ひとたびの雷鳴を合図に
夏は堰を切って
日向にまばゆく流れ込む

其処ここの屋根は銀灰色に眩しく反射して
昨日まで主役だった紫陽花は
向日葵の待ちわびていた陽射しに
少しずつ紫を忘れる
 ....
雨がやまない。青い砂にしみこんでいく。砂
漠の雨は一滴ずつ降る。砂の青は一粒ずつ深
まるばかり。

雨粒は壷にもたまる、そして壷のなかで波に
なる。粒でもあり波でもある光の雨。ぼくは
壷を ....
解かれるものがあって
解けないものもあって
元気ですか
その言葉だけで繋がっている

わたしを折る
折りたたむ
そして開けば
鶴にでもなりたい

配達の遅れた願いのようなものが届く ....
低い雲が覆い隠す
放牧場のある丘には
みっつの風車が立っている
ぎゅおん、ぎゅおんと
海にむかって唸って
いるはずの刻
{ルビ霞=かすみ}のように薄い雲が
まわっている時間を
見えなく ....
 夕方街ですれ違う人の顔を
 ひとつひとつ眺めながら駅に向かった

 疲れて渋い顔をした顔
 厚化粧の顔
 おしゃれな眼鏡
 莫迦みたいな飾りをつけて
 熱心に本を読む
 独り言いいつ ....
いつものように
午後をあらいながら
うつむき加減に 軽く
雲行きを確かめる
それもまた いつもの事だけれど
その
始まりの日を憶えていない


寒暖の差を道として 風は渡る
よ ....
海鳴りは遥か遠くでさざめいて 
波間に浮かぶ言霊たちは 
いちばん美しい響きを求めて 
たがいに手を伸ばしあう 

砂浜に打ち上げられた巻き貝は 
もはや亡骸となり果てて 
右の耳に ....
父は歩き続けた
角を曲がったところで左腕を失い
コンビニの前で右腕を失い
市営住宅の駐車場で両足を失った
やがてすべてを失い
最後は昨年まで歯科医院があった空地で
一輪の花になった
 ....
  つるかわ

つり革の下には
振動する幽霊の手が
ぶらぶらしているよと
嫁のもらい手がないよと
節だらけの拳を振る
明治生まれの大伯母に
呼ばれたような気がして
リノリウムの床を
 ....
燃え上がる巨大な寝台列車から逃げ出すひとのいないやすらぎ


草上にレモンはひとつ落ちていてあなたのいない夜のはじまり


街中にひらく紫陽花5Fから観ている雨の降りしきる朝


 ....
粛然として初夏は重なり
カーテンを引く
夏の重さは水面を広げる
わたしたちは口止めをされている
沖の方では服を脱ぐようにして
海の肌が見える
わたしはあなたが好きだっていうことを
莫迦み ....
晴れわたっていた
ページをめくるたびに
空はその青みをまして
澄んだ悲しみのように
雲ひとつ見つからない
その向こう側から
誰かが僕の名を呼んでいる
今朝旅立つことは
すでに決めていた ....
初夏坂を上りきると
左利きになっている
左利きになれば
スローカーブは美しい

スローカーブは街に流れてゆく
絵のような人々の側で
スローカーブは速度を止める
初夏坂を見上げる

 ....
  わたしは時々、石になりたい
  そして夜の一番暗いところで
  じっと丸くなり
  わたしの冷え冷えとする体に
  とても美しい夢を備え
  いつかわたしを拾い上げる者に向かって ....
の丘に
咲いたダリアの一輪の
唇の頬のうなじの太ももの蹄鉄の
隠された場所の

の丘に
びっしりと生えそろう数億のダリアの一輪の
唇の頬のうなじの太ももの
暴かれた場所の

の丘
 ....
にわか雨は窓ガラスを叩く激しさで
海辺の汐臭さをわたしの部屋まで連れて来た
波音のひたひた寄せるテーブルで
いつか拾った貝殻の擦れる音色がする
ハンガーにかけたわたしの白いブラウス
温もりの ....
噤む蕾は
朱色の予感をいよいよ過密化させ
その内圧の快感に震えついに
耐え切れなくなる黙秘破る色彩という最も濃厚な
ひとつの呼吸を開く
と、既に色彩は、さらさら
さらさらと分解し始 ....
両手で耳を大きくすると
レールに乗ってやってくる
それは 子供が並べたりんごの列を
カタカナのように蹴散らしてやってくる

老木に耳を押し当てると
樹液も僕を聞いている
僕は掌にオレンジ ....
空の明滅
月の繭
ささくれだった昼の陽の白
遠くにいるもの
遠去かるもの
時間に消されることのないもの



冬の霧が
音の無い滝となり
落ちてくる
地から立ちのぼ ....
1.

