
イイヒトでウソツキだけど
私はシアワセモノなんだわと思う

それにしても
どうしてこの頃こんなにも
捨て獏や野良獏が多いんだろう
眠らない街が増えて
みんな夢を見なくなってしまったのかしら
獏が偏食する世の中なんて
もう世も末だわ

あ、またため息が・・・




自由詩 偏食 三 Copyright 落合朱美 2005-07-14 00:40:14
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