いつも流れてゆくように
nm6

東京、きみは振り向いて
見過ごすことと忘れることに慣れず
クラップ、手を、たたいて
(光のように)


歩道橋、線になって逃げていく車の
ひとつひとつにああ、ぼくと同じひとが乗っているということを
ひとが、
眠れないきみとおなじひとが、


「安心が買える、なんて嘘だよね。」
「いや、それね、買えてるんだと思うな。」


ブレーキがきかず空気の抜けたタイヤの自転車は横滑る不安定で空気のもつ張り詰めたものの健やかさを詰めた300円の後腐れが気後れして疾走しない凸凹で技巧しないそれをあからさまに揉み消して誰かのせいにした先日の旅行の雨を暗い夜の窓の明かりを、電光掲示板のくだらない文字を読み上げて。





つい、
仕事帰りはビールを飲んでしまって
次の予定を振りかぶって第二球で後回して
踏み込んだ、1年以上前に
(光のように)繰り返している夏を


放り投げて届くよ。





東京、きみは振り向いて
見過ごすことと忘れることに慣れず
クラップ、手を、たたいて、
弾いて(光のように)すぼまっていく音を


忘れていたことを思い出している、
押し寄せるが一日だけ願う眠れば覚めれば同じく太陽の悩ましい
日々(光のように)だが(光のように)、
いつものように、クラップ、手を、たたいて、
いつも流れてゆくように。


自由詩 いつも流れてゆくように Copyright nm6 2005-07-12 00:12:30
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