アゲハは真上に飛び立つ。
目的があるみたいに
だけど少しも慌てず鷹揚に
まっすぐに。
あかるい春の日
かわいた地面に
ゆらゆらと落ちている
アゲハの影。
高く舞い上がれば
薄 ....
白い花瓶が割れて
白い花が落ちた
僕ははっと驚いたよ
もう君はいないのに
君に何かあったのかと思ったよ
君は白が好きだった
花も白い花が好きだったね
初めての ....
静かな午後に 空を見て思い出した
最近 思い出さなかったのは あまりに忙しくて
わかるとかわからないとか そんなことを考える間もなく
時間が過ぎていったから
わからないことをわからないと ....
すうっ
大きく息を吸い込んで
毎朝高く昇った太陽と
朝食のトーストの匂いに
目覚める
目が覚める時に
吸い込む空気は
澄んでいなくちゃ
目覚められない
朝、吸い込んだ
空気 ....
みんなに嫌われた日は
母の やきそばにくるまって
少し テレビを見る
母は やきそばをもうつくらないので
15年前の
とり肉入り のかけら
やきそばに とり肉は合わないと
ずっと ....
卒業なんてものは 単なる通過点だと
そんな醒めた目で
寄せては返す 波の音
海の緑は 誰かの目の色に
似ている
起き抜けの
一杯の珈琲と一本の煙草
まだ寝惚けた頭には
今日が昨日で
昨日が今日で
起き抜けの
一杯の珈琲と一本の煙草
ボサノバなんて聴きながら
一日に一度しか味わえない
その味 ....
あなたに会うということは苦しくなること。
あなたに会うということは痛くなること。
あなたに会うということは私が私でいられるということ。
あなたに会わないということは世界がちっぽけに見える ....
いつもそこに見えている すぐ目の前にだ
共同幻想でもあるぞ 南無阿弥陀仏
現実の世間でも至極あたりまえの
他動説 信じて生きてきた果報者
石の上にも三年 その三年間
近づくと逃げてゆ ....
心地いいくらいの
暖かな日差しに
桜の花びらを連れた
春の風
そんな
よく晴れた日には
陽だまりの中
嫌なことなんて
忘れ去ってしまうくらいに
走り回って
疲れ果ててしまっ ....
あんまりいつもの事だから
誰も泣いたりしないが
昨日のお前はどこへ行ったのか
死んだのか
それともそこの隅でひっそり泣いているのか
行って帰れば別の人
どうしてこうも
行って ....
あいります。
程度、その刹那
あいります。
夢ならね、少しは躁
あいります。
違う
あいります。
ちょっと待って
あいります。
止まんないのね
あいります。
程度、その ....
冷たい水の熱さに触れ
公園に立つ冬を見る
檻のなかの時計と噴水
公園に歌う冬を見る
風は痛く
水は閉じる
風はたくさんのものを集めている
誰もいない道を
ひとつ ....
わたし
春の畑をあるく
やわらかな雨に匂いたつ
赤土
影の淡い腕が
いくほんも突きだして
足首をつかむ
でも
死んだ者のちからはよわい
幽明のあわいに建つあの門が
ぎらりん ....
きゃらめる 6
ねじ
1
まいばん
ねむるまえに
もうひとつだけ
からだのねじを
はずしてみる
おそるおそる
....
私は
友達とか他人に
モノとか
何かして
あげるのが大好き
相手の
喜んだ姿とか
心から笑った笑顔を見ると
こっちまで
嬉しくなってしまうから
相手にもらうことばかりを
....
春の夜の淡雪は消え残り
白と紫に染め分けた山が
灰色の空のなかで静謐に光っている
午後の暖かな日差しが雲を溶かし
日陰に水路のながれる町で
冷たく甘いチャイを飲んだ
開け放った窓は ....
たとえば悔いることも
不意に 喜ぶことも
時とともに 偶然にとけてゆきます
午後4時半
Tシャツの上に羽織るこのニットを
褒められたのは 初めてです
それはなんて 心躍るできごとで ....
隙あらば寂しいと言おうとするこの口を
誰か縫いつけて下さい
私が言うことで傷つく人がいるだけで
何も生み出さない
この言葉を
誰か縫い付けて下さい
一人眠る冷たい布団
ど ....
あきらめたものは
余計にほしくなる
あきらめた人は
余計にあいたくなる
俺は
弱っつちいし
あきらめが早いから
いつも
あきらめたものが
あきらめ ....
やわらかな
ふあんは
やわらかな
やみに
つつまれて
しばらく
そこを
うごこうとは
しなかった
やみのなかは
めがなれてきても
やっぱり
やみのなかで
きみのこと
こ ....
色とりどりの人々が
角を曲がっては消えていった
降る雪の一粒一粒が太陽になり
地を貫いてはかがやいていた
空に届かぬものと
地に届かぬものとが手を取り合い
壁を巡りつづけるものの目に光 ....
君が見ている
みんなぐるぐるしてるその中で
ひゅーん
ってキリモミしてるのが
僕だよ
僕なんだよ
あれが僕なんだよう
いや
そうじゃなくて
やっぱり僕は
明日もぐる ....
ここから出なくてはならんのである
いつもよりは前向きな気分なのである
なんとかせなならんのはわかっているのである
何をどうしたらいいのかもわかっているのである
こんなことしてる場合でないのも
....
ぽっかぽかの
日干しされたふとん
お日様のにおいが
ほんわか
あたたかくて
心が
溶けてゆくみたい
そんなふとんを
頭まで
すっぽりと
かぶったら
その日の
嫌 ....
いろんな花が咲き乱れている
春なのだ
少し眠いかな
あまりにも花がきれいなので
驚いてみていたら
少女が私をあざ笑うように見ていた
たまらなく悲しくなった
花は枯れていく ....
マジマジと目の無い目を剥いて来る
いくつもの腕の無い腕が迫る
からみつき離れぬ脚の無い脚
ほころびた布切れ身に纏い裸足
クメールの微笑みいっぱい湛え
絵葉書 ショール 竹細工 切り絵 ....
世界の偉い人達が 島に来た
この国の偉い人達は おおわらわらしい
島の偉い人達は 自慢げで
でも
愛する僕の家族は いつも通りだった
島にとって 大切なものはなんだろう
この ....
そこにプールがあって曙と泳げる。
肥満体おどらせて水飛沫をあげる。
可愛くてたまらないまるで嘘のような
滑らかな褐色の肌をしたオンナ。
残された人間の時間感じながら
オトコの命の ....
三月九日午後四時時四十五分
僕は友達に会う約束を破られたので
しょうがなく家まで帰っていたら
前方の空 遠く彼方でカラスが堕ちていった
南無。
思ったのは それく ....
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