盗んだたばこを干し呑んだ冬枯れの日
降り積むひかりを踏みしめると泣いて
頭が乾いて冷たく割れた
おんなと名乗る人に連れられ
水垢まみれのざらつく家には
もう帰らないと告げる
曼谷の ....
いちたすいちは
にじゃないと答えたら
みんなに笑われた
でも
美術の先生だけは頷いてくれて
スケッチに出かけた
あの丘の上から
故郷の青空をいつまでも眺めていた
ずっと憧れていたこ ....
夕暮れ色の飛行船、
たくさん空に浮かんでいたけれど
空と一緒の色だったので
誰にも気付かれないままでした。
*
毎朝、起きたらすぐに顔を洗います。
....
夏の夜空はアンタレス 赤く輝いてる
思い出すのは あんたです さそり座の一等星
浴衣姿のべっぴんさんが金魚バチを眺めてる
部屋の隅では黒猫が泳ぐ金魚を狙 ....
木曜日の朝の雫が絶叫をあげている。
尖った街頭の佇まい。
通勤の熱気をはおったDNAのひかる螺旋の群は、
わたしの散漫な視覚のなかに、
同じ足音、同じ顔を描いていく。
振子のようなまなざ ....
空と僕らには距離がなかった
窓は開かれていた
白いテーブルの上に
幾千の微細動
まるでナイロンの弦を束ねた
世界のつけ根はたなびき
差し入れる指は風に同調する
触れた先からほろほろと物語 ....
ちいさな定規で世界を測る
一ミリよりも
さらにミクロな世界があることに
普段ほったらかしていた
ものがあることに
僕をみていたものが
あることに
ちいさな定規は
うなずいて
そっと教 ....
もみじ もみじ
てのひら もみじ
衣笠の秋の空 染み渡る
東山も 嵐山も 頬を紅く染める
ひとはあはれ 賀茂のながれ ずっと見てた
もみじ もみじ
てのひら もみじ
衣笠の秋の ....
遮光カーテンの四隅に朝が零れている
うつ伏せで眠る君をベッドに残し、
素肌にすばやくドレスシャツを着て、
夜の逞しい身体は、そっと部屋を出てゆく
落ちてゆくエレベーターのなかで――
右手 ....
あなたのいのちにきょうめいして
あたしのからだのいちばんおくの
ちいさな鈴がふるえてる
あたしのものとはおもえない
きれいな音で鳴っている
切れ端に描いた港町に
一筆のカモメを飛ばしていた
パラパラ捲らなくても
風波に漂い
白色の青空を泳ぐ
行間をぬうように
実線をもてあそび
そして港町は飛行機になった
青色の青空 ....
久しぶりに口笛を吹いてみたら口が笛になっていた
何度言葉を発してもフィーフィーとしか音が出なかった
周りの皆は大層大袈裟に哀しんでくれていたが
涙が出ている者は一人も居ないようだった
哀しんで ....
後ろすがた かわらないね
しゃんとせんねって
相変わらず 美人だね
中洲の女王やもんね
ひさしぶり
俺は元気
左の奥歯がひとつ欠けちゃって
すこしは老けたって言われるよ
おばあちゃ ....
ああ、今日も雲が浮んでいる。
青青と吟する空の重さに酷く狼狽し、暮れへ連ねてあるく。
おまえは「きょうもええ天気やったね」と暢気に
両手をうえに、背を反らせて伸びをする。
....
人びとは沈黙を挟んで同じ世界に
仲良く寄り添う
皆はこの豊かな沈黙に
穏やかなメロディーに
静かに耳を傾けて心地よさそうにしているので
僕も同じように耳を傾けてみる
電 ....
{引用=短編小説。長いです。}
僕は睨みつけた。この狭い視界の中から、猜疑心満載の眼差しを、ちらつかせながら、今見えている僕の居るこの世界に、差し向けた。
掴もうと手を伸ばしたが、こ ....
{引用=
きみがとなりにいて、まつげの
触れるくらいとなりにいて それは
おどろくほど退屈で いとおしい
午後で}
きのう、オジギソウが発芽して
日記にそのことは書かなかっ ....
温泉宿はがらんとしていた
白く濁った湯が注ぎ続ける
昼に聞いた滝の音
湯気の向こうに
千切った半紙のような月
誰にもわからないまま
どこか遠い場所で
ほどけていく
支点を定めると
不安定になるので
そのまま
確かでないものは
確かなものより
永遠に近いので
ひとつになりたいという ....
すうすう、する。
この胸のあたりの感覚は。
誰もが知ってる、
冷たさなのか。
一発、一発。
撃たれた。
静に引かれたトリガーは。
スコープで覗いたように。
綺麗に当たっ ....
この頃先生は子供の全てを把握したいのか
不審人物を排除するだけじゃ足らずに
学校内にテレビカメラを設置
見える物だけが全てではない事実を
大人は忘れてしまったのか
自分の目に映るものだけ ....
おおむぎの穂が、ゆれてる
ひかりやかげに、ゆっくりとけて
ぼやぼや、いまにもきえてしまいそうなくらい
クロード・モネのえ、みたいに
ぼくら、ぼやぼやしている
ぼくら、相田 ....
ふと、風が止んだ。
ひととせの幻を手に
いくとせも彷徨う旅人
一体何に酔っているというのか。
帰る場所は{ルビ何処=どこ}に捨ててきたというのか。
正午を少し ....
君がいるから 何もいらない
君が笑えば 何もいらない
嘘じゃないよ ほんとだよ ホントだよ
ポケモン全部集めたよ
うちでのこづちも見つけた
だけど、君がいるから要らなくて いらなくて ....
あなたを想えば
私が私を溢れます
だけれど誰かの為に泣けるほど
美しくなんて無いのだから
これはきっと涙ではないのです
ほんとはもうはっきりとは覚えていないのだから
これはきっと涙 ....
白詰草の花冠
年上のお姉さんに教わった
作り方
今でも覚えている
手に草の露を付けながら
夢中で編む
その姿は
小さな花嫁のようで
強く生きるその花は
だけど、優しく微笑みか ....
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=119535
葬列の中に見る生の祝祭と、その列にまだ入ることができないが、何かを感じる自分。 そして、生のための詩を ....
思いのほか簡潔な物語の夢が
字幕付きで流れていくのを見送って
目が覚める
昨夜の手紙はまだ届かないようで
筆の跡は今日も乾かない
ささやかな足音で
捨てに行きます
思い出に引っ掛った ....
ことばなんて おぼえちゃいけないのかな
保育園の先生に さよなら を言いわすれた
ユキ姉ちゃんが
いつまでも半ベソをかいている
そのすぐ傍で たあくんが
「あびば ぷぅー」と叫びながら
そ ....
五月晴れの匂う
青い空の下
潤いの粒がキラキラ光る
生き生きとした緑の葉っぱたちが
風に揺られて
カサカサと何かお喋りをしていた
何だろうと聞き耳を立てても
わたしは人間なので
うまく ....
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