新しい風を引き連れて
花粉が宙を舞っている。
その軌道は非学術的でも
その姿は強烈な意思を内包している。
無愛想なハチとクロスして
花粉が宙を舞っている。
その生き方は決然とし ....
アヤメつらつら うた歌い
アゲハがいちわ陽に透けて
あすを夢みて歩くのだ
きょうをふみしめ丸を描く
きのうはどこへいったやら
「あなたの愛は、枯れはせず
ぼくたちの出会いを事故と名づければたちまちエアーバッグが邪魔で
消えかかる蛍光灯の真似をするきみの瞬きずっと見ていた
きみのその背中の刺青の蝶を捕らえるために彫りし蜘蛛の巣
....
ふでばこを開けると
アフリカの草原が広がっていて
夕日に向かって一人
お相撲さんが
四股をふんでいる
何故あの日
僕はふたを閉じてしまったのか
守るべきものなんて
まだほんの少しだ ....
出ない答え/突きつけられる結論
+
赤ちゃんが歩いている。右手。左手。右手。左手。右足。左足。
右足。左足。右、左、右、左、右左右左右左右左右左右左右左
右左右左右左右左右左右左右左 ....
昨日、うちに迷い込んだ、
丸い目をした子猫が
夜の空の右側と
夜の空の左側を
不思議そうに交互に眺めていました。
空は相変わらず広いから
多少のものは描くことができ ....
きみは静かに
美しかった
この土地はきみの中で生まれ
きみは一滴の
沈黙の中で
ぼくの愛を生んだ
走り去ってゆく時間は
さまざまの彩りの中で
きみの姿を奪い去ってゆく
空を穴が空くほ ....
ぼくは歌わなければならない
風をひとつ折って その先で
記憶する 読むことのできない詩集の中で
ぼくは歌わなければならない
花と恐竜の足跡を辿れば
やがてぼくらは海の波のひとつであること ....
どこかの家の玄関先に
生い茂った樹が
風に吹かれて揺れている
その下で三輪車に乗って
遊ぶ子供達その中で
薄汚れたペットボトル片手に
楽しげに空を仰いでは
夕暮れ時の空気を
さも美 ....
六月の
曖昧な空の下
白くたたずむ部屋
横たわる私の身体から
刻一刻と
鼓動がこぼれ落ちる
けだるい指で
クロニクルのページを繰る
季節は私には
いつも晩くやってくる
忘却 ....
知らない方角から
明るさを取り戻してゆくかのように
朝はぼくのもとにやってくるのでした
遠くの響きは
古い透き間から静かに流れ
ぼくを取り囲むのでした
後戻りする物音は見あたらないのでした ....
細倉鉱山は
日暮れにどこかへ通じていく。
無人の坑道の先にあるのは
ほんとうの地名か
親しい人のまぼろしか。
夜,蔵王の山陰に
たよりない記憶はのみこまれ
吹き越す風に
....
丘の上の大木は
夏には皆に清風を
雨の振る日は雨宿り
雪の降る日は傘になり
誰にも優しい安らぎを
与えて生きているのだと
皆のために役立って
皆を守っているのだと
木は自負して立ってい ....
泥船に乗ってしまったと
退廃色の涙を流す
行き着くところは地獄が浜と
漕ぐのも忘れ泣きじゃくる
独りぼっちが淋しいのなら
私も一緒に乗りましょう
沈んでしまえば手に手を取って
別の浜 ....
男は長い間カバンの中に住んでいたが
ある日旅をすることにした
もちろんカバンを忘れなかった
昼間は旅を続け
夜になるとカバンの中で寝た
朝起きると同じ場所にいることもあったし
誰かの手 ....
東の空はうすあかい
あちらには街があって駅があって
こんな夜更けにも
時折は貨物列車や寝台列車が通り過ぎ
その音がここまで響いてくるのは
雨が近いからだろう
ぼんやりした常夜灯の光の下 ....
ミュールはおろしたて
アスファルトを蹴る
素足はまだほの白くて
スカートの裾が翻る
風は
やまない
のうぜんかずらの
つるを揺らして
ひらがなで の を描いたら
空が ....
うちあけることは、むつかしい
しろながすくじらが
{ルビ吼=ほ}えるとき
わたしは
ちいさく「え」と鳴く
しろつめくさが
幸せを茂らせるとき
わたしは
亡霊とかけ落ちする
....
花は
咲きました
果てしなく
遠い色をした
沈黙の産声を放ち
それは
ここに刻まれています
みわたす限り
墓標の無い地平(こんな世界があるとしたら)に
墓穴をほり
ここに
種 ....
いずれにせよ
暮れていく日は
潤みをおびて
今日を終える
熱いうす紅色の
暗さに泳ぐサカナの背には
虹色の羽が
時をうけてはためいている
空の濃さが増すにつれて
キミの輪郭は ....
ジャララ
6月の弾力はぼくらを弾ませる水力が
そこらじゅうで揮発する
近すぎる誤解を向日葵の種の側に埋めたりする
ジャララ
太陽の方角を追い続けていくことも
ぼくらには必要なことかもし ....
すべてが終わると
その町にも銃を担いだ人たちがやってきた
彼らはこの国の言葉や
この国の言葉ではない言葉で話すものだから
町の人々はますます無口になった
少年は喧騒と沈黙でごったがえ ....
雨
降るのかしら。
今
先のことなどわからないから
ただ ありのままを見つめる
内側で降る
血の流れが
どうしようもなく
わたしを形作り
{ルビ廻=めぐ}る
こんなにも
....
把みきれない現実に
心が過剰で収拾がつけられない
はみ出してゆく言葉たちが
僕を取り囲む時空に傷をつけてゆく
瞳はいつも怯えたように見開かれてしまう
何故対峙してしまうのだろう
何故融合で ....
かなりむかし
子どもの頃には神様がたくさんいた
崩れそうな石段を登ってゆくと
空がだんだん近くなって神様が降りてくる
樹齢千年の銀杏の樹のてっぺんに
神様はいらっしゃるのだ と神様が言った
....
ポストになりたくて男は
ポストの隣に立ち大きく口を開けた
ご丁寧に首から
「本物のポストです」
と札もぶら下げてみた
けれど誰も手紙を入れてはくれない
華やかに装った初老の女性も
....
{引用=
人知れず咲く
水中花に
寄り添う
田螺の仮眠
せせらぎの
子守唄
寝息は
小さな泡となり
花弁を
くすぐった
ボクのこと
気づかないふりを ....
月はやがて
西へかたぶく
闇は薄目をあけて
とうとう光を受け入れる
朝は少しきむずかしやで
眉間に皺をよせながら
うすむらさきの靄を吐きだす
なにもかもが起きだす前の
ほんの密やかな静 ....
郵便受けに溜まった新聞が日焼けしていた
古い日付は、風に晒されて
更に風化した遠いあなたの
背中に張り付いて
帰ってこない のに
201号室の、窓から入る西日を受けながら
忘れて ....
それは
いまにもきえいりそうに
ふわふわと
ぼくらのまえにあらわれ
ながれにおち
みずいろにひかりながら
ながされていったけれど
あのひ
だれにしられることもなく
ひ ....
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