いくつもの読点で、あなたを区切って
体内へと運ぶ


元のカタチを、思いだすこともできないくらいに
細切れに、咀嚼していく
小指の爪から、過日の砂が落ちて
潮の匂いがした


 ....
鳥になりたいと思った
そしたら
鳥になった


はばたくと
風はいちまいの紙だった


会いたい人がいる
その街だけが
記憶のかたちをした白地図


飛ぶ。
風には声もあ ....
庭に植えた橙(だいだい)を
隣のいい年頃の娘が じぃと見ていた
熱視線で家が燃えるわい・・・
と小声で冗談を言いながら
剪定ばさみを手に持って
「家のは少し酸っぱいんだけどねぇ」
と呼 ....
冬紅葉の点在する山深く
孵らない卵の無事を祷りながら
死んだ鳥たちが青い空から降りてくる

「きれいなからだの時にもっと」
「若い奴らの指は欲しがってばかりじゃ」

その朝に目覚 ....
線が、みえました

線が、みえていました

「ここからはいらないでね」

そう
いつでも


めにみえないかなしみ、というやつは
そこら
ここらに
ころがっています
 ....
(天井の氷がひび割れた
 その底の底に わたしがいる 息吹きだけは浮き 消えて
 それまでの距離には かなしみが詰まって
 砂となって流れ 降る)


深いところでお会いしましょう
眠れ ....
おだやかに今日も晴れて
廊下を しん と
わたしたちの影がのびていきます

手首を引かれて あなたは
すこし
つまさきで歩いていました
わたしはあなたよりもずいぶん せいが高いから
お ....
集められる限りの写真を集めて、アルバムにすればいい
一人部屋でページをめくり
かつてあった日々の思い出を愛せ
それらの日々をノートに刻み込め
言葉にできないことはみんな行間に遊ばせたまま
言 ....
さみしかったんだ
ほとんど狼みたいに毛羽立った孤独を
ずっと人の死角にかくして



宇宙に旅立ったアホウドリの飛行士の話。
最近、ようやくこの星に戻ってきた彼の話によると、
宇宙の中 ....
沈黙をファイルしつづけた理性は

つぶらな意識をふとまたたかせ

早春の空にくりひろげられる

光のハープを聴いている
おぼろな 三月

見晴らしのいい 場所で
遠く 帝都を仰ぎ見たくなる

両腕を広げると
風に 翼

東京タワーまで
フワリ フワリ 飛んで行けそうだ

春 霞
飛行の航跡に
 ....
もう、
どこからどこまでが地図だったかなんて
関係なくなって
美しいことをいうよ
きみはきみで


ごらん、
すれ違う人々の両手には、何か
約束のようなものがぶら下がっているね
 ....
{画像=080302220223.jpg}
ぶくぶくぶくぶく
ぶくぶくぶくぶく
風呂は大きい。
ぼくは魚になって
夜中の風呂場に泳ぐ、
ぐうたら魚。
体にもんもんができて、
ぼくはいっ ....
ああ
いくつもの候補があったよ
さくらとか、みかんとか、まりんとか
植物や風景が多かったかな

もう生まれてくる季節なんか
どうでもよくってね
まろんとか、こなつとか、みさきとか
次々 ....
あしたのことを
考えていました
今が今でしかないことや
過去が過去でしかないことは
そっと忍び来るあしたにくらべれば
ずっと簡単なこと
あしたはいつも単調 そんな貌で

あなたのこ ....
果てのないような冷たさの
季節にあって
白い六角形の粉末は
人間の傲慢を
目覚めさせてくれるようだ

横に吹き荒れる風を友にして
人の造った灰色の道を
埋めつくし
道と道でない境界線 ....
土と肉の熱を計る
なかば眠りながら
蝉の幼虫がさくらを吸っている
土をほじくり返し
あやしたすずめをその手ずからうずめ
いらなくなった枝を突けば
まるでそこだけが日溜まりのようです
 ....
噴水のそばでは
アビリティーが無効になります
仕事の話はやめましょう
大声で電話しながら歩いている人
あなたの内側を掃除したい


 2004年11月23日制作の上記「噴水の話」から、昨 ....
白い大きなシャツを着た
無邪気な少女が
駅前のロータリーに
集う鳩の中心で
詩の朗読をはじめた

僕も鳩に交じって
道路にダンボールを敷いて
排気ガスを吸いながら
彼女の言葉を聞いた ....
玉葱の味噌汁に
なみだを一滴入れてみたものの
塩加減は少しも変わらず
だれも悲しくなりませんでした

風の強い庭先に鳴く野良猫に
思いつきで名前を呼んでみました
ずざ、と塀を駆け上がる音 ....
1.「ナオタへ」

{引用=すこやかなよるに
知らないこと を
ふたりで 机にならべた
フライ返しで
ナオタは
ひとつずつ
ひっくり返した
ナオタは
ゆびがやわらかくて ....
きっちり塗っていたのに
反対車線にはみ出す
雲が蜘蛛が雲の隙間から太陽や太陽が鋭い爪を
刺す
差す
おおきなおおきな
くも
はみ出た者を串刺し
みんな応援している
手拍子が聞こえる ....
おなかが痛くて
おやすみしたという娘が
しょぼくれた眠い目を
こすりながらくれた
カカオ

バレンレーの日と
君が言ったから
誰がなんと言おうと
今日は
バレンレーの日

あた ....
立春を過ぎて
この冬一番の冷え込みが続く

ピンと張った透明な空気に
色づいていくのは期待感かな
早くこの冬を綻ばせて

もこもこに着込んだ重いコートにも押しつぶされそう
あ〜あ、今日 ....
2月の光が
視界を捕える

頬抜ける風の透明度は
日々が穏やかである事の
尊さを
教えてくれる


階下では
くつくつと
鍋で泳いでるビーフシチューに
ブーケガルニと赤ワインが ....
 ニワトリ小屋の扉を開けて
 射し込む朝焼けの光に
 山吹色にかがやく
 あたたかな藁をもちあげ
 あるか
 ないか
 たまごが

 のぞきこむような気持ちで
 布団から起きあがる
 ....
レクエルド。
砂時計が音もなくなだれを成して舞い墜ちる
夜にあなたは迷いこんできたちいさな銀河を
手のひらでつつむように抱きとめる 葉脈を
透かしてみえる地球の裏側では生れながらに
しろ ....
新しい雪の降り積もった
静かな屋根やねが
水平な朝に焼かれて
私の底辺をもちあげる

増幅する光の波が
うずくまる私の手をとり
青い影を洗う

そうして
裸にされてゆく、わたし
 ....
時折天井から記号が滴る

灰色の水槽の中には青白い都市が浮遊している

祭壇めいた台の上で
少年はくる日もくる日も
華奢な実験をくりかえす
時々淡いひとりごとを呟きながら

ほのかに ....
防水が付された言葉の鈍角が扉を叩いているのを見ていた


ロシアンティー陶器の縁が欠けていて言葉は絶えて積もる骨の春


精巧なデコイを彫った。単音の別離はかちりと錠を回した。


 ....
藤丘 香子さんのおすすめリスト(1956)
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