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海鳴りは遥か遠くでさざめいて
波間に浮かぶ言霊たちは
いちばん美しい響きを求めて
たがいに手を伸ばしあう
砂浜に打ち上げられた巻き貝は
もはや亡骸となり果てて
右の耳に ....
息を
わたしたちは潜めて
東の空の彼方から
春がやって来るのを
待ち侘びていた
夜明けに
うすい紫の風が
わたしたちの
頭の上を撫でながら
通り抜けてゆくとき ....
酸性雨が降り
森が枯れて
花は身じろぎもせず
こっそりとあぶくを吐く
内なる情念を
笑った眉尻にはりつけて
澄んでゆく
影
道草が過ぎたので
傘をなくしてしまった ....
たとえば
カーテン越しの陽だまりに
できるだけぽつんと
たよりなく座ってみる
時計の針の
こちこちという音だけが
胸にひびくように
明るみの中で目をとじる
いつの日かお ....
つめたい指をしている
と あなたは言って
ふたまわりほど大きな掌で
包みこんでくれた
ゆきうさぎの見る夢は
ほのかに甘い想い出ばかりで
わたしは人のぬくもりに
慣れていないから ....
空にたくさんの綻びができて
あとからあとから雪が落ちてくるので
裁縫上手な婆さんに
縫ってくれ とお願いした
ひさしぶりの大仕事に
婆さんは大喜びで
せっせと針を動かして
つ ....
ヘッドライトを浴びて踊る雪は
しだいに密度を増して
行く手の視界が遮られる
海岸添いのゆるやかなカーブが
永遠に終わらないという錯覚
私たちは
どこへ ....
窓を打つみぞれの音の冷たきに孤独はやはり嫌いと思う
哀しきは居らぬ人へのうらみごと聞かせし空の雲行き怪し
夏の夜に火を点けられし導火線人目を忍び寒空に燃ゆ
{ ....
歌は
あなたの唇から
ほろほろ零れて
やがてひとつの連なりとなって
わたしの胸まで届いたのです
風見鶏のわたしは
風が吹くたびに
あちらを向いたりこちらを向いたり
惨め ....