手紙は書きかけのままテーブルの上で黴びてゆく。
青黴、赤黴、黴の色ってそんなに単純だったかしら。
ふくりと黴が起きあがる、
まき散らされる胞子は常に薄い紫で、
私の部屋はすっかり煙 ....
春、という5月の
光って市ヶ谷の駅の光って階段の小さな窓の
(その駅は、黄色い線の入った電車が水のほとりを走るところの)
ちいさい音楽を
グレーをつつみ隠す太陽色の平行四辺形が4つに
手のひ ....
「恋してないのに恋の詩がかけるんるんですか?」何年か前にある女性から問われた事がある。その人は小説を書いていて、自分が必ずしも体験していない事も書いているのに、詩は気持を書くもの、そういう気持になるき .... この先は、記憶に住まうちいさな村です。

まるい形の標識があらわれたので、わたしは
あこがれの物語を
指先でなぞるときのように、目を閉じてみました。 
水色ガードレールの
はしっこに寄って ....
桜/が
咲いて/いる

色/素を失った
少女の/(染/み)の/いと、おし/ さ

吸い込まれた/瞳/と深呼吸
/数秒の(儀式)/

殺生/の真理が咲き乱/れ
接吻/の ....
「悩んでいます」という場所の
奇妙な安定感 
むさぼる後ろ向きの安逸
それらに苛立つ
しかしそれははじまり
冷たい風がふく
ゆっくり歩いている
スタンバイする
内観する
飛行へ

 ....
この、聞こえない左耳で
この耳で聴いてみたい音
それは、世界に
あふれる音ではないのです

時間を追い抜いていく時計の刻む
バンアレン帯に太陽風が吹き付ける
海溝の暗闇で深海魚のため息
 ....
うすい鎖骨の層をすべり落ちるひとつの円く欠けた球体
それが、

あら
早いのね
雲はしびれて そろそろ雨の匂い
届かなかったのね
手を伸ばしても 反射する灰色の空気を泳ぐ
稚魚の透けた ....
わたしの私語の中に
あなたはいた
白い百合の花が
畑のようにどこまでも続き
そのようにあなたは
私語の中で
匂っている
しーっ
誰かがわたしの唇に
指を立てる
少し湿った感触で ....
書けなかった詩の断片が
ちぎれた草になって

風に舞っている

いのちは永すぎる未完
死してなお
始まりにさえたどりつけない 未完

私の夜はいつもと同じ旋律を
内側の街路にまきち ....
カミキリムシに噛み切られている
僕は薄い紙になっていて
手も足も出せない
手足が出たところで
噛み切られるだけだけれども

昨日までの厚みは
どこに行ってしまったのだろう
でき ....
霜天さんのおすすめリスト(1784)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
百日紅の下で- 銀猫自由詩19*06-7-15
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風時計、雨空を文字盤に- たりぽん ...自由詩17*06-6-27
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ネイビー・ストーン- 千波 一 ...自由詩16*06-6-21
潮騒を聴く- 落合朱美自由詩3106-6-21
父の日- たもつ未詩・独白16*06-6-18
帰り道- あおば自由詩12*06-6-18
とうめいな部屋- 本木はじ ...短歌1106-6-11
カーテンを引く- tonpekep自由詩11*06-6-11
旅立ち- たもつ未詩・独白14*06-6-11
初夏坂- tonpekep自由詩9*06-6-6
わたしは時々- 嘉野千尋自由詩18*06-6-6
の丘- ふるる自由詩33+*06-5-29
E_minor_7th(きざし)- 恋月 ぴ ...自由詩45*06-5-27
朱色- A道化自由詩806-5-21
春のソネット- セイミー自由詩206-5-21
茫白- 木立 悟自由詩206-5-13
姿見のうしろの物語- 佐々宝砂自由詩12*06-5-13
迎春- nm6自由詩906-5-3
嘘つきは詩人の始まり(下書きよりの抜粋)- 窪ワタル散文(批評 ...15+*06-4-9
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花散り- 半知半能自由詩4*06-3-31
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モノラル、聞いてみたい- たりぽん ...自由詩1206-3-28
二点空間の- こしごえ自由詩11*06-3-28
私語- たもつ自由詩706-3-22
未完の夜- 岡部淳太 ...自由詩18*06-3-14
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