在る様に見えた向かいのプラットホームに
止まる列車ばかりを待っていた
落ちかけた陽に照らされ
辺りの羽虫も塵も金色に飛び交う中
次第に此処へと近づく車輪の音を聴いていた
けれどそれは ....
そんなの嘘よ と
ベッドに腰かけた少女は私の目の前で若草色のワンピースを腰まで
たくし上げ秘所を露わにする。不釣り合いな厚手のストッキングを
躊躇なく下ろしそして両大腿に咬み合わさった品質の悪そ ....
小さな啄木鳥が
枝のむこうに
隠れて鳴いている
霜に白く
苔に覆われた墓石の上に
戯れる小栗鼠
韜晦する記憶のメレンゲ
青い雫
仄かに紅く冷たく
かじかんだ ....
町から街へ
子供から大人へ
僕の小さな足が
大きな坂道を下る
池の周りを囲う家並み
そこら中で
夕食の匂いがして―
母さんも料理を始める
僕は父さんの為に
ビールのグラス ....
江古田のアパートで阿鼻叫喚していた頃
鎌倉高校前の砂浜で
途方に暮れる
溢れる涙は
激しい波打ち際で海の滴になる
どれだけ涙を流せば
砂漠は森に還るだろう
ドキュメン ....
いつもなら
真横から朝日を浴びる時間に
ライトを点灯させた車が
飛抹をあげて通り過ぎていく
ふいに
まだ夢が続いているような
不安にかられる
クレーンを折り曲げた重機が
ごうごうと ....
きよらかな ふゆの
卵を ひとつだけ
孵らせる ために
些細な じぶんを
しきりに ふりおとす
あかん 好きに なったら
あかんのや けど
好きなんや
あかんと 思えば 思うほど
けいたいの
でんわばんごうの
並び方さえ
好きなんや
せやから 抱いているとき
辛いじかん ....
ひかりの葬列のような夕暮れに沈む、
クラチャニツァ修道院のベンチに凭れる、
白いスカーフの女の胸が艶めかしく見えた。
捲り上げられた白い腿は、悲しげにも見えた。
わたしの少し疲れた掌のなか ....
こどもたちが
口を真っ赤にしながら
園庭であそんでいる
誰かをつかまえ
気に食わなければ噛みつくために
こどもたちは
細い睫毛にひとつずつ
金銀の王冠をつけており
その毛並みは ....
きみのりんかくをぬいあげていく
オルガンの重さが
ひかりににていて
急に
まぶたがいらなくなる
砂糖の
あじをわかりたくて
紅茶ばかりのんでいる、午後
猫が行った
声に体 ....
暗示は歩いてゆく
眠りをめぐる回廊を
重ねられた便箋のあいだを
どこかためらいがちな
静かな足どりで
誰ひとり知り合いのないような
それでいて誰もに挨拶をしているような身ぶりで
暗示 ....
乾電池が足りない
と昨夜寝言を言ったあなたは
夢の中で久しぶりに
何を作っていたのだろう
今日は朝から雪が降ってる
あなたの故郷のように
たくさんではないけれど
もう誰も
あな ....
朝口の犬とのサンポ日課とし
夫征きてより一年過ぎし
*
みずいろのさかなを
凍ったうみで
凍ったうみの
その下で泳がせている
気泡の、結晶
つめたい手
掬うことのない
うたがう事もないさ
たとえばわたしたち
ストレスにまかせて
....
水晶を砕いてください船底でふゆの花びらかくまうように
捨ておいた言葉に幾度も拾われて星座のたもと鋭角を知る
閉じかけた波音の日がよみがえる月の鏡の無言を浴び ....
はねた、石は、
水のなかを、水を
大きく、全身でえぐり、ゆれて、水は
痛みで満ちた、が、血は、
流れずに、水のなかを、水の
深いところ、へ、
着席する、石は、
水、ではなか ....
曼珠沙華、燃えて燃えてなお夢の中
オホーツク海を目指した鰯かな
撫子の可憐を食む羽虫達よ
うろこ雲幼き日に見た水彩画
流れゆく、うろこ雲さえ息を止め
アロワナに憧れたんだ ....
運ばれてゆく
ものがたりについて
ずっと聴けずにいたことを
ようやく受け取ったのは
はやすぎた夏、の
たてがみ辺りの
なごり風
眠る、ということが
どれほどの守りで ....
浸された水は
つめたく
ねがえりもできないほどに
なぜか凍みたまま
あの人ごとをさらって
いって
かなしい
のふちにいるあの人
たしかにいかされ、芽生え
一つの
さむさの中にい ....
妹が嫁に行くのですよ
あれは妹が3歳ぐらいのことだったか
サンタクロースがやってきたとき
母にしがみついて 泣きじゃくってた あの娘が 嫁に行くのですよ
「幸せにしてもらえよ」と言 ....
冬の朝の肩口を
ふゆ
となぞり、柔らかさを与えてみる
100℃が滑り落ちていく、
白い学校から海までの坂道のなかで
袖をつかまれたまま
伸びきってしまうラーメンのような
(海はきらき ....
あそこで
庭木の手入れをしているのが父です
もう随分彼は
そこから動かないので
毎日
朝夕の水遣りをするのが
私の日課です
週に一度
伸びすぎた腕や増えすぎた首の ....
一.
青を
反故にした
空
よりも
事情がある
真昼につき、
雨はふらない
二.
鋏の持ち手が緑だったことから
分け合いたくない
ままの
手 ....
寒風に手指をかばう
待つとも待たないともいえぬ朝まだき
冷え切った空気が
空高くから透明に降りて
ちいさな公園の
遊具に残る最後のぬくもりを絶やす
ほぅ、と湿った息を吐く
....
雨に不安と不機嫌を飾り
原のなかを歩いている
遠く 近く
水の姫は咲いてゆく
坂へ至る午後があり
ふいに流れ落ちてゆく
遊びも笑みも
到かぬほどに落ちてゆく
....
あ わい ムー ド
き みを だ くの
あ かい ルー ド
し みが つ くの
....
黒板の日直欄は空っぽでもう聞こえない幼い号令
すみっこでカロリーメイトをかじってる後ろ姿に見覚えがある
段ボール製のアポロの操縦桿左に倒して難破しようよ
....
龍の影を追う
内奥の土地で
龍の姿が見え隠れする
胸中の宮で
意味深に
瞳 輝かし
深く 遠く
私を導くがごとき仕草
妖艶の煌き
白龍の娘よ
下弦の弱い ....
昨日、往きすぎた駅――
マイホームは地図に載ってない。 )))
疲れ果てた大勢の人たちが、
十二月の憂鬱なプラットホームで
蜜柑の載った赤外線炬燵と
逃げ場のない積みあげた日々の
....
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