花咲く頃に天使は旅立ち
氷の大地に降り立った
寒い寒い北の果て
天使は何を見つけるだろう
残された人々は
嘆き悲しみ
咲き始めた花さえ枯れてしまう
止める声も聞かずに
天使は氷の大 ....
目の前でいきなり事故が起きた
4車線で反対側の道からこっち側に右折しようとしていたクルマが
そっち側の道に渡ろうと停車した俺のクルマをさいわいにチャンス到来と渡ろうとしたら
俺の横からかっ飛ばし ....
現実とはと彼が切り出したので、言葉の続きを待った。
現実とは道だ。それも廃線だ。草が茂り、傍らにゴミが散乱し、どこからかガソリンの匂いがする。吐瀉物や廃棄物のシミが至る所に散らばっている。線路は錆び ....
何処にも行き着くことはなく
そっと明かりを灯すように
静かに確かに歩んでいる
過程にのみ意味が開き
繋ぐ意味に花が咲く
そんなひたむきな息継ぎを
ただただうつくしく晒している
(目眩くよ ....
青空のように真っ青だった空
すごろくをすごくつくってすごす図工
どこかの地層に残っていた涙
ただひとつだけ言えることずっと言う
生まれつき
泥じゃなく砂をかためたふたりのからだは穏やかな波にさらわれ
いつしか跡形もなく
消えて
しまって
から
さらさらふたりきりで 小さな
肌のかけら
となり
青い ....
思い出は遠のくのでもなく
色褪せるのでもなく
失われるのでもなく
ただ軽やかになっていくのだ
綿毛のようにフワフワと
この世界を風に乗って飛び回り
ふとした拍子に舞 ....
二〇一五年九月一日 「明日」
ドボンッて音がして、つづけて、ドボンッドボンッって音がしたので振り返ったら、さっきまでたくさんいた明日たちが、プールの水のなかにつぎつぎと滑り落ちていくのが見 ....
表情が見えないマスクに慣れたら
言葉だけでニュアンスが
分かるような気がしてきて
真実が見えないSNSでも
文字だけでニュアンスが
分かるような気がしてきた
錯覚かもしれないけどね
....
真夜中の台所で 小さく座っている
仄暗い灯りの下で湯を沸かし続けている人
今日は私で 昔は母、だったもの、
秒針の動きが響くその中央で
テーブルに集う家族たちが夢見たものは
何であったの ....
今日高曇りの空の下、
肉を引き摺り歩いていた
春という大切を
明るみながら覚えていく
妙に浮わついた魂を
押し留めながら、押し留めながら
離れていかないように
剥がれていかないように ....
聞きとれない靴音がいくつも通り過ぎて
わたしを避けるように交差した
どこからかしるべの虫と
やわらかそうな短い影
君はやっとヘッドフォンを外して
そこまで寒くないことに気づくんだろう
朝い ....
おとこが夜中にやってくる
そのおとこは生まれたことがないのである
いっしょにゆこう
どこへ
とおくへ
くちびるでかすかに笑っている
いそいそと身を起こして
服を着て出ていこうとすると
....
手綱に導かれながらよろめく
いつの間にか鉛の靴を履いた
老いに削られ痩せ衰えた体
荒々しい息が吐き出される
ひとつひとつ生まれる幻影
熟さず霧散する己を舌で追う
間もなく土に帰 ....
降り止まない雨が
心の奥底に言葉を溢れさせ
魂の隙間から
零れ落ちるような光滴たち
無数に煌めき散逸する
終わらない旅路の果てに
訪れるもの一つ
想い描けないなら
何億もの地上の眼を掃 ....
人間は皆初めてを繰り返す
産声
初めて口に含んだ乳首
それから
初めて地上に直立した日
それからも
初めては繰り返される
いちいちあげたら切りがない
そして
そして
そ ....
これまでに触れたすべてのものよりも指先こそが遠かったのだ
極寒の世界から
春の視界を切り開く
早起きになった
暖かな陽光が
まだ固く閉じている
桜のつぼみたちに
語りかける
さあみんな
もう春だよ
今年は大雪で
ウ ....
イコールの募る恋
いこるのつのるこい
イコールへどんどんと足したどんどんと減る恋
いこるへどんどんとたしたどんどんとへるこい
イコールでなく、辛くぐらつく撫でる ....
家を出て 当てもなしに歩いた
道を渡り 林を抜けただ独りで
ふるさとを 遠く離れて来てしまった
戻ろうにも 路半ばを過ぎてしまった
柔らかな陽光は悴んだ掌を宥めた
のどかな南風は凍っ ....
運動靴のかかとを踏む癖がなおらない
だらしのないかっこうして街を歩くのが性にあってる
そう言えばキスをした事ほとんどなくて
それでも女の体には夢中になれた
本当は根っから寂しがり屋
....
毎日夕方
嫁さんとスーパーマーケットに食材買いに行ってる
十五年落ちの軽自動車で
私のクルマ人生三十年越えたのに
その間に一度も新車買えてなかった
買えたのは他人の手垢がさんざんついたものば ....
ぼくは好きな人がいるのか
嫌いな人がいるのかわからない
まだそんな人に出会ったことがないから
何歳になったら人を好きか嫌いか
決めていいんだろう?
小さいころ親に子供が好き嫌いするなと
怒 ....
土曜日の午後はいつも満室
会うのは今日で最後
ベッドに並んで
チャットアプリを削除する
さようなら。元気でね
父の命日
墓石の花立に梅の枝を挿す
ねえ、元気にしてる?
遅くなっ ....
辛丑(かのとうし) 牛も辛いが 自粛する
泣きぼくろ 愛した君の 三番目
真っ白な スケジュール帳 もう二月
ペンギンは 鳴かず飛ばずの にんきもの
帰れない パンダの気持ち ....
眩しくて片目を閉じた
世界は半分になったのに
見えない方へ
君が行ってしまうなら
僕の心臓を
側に置きたい
風が止んだら
自転車を乗り捨てて
もっと深い場所で
繋がっていたいか ....
雑文
{ルビバゲット=Baguette}と云う{ルビ仏蘭西麵麭=フランスパン}が好きだ。と云って、あまりうるさい定見があるわけではない。わたしが買うのはスーパーマーケットな ....
題名を思いついてもその先何も思いつかない
これはよくある事だが非常に困る
汚い例えだが
便意をもよおしてトイレを目指しても
いざ個室の中に入り囚われの身になっても
便器に裸の尻を乗せて力 ....
そうだね、
戦争があったんだ。たしかに。
私の血の中に流れる色のない祖母の声は、
終戦の真っ青な夏空をしている。
春はどうだったろう。そういえば戦争の春のことを
聞いたことがない。春 ....
二〇一五年八月一日 「恋」
恋については、それが間抜けな誤解から生じたものでも、「うつくしい誤解からはじまったのだ。」と言うべきである。
二〇一五年八月二日 「ディーズ・アイズ。 ....
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