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わたしは時々、石になりたい
そして夜の一番暗いところで
じっと丸くなり
わたしの冷え冷えとする体に
とても美しい夢を備え
いつかわたしを拾い上げる者に向かって ....
「本を読みなさい」
その人はそう言って
夕暮れて図書館が閉まるまで
わたしの隣で静かに本を読んでいた
映画を観なさい
音楽を聴き ....
山並みを巡って
一本の道が続いていく
夕暮れ時に
耳元でふと寂しい曲が流れるものだから
あの道がどこへ続くのかを
未だに誰にも言えないでいる
「 ....
わたしの中に森が生まれたとき
その枝は音もなく広げられた
指先から胸へと続く水脈に
細く流れてゆく愛と
時おり流れを乱す悲しみ
わたしを立ち止まら ....
君のいた夏が終わる
故郷を知らないという君が
旅先で描きためた風景画、
古びたスケッチブック
迫る山並み
水田に映る空
夕暮れの稜線
風に ....
{引用=八月の月で海鳴り
それでも僕らは響く波音を知っていた}
僕は今、紺碧の{ルビ海=マーレ}を閉じ込めた窓辺から
君に宛ててこの手紙を書いている
{ルビ ....
イーサ・ダラワの七月の浜辺には
遠い国の浜辺から
いつのまにやら波が攫った
いくつもの言葉が流れ着く
嵐の後にそれを集めて歩くのが
灯台守のワロの ....
やさしさの
形は何かと尋ねたら
君は丸だと答えたね
金柑蜜柑夏蜜柑
すこやかに香り
夕暮れの
色は何かと尋ねたら
君はまっすぐ指差して
....
嵐の日にカンパーナが遠くでないている
そんなに悲しい声でなくのはやめてくれ
森が揺れているよ
悲しい悲しいと、
カンパーナ
誰もおまえの森を奪いはしないのに
....
暖かな雨に追われて迷い込み君と出会った六月の町
徒に花びら数え占った恋の行方を君も知らない
花は花やがて綻び散るものの定めの前に花鋏有り
裏庭でか ....
峠には若い糸杉の木が一本生えている
すっくと立ち、
天を指差して
糸杉の木が、生えている
峠の糸杉から少し離れたところに、
朽ちかけた切り株がある
....
だけど君は駆けていったんだ
思い出の丘を、雲の影が滑る
丘の緑はかわることなく風に揺れ、
遥か彼方に、夏の海を臨んでいる
ごらん、あの細い坂道に
僕ら ....
喜びも、優しさも、喪失も悲しみも、
言葉によって届けられた
わたしは面影を探して立ち止まり、
時に夢を見たような気がする
言葉しかない世界で、
紙 ....
風に揺られていたね
僕らはなにも選べずに
別れの言葉を強いるのは夕風
信じることも疑うことも
選べずにいた
僕らを置き去りにして
地球 ....
{引用=今も変わらずに花の名である人へ}
きっと気紛れに入れたのでしょう
桜の花びらが
はらりと、
不意に零れ落ちたので
もうどうしようもなく立ち尽くしてしま ....
夕暮れの図書館で
あなたは時間を忘れて頬杖をついていましたね
わたしは夕焼けに見惚れるふりをして
ずっとあなたを待っていたのですよ
あなたがわたしを思い出すまで
....
古い町並み
もう、思い出は薄れて
それでもまだ
オルゴールの音はかすかに響いた
緩やかな下り坂の終わり
あの曲がり角を越えて
少女時代が
降り積もった ....
冬の木漏れ日の中で懐かしい歌を聴きました
懐かしくてももう泣けない自分がいました
それが寂しくてそっと瞳を閉じました
太陽が淡く輝いた冬の日のことです
太陽 ....