パーティーは散々だった
おやすみ、のあいさつの方角へと
だいだい色のシロップが
ゆっくりと流れて
しだいに
粘性を増してゆく、
夜の
水の底で ゆうべ、まき散らされて
わたし ....
世界は みずでできていると
きみは言ったけれど
肝心のきみも やっぱり みずでできていたのは
きみが死んで 五日経って ようやく思いだした
(そのとき みずが流れた)
深夜 人は大 ....
静かなところに
土手か あぜ道か
そこらに
とりたてて めでたくもないが
ハーモニカの記念碑を建てよう
風が 風が吹いたなら
地球にたくわえられた音が
プァ プァ
聞こえるような
....
秋の匂いのする風は
夏毛にふわり優しくて
愛なんてものを
かたちにして
誰かに見せたい気分になる
さっき
薔薇の棘みたいに
剥がれ落ちた爪は
カナシミってやつと戦ったから
ゆらゆら尻尾が休憩 ....
モノを置かないでください
と張り紙のあるところに
モノを置いた
そんな些細なことがきっかけで
そんな些細なことの積み重ねだったのだろう
「いつもの」
そう修飾された朝は
あっ ....
日常にくたびれた玄関先で
茶色のサンダルが
ころり
九月の夜気がひんやりするのは
夏の温度を知っている証拠
おまえには随分と
汗を染み込ませてしまったね
サンダルの茶色が
少し ....
車と車のあいだに
紙袋が泳いでいる
青信号が
すべてを引き裂いてゆく
地鳴りの夜と
静けさの夜のあいだに
やがて売られてゆく木々が
育っている
もう動くこと ....
わたしたちは
もう離れないと誓いました
空に
風に
緑の木々に
そして
大きなビル群にも
これからは
飛び立つのもいっしょ
羽を休めるのもいっしょ
暑い夏
アスファルトの照り返し ....
遠目に
窓越しの木々が痙攣し
雨の訪れを知る
ベランダには
洗い立てのシーツが
物干しいっぱい広がって
百万都市のネオンからかくれるように
わたしたちは居た
だれかの描いた
まっ ....
一瞬のタイムマシーンである日付変更線を越える飛行機
あの頃は、と思い出すたび僕たちは大きな洗濯機の中まわる
気の利いた言葉浮かばづきみの笑みに複雑骨折してゆくこころ
つま ....
風が吹いておりました
風が吹いている日に飲む野菜ジュースは哲学の香りがするのです
そんな日は詩を書きたくはないのです
空があまりに無知なので
わたしの青春としての位置づけは
もう随分と前 ....
そしてまた世界は
からっぽに明るくなる
このいたずらな明るさの中では
何かを見分けることなど出来やしない
事象たちが書き割りのように
意識に貼り付く
歩きたい道を見いだすことも困難なの ....
肩が
うっすらと重みを帯びて
雨だ
と
気がつきました
小雨と呼ぶのも気が引けるほど
遠慮がちな雫が
うっすらと
もちろん
冷たくはなくて
寒くもなくて
そのかわり少しだけ
....
空の瓶が
割れない、音
そして
割れる、音
そして
割れた、音
さ、ゆう、
往復の波で揺れるのは
左右の、
暗い曲線の、
たったふたつの、耳
....
「本を読みなさい」
その人はそう言って
夕暮れて図書館が閉まるまで
わたしの隣で静かに本を読んでいた
映画を観なさい
音楽を聴き ....
おめでとう 毎日は
祝福されてあるのだから
誕生日くらいは ひとりさみしく
泣きながら過ごしましょう
それが この国の流儀です
むらさきいろの透明グラスは
この指に
繊細な重みを
そっと教えており
うさぎのかたちの水色細工は
ちらり、と微笑み
おやすみのふり
壁一面には
ランプの群れがお花のか ....
切符を切るカチカチと
ポイントを温めるランプの炎の
二番ホームに雪を踏む
信号の腕木があがる
凍える両手に息を吹きかけたあと、空を見上げて吐息
....
喰いたくてそこに居るのなら
苦痛だけは残しておいてくれ
苦痛さえあれば
数億年後に詩はふたたび生まれるだろう
間延びした快楽 ....
しっとりと伏せられ、そのまま
こと切れたあとの、薄青い、薄暗い
目蓋のような擦り硝子を前に
決して、そこから
目蓋なんぞ連想しないと思い直す、おんなの
見下ろす、白百合の ....
「
これより10分間
朝を発信します
周波数を
合わせてください
」
夕焼けのなかに
ぽつんとビルが
建っている
ながめていたら
たたずむひとに
見えてきた
ひとが
暮らしている
のだから
ひとに
似てくるのは
当然のこと
かもし ....
灰色のブリキとトタンでできたふたつの長屋にはさまれた一本道
ところどころつぶれた家から見える海には朽ちた船が散らばり
生きたかったのに生きられな ....
世界に終わりがあるのなら
命の期限もあるのだろう
人の寿命は短くて
命の期限は長すぎる
酷い混雑見ないふり
酷い醜態見ないふり
美味しいお菓子も
食べたふり
綺麗な時間は短 ....
流しのはじっこで
トマトにかぶりつく
切って 盛り付ける前
誰もみてない 朝
どっからくるんだろう
この 破りたい
悲しみは
形よく そろえて
行儀よく いただいて
終わ ....
あなたのいない 空 白 を、日々うめる努力をしています。
もう、慣れました。 空が 白く 雪で染まってから随分たったので。
昨日は眠 ....
透明な夜空は
脳がものをみることを
なまけてしまった人が見ると
満点の星空なんて映し出す
本当は何もない
ただ地球は孤独なんだということを嘲笑う
真っ黒がそこにあるだけだ
そ ....
山並みを巡って
一本の道が続いていく
夕暮れ時に
耳元でふと寂しい曲が流れるものだから
あの道がどこへ続くのかを
未だに誰にも言えないでいる
「 ....
夏が欠けていきます
溌剌とした空の滴りを
濃厚な季節が吸い尽し
あとはさらさらと乾きゆくだけです
さっきりと出た月の高さも
いつの間にか伸びて
変わりゆく時は
青葉さえ少しずつ朽 ....
その布の上にはきらきらしたかたまりが
透けながらならんでいて
あたしはときどき つまんで くちにいれます
がっこうからかえると また
本のあいだからピアノがはいだし ....
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