濡れたアスファルト、
黒光りしながら
ゆらゆら揺れ
今日は雨、
胸奥が
酷く切なく軋み
遠い記憶の余韻が響きます
*
あれは小学二年のこと
休み時間の騎馬戦で
後頭部を ....
景色はそれを必要としてる人の前にだけ現れる
それはいつの日か声の上に、言葉の上に
紙の上に落ちてくる
誰も書かなくなった詩を、誰かがまた書き始める
知っていましたか?
世界はもうすぐ微笑む準 ....
まことにここ最近は怠惰な日々を繰り返していた
それはつまり
失うものが多過ぎて得るものがない毎日だった
一日中ぼんやりとしてしまう時間に縛られて
生気をなくしていた
まるで木偶みたい ....
詩人というのは、言葉を食べなければ生きてはいけない存在なのかもしれません。でも、今の私には、世界という存在はそれを見ていても言葉を生み出すということをしてくれません。つまり、世界はそこに何かを宿して ....
人と接していると、時にその人の中に自分を見る、ということが起こり得ます。人というのは往々にして、というよりもしばしば相手の情緒やふるまいに合わせた行動の仕方をします。その時、相手が自分の思考や思惑に ....
二〇一五年十二月一日 「毛布」
きのうのうちに終えるべき仕事をいま終えて、これからイーオンに毛布を買いに行く。クローゼットに毛布が1枚もないのだ。捨ててしまったらしい。これまた記憶にないの ....
銀行からの帰り道
少し夏の日のこと思い出して
一緒に帰ったよね
前後縦に並んで
預金残高が足りなくて
感情論で帳尻を合わせた
ショーウィンドウのテディベア
2人にしかわからない約束し ....
私たちは今という瞬間に生きている
今という瞬間にしか生きられない
今という瞬間は常に死んでいく
私たちは今という瞬間に死んでいく
今という瞬間にしか死ねない
今という瞬間 ....
やさしい歌を歌いましょう。
詩ではなく、歌を歌いましょう。
わたしたちは吟遊詩人の、
あどけない無邪気さを忘れてしまってはいませんか?
恋の歌を歌いましょう。
冒険の歌を歌いましょう。
戦 ....
花びらがアンテナだ
なんて
だれも気がつかないよね
と
花たちがざわめく
よく見れば
パラボラアンテナに
にているのが
わかるだろうに
世界の鼓動も
宇宙のハー ....
あんな、人が死ぬって全然きれいやないねんで、じいさんの葬式でも、ばあちゃんの葬式でも、どっちでも思ったんやけど、棺の中のご遺体をじーっと見てたらな、蝋人形みたいで、魂がないと人間ってこんな薄いっちゅう ....
犬
朝の静けさの中で
犬が吠えている
すべてに届くように
昼のざわめきの中で
犬が吠えている
君だけに届くように
夜のささやきの中で
犬が吠えている
すべてを打ち ....
あの人は日記のような詩を書く
あなたは詩のような会話をする
その人と会話のように目配せる
かの人の目のような月が笑って
あの人たちは笑いながら消えて
私たちは消えるような息遣いで
そうして ....
浮かんでは消えていく
あの微笑みが
胸の真ん中を
射抜かないように