月光をすくい、すくって
髪を洗い
ほっそり
とうめいな櫛を曳く
鎮まってゆく肌、肌に
しみこんでゆく
流麗な調べ
{引用=
呑まれても
ひとひら
抱きしめても
ひとひら
....
コルトレーンのサックスが
僕のペンを踊らせて
水色のノートに
リズムを覚えた言葉達
派手に転んでは
また立ち上がる
詩がダンスなら
人生だってダンス
空白のページに
素敵な言 ....
砂浜のちいさなたそがれに汐風をうけて
ふとった子蜘蛛が舞い降り詩集の端の水をのむ
大気中のかなしみも八つにきざみ鋏角にはこび
せんべいのように噛みくだかれたこころ
わたしはお前に咀嚼されな ....
露草色の空を
のどかな雲が流れて行く
いつか見た雲が白い蝶をかたどって
私の頭の上を
風に吹かれて飛んで行く
どこへ行くのと手を振ると
今度は白い子馬となって
東の空へ駆けて行った
....
朝、自転車に侵入された
ちょうど起きようとしているところだった
カロロと卑猥なペダルの音を耳元でさせ
とても恥ずかしかったが
俺は初春のように勃ち
自転車は器用に車輪をたたみ侵入してきたのだ ....
切り別けられた岸で、
あなたはいつも、
わたしを見ている。
わたしは水で、
あなたを流れ満たしている。
対岸の、
あなたとあなたは、
ふたり。
わたしは ....
たったひとつの言葉
大切な
なくしてはならない
いきている喜び
あなたのもとに届けたい
母の日のカーネーションのように
感謝も込めて
日中の眩い陽射しの下で
踊る蝶々も ....
地下鉄はきらいだ
そとは暗い
こんな朝に
あいさつを
したいのに
*
このうすいからだの皮膚に
染みだしたような
うわずみのような感情が潤んで
それを掬おう ....
きみどりの薄皮をひらいて
瑞々しい透明を露出させる
縦に切っても
横に切っても
どこまでもたまねぎだから
うれしくて
うれしくて
なきそうで
やわらかい切り口に
崩れそうになる
か ....
鋼鉄を 遙にしのぐ
美しく、強靭な 折り紙細工の船にのり
飴色のラタンの椅子に腰掛けて
今宵もまた 私の人差し指は、
暗く果てしない 緻密な航路を正確になぞる
航行中もドアの向こう側には ....
小さな海で泳ぐ
大きなこびとが
小さなやかんで湧く
大きな沸騰が
小さな水道から流れる
大きな水圧が
小さな寝息で見る
大きな夢が
眠りながらこの今も
見た目に小さく
ひそやかに大 ....
ビルの
濡れたところと乾いたところ
海岸通りによく目立つ
あの一枚岩のビルが
晴れ間の舞台に立ち
静かな雑音と共生しはじめたばかりの今
まるで定規で測ったような岩壁のところどころが
濡れ ....
ひどく僕の指先が透明になる気がした
記憶の中の君は後ろ姿ばかりで
どんな表情だったかも思い出せない
ぼくは少しぬるくなったコーヒーを飲みながら
君がいつ帰ってくるのか、こっそ ....
黒縁の眼鏡をかけた教授の講義が一段落すると
スクリーン上に映し出されたままの
夏の星座がゆっくりと回転し始める
古びた校舎の窓側を覆う暗幕は
その歳月 ....
素潜りで
{ルビ鮑=あわび}を密漁する
丹後半島の
夜明け
海で生まれた太陽と
山に入る月の夢、
肩がこる
髭の男が少年や
座礁した五月
白身のま ....
1997
ひらいているのか
ひらいてないのか
ラムネの瓶から転がりだした目で
すべての皮膚が内側からはちきれて
剥かれた/剥いた
滲む赤い体で
そのひとつの透明な血袋が
なににも触れな ....
噴水の仕組みがわからないから
それはもうじっと見ているしかできなかった
一定の水が噴水の中にはあって
それがどこかで汲み上げられて
吹き上げられている
そして落ちて回る
それくらいはわかる ....
ふいに夕立ち、
道を行く人々
急ぎ帰るなり引き返すなり
笑っている。
うなる空
大粒の水玉
白い歯で
目を細め笑い合う自転車の学生
それでもパンツをかばう女学生
缶蹴 ....
?,河川敷
熱を出した私の連れ合いが熟した果物がその表皮を裂いてガスを放出するような寝息を立てている。
身につまされるような気持ちで風邪を訴える連れ合いに食事と感冒薬と冷えピタと ....
今日は夕焼け空だった
だけど今日は相変わらずどこへも入り込めなかったので
迷っているうちに一日が閉じた
そして空欄の日記が増える
今日も何もない一日だった
なあ、嘲うなよ電気
そりゃ確 ....
かわいがっていた犬が死んだ夜に
新しい犬を飼おうと思う人がいました
家族、いなくなる為に準備をして
汚れた服を着るほかないのなら
いぶかしそうな視線に
それでも
違います、とは云え ....
名付けたいひかりの先に
やさしいリビング・ルームがない
一握りのたましいが
あかるみに美しく滅んでいる
並んで有機物が芽吹く
動とも植とも
青とも赤ともつかないまま
....
1
もう、
ふりかえらないのだ
髪をゆらしていった風は
束ねることはせず
つまさきは
後ろに広がる汀を
走れない世界にいて
こころだけがいつまでも
波になりたがっている
....
三丁目のタバコ屋さんの向かいの家に
春のはじめに女の子が遊びに来ました
少女はギターを抱えて 切なく響く歌声で
僕を幻想の世界へ つれていきます
三丁目のタバコ屋さんの向かいの家で
....
Ser immortal es baladi;
menos el hombre, todas las criaturas lo son, pues ignoran la muerte;
lo ....
{引用=長いのでお暇なときに読んで頂ければうれしいです}
reonさんの散文『フォーラムのポイント付与あるいは詩と批評についての考察』を読んで、「詩を描かない批評家がいない」ってのは、 ....
ダンボール箱
いや、もう、箱ではない
これに
俺は
云いようもないさみしさを覚え
やあ、俺が
もう、君のよに、なってしまったら
どうしよか
なりたくはない
ダンボールのよに
雑用さ ....
とかく、そのフォームの美しいこと。
僕は退屈になるとよく相談したものだ、
ねえドリー、君の肺癌以上にかっこいい死に様ってあるかな
ドリーはヤニが浮いた歯茎を扇子で隠して
腐るほどにあ ....
意味もなく
突っ立っている
その言葉に
気づいている
きみひとり
髪をぬらして
雨の中にふたり
傘をひとつ買った
初恋の朝
目的もなく
寝ころんでいる
その眼差しに
気づい ....
ここだけの話って言うから
僕はここに置いておくつもりだった
あなたの大きな目を信じて
たいして大きくはないと思ってはいたけど
そう言うから
嵐が去って
野原を見渡せば
あそこに
....
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