孕まないことにすがるのはよせ、と
男は背中にいろいろな武器を背負う
産卵を邪魔しないで、と
女は腹にいろいろな楽器を抱える
部屋の中がけむくじゃらになって
お互いの顔も見えないのに
ど ....
ねぇ
ぼくたちは、
もっと、笑っていてもいいと思うんだ
もっと、はにかんでいたっていいと思うんだ
むずかしいこととかじゃなくて
かなしいくらいの澄んだ青空を見上げていて、 ....
空はいつからか
うそをつくことを忘れたようだ
また 冬に近づいた
寄せ集めた言葉で
とりあえず冬を迎える準備をした
....
猫のながぐつ、なっちゃんは
アヒルのくちびるで
せんべいをコリリ
よくきたね
あくしゅ、あっしゅ
星のくつした、さくらんぼ
唄いながらお絵かき
なっちゃんは、ようせい
(たんぷ ....
アデン
三日月の夜にケンカしてかけ出したら道にまよってしまった。
どこをどうはしってきたのか、気づいたら公園がすごく大きくて僕はようやく立ち止まったんだけど、滑り台の下でしばらく ....
柔らかく重なる
雲の色彩は
思う
あなたの
帆走する
今を、未来を
かすかに拓かれる
澄んだみずいろは
呼吸
わたしの
アクアリウム
泡よ、せつなよ
いつのまにか、ふた ....
図書館の本は
公務員みたいに黙って
読まれる、という役目を
少し怠そうに待っている
田舎の図書館は
どうも品揃えが悪くて
本にも覇気が無い
手に取ってみても
抵抗はしないけれど ....
君はぼくのベートーベンの人だから シューベルトの子守唄聞かせて
照れたときいつもより二音高いファの音で笑うあなたとハモる ラ
この部屋、星がきれいに見えるねとは ....
物語にも詩にもなれない言葉たちが積もっていく
それは、心の、大きな空洞を埋めることなく
外に積もる
臆病者には、逃げ腰の姿勢がいちばん似合いだよ
罪悪感を抱え込んで
それは、この砦に残っ ....
赤い川縁を歩いていた時
僕にとっての君と
君にとっての僕が
同じだなんて信じてた
夕暮れの合図が
街に鳴り響いた時も
どうにもならないことなんて
どこにも無いって信じてた
月が ....
ペンギンの求愛よりも美しく 季節はずれの半そでの君
マフラーの巻き方すこし横着で 君の名を呼ぶ朝のただいま
ヘンな角度の頬づえで秋の夜の作戦会議 恋をしている
....
優しい国のふもとでは、
テレビのなかで、パソコンのなかで、
夥しいテントが並べられている。
積み木のような高層ビルの森の透き間を埋めて、
資本家の設計した本土総力戦を生きた、
こころに赤い傷 ....
無音が無音をわたる波
青空よりも遠い青空
どこへもたどりつかない坂を
息つぎだけがのぼりゆく日
雨は生まれ 雨は消え
雨は雨を巡っては消え
坂を駆ける髪と背に
翼の苗 ....
誰もぼくを知らないところへ行きたい
優しい人も
厳しい人も
生意気なやつもみんな棄てて
誰もぼくを知らないのなら
ぼくが知っている人たちのところだって構わない
ぼくに関する記憶を消しさって ....
わたしは、あなたが思うよりも深く、沈んで、いる。
それは深海のようであり、深遠のようでもある。
あなたはあなたが嫌いで、いつも誰かを、装って、いる。
あな ....
しらんだ空が
産んだ青い退屈
駄菓子屋の秘密
ゆうぐれのすきま
纏った仮面を振り回す
夏の日の少年
残像の香りはせっけん
ぶんぶんごま
鉛筆を構えるより
丸め ....
墓に酒を傾ける
世間の片隅でありつづけた君に
酒で石が黒くひかる
夜明けに
しらじら壁を見上げた
死ぬとはどういうこと
墓に酒を傾ける
羽虫がいっとき酩酊している
....
しーっぃぃ 静かに
静かに
耳を澄ます
耳を澄ますほどにやって来る
夜があるではないか
届こうとする
届こうとする夜が
やって来るではないか
いくつかの笑顔と空 ....
母は言う
あなたは本当に優しい子だから
母は言う
それから大事なことだからよく聞きなさい
僕はそのあとを思い出せない
あれから
僕は随分と大きくなったけれど
特に優し ....
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秋を絞り採る作業を
定数で合わせようすると
声が出ないことに気がついた
黙っていろ、という事なのかと思い
あめ玉を舐める
れーろ、
....
鮮やかに 雲が
青空から 吊り下げられて
細いナイロン糸が
結び目を のばして
雲は動く
己の腕の寂しさが続くかぎり
雲は行く
己の知らないくにざかい
雲の影が落ちる
....
しずかに秋は
しずかに染みて
紅柄色に染まった桜葉が
夕闇の風に揺れ落ちて
歩む速さで声を聞く
かさこそ、かさこそ、
いつかは土に還ろうと
囁きあって
紫、薄紅、白、青藍
....
明るみが つぶやく
影が出来ていて
潅木に 優しい陽光が
密かに 染み渡って
今日 静かな作業を編む
コスモスを風は包み
清涼な空気は
明るさを溶かし込む
ソーダ水の輝きで ....
美しが丘5丁目の
Y中学校脇の坂道の頂上で
朝日を、夕焼けを、月を、
もう10何年も眺め続けた
朝日は時に足取りを重くし
夕焼けは時に涙を流させ
月は時に孤独を連れてきた
それでも今日も ....
「天国と地獄」なんて振り幅の広い恋にあこがれて咲く
片すみで温めすぎた恋心冷たい指先ひらいてにぎって
「今日きみを思った時間10000秒」なんて数値化できない愛しい
君の ....
欲望の鉛を引き摺りながら
知の砂漠を横断する革命家に
思想の雨が降る
右手には弁証法
左手には力への意志
瞳に映る世界は空虚で
輪郭のぼやけた風景は
ただ後ろに流れていく
....
ピッチャーの投げたボールが
輪郭をあやふやにして
雲の形になり
やがてひつじになって
待ち侘びていたバッターと
いっしょに頁から退場していく
指が擦り切れるまでめくり続け
....
私は眼鏡をかけてよく負ける、無重力を味わうかのように。
鳩尾に鈍痛が走るように、断腸のように、そのように。私の泣かない場所が、
糸巻貝のなかで爪を噛んで噛んでいる。私という肉はすぐに罅割れ、れ ....
おとなはみんなこまった
あるいは
憐れむ目をしている
幼さは無垢である
無垢は無罪ではない
うつくしいことばを
どれだけならべても
乾燥しきった
血色のない唇から
つたう おとの ....
黒い道路を
雨が流れて
激しい雨が
夜を始めて
光が映って
楕円に歪で
激しい
雨が
降って
鍵盤を
両手で
駄目な
両手で
ちぎれ
....
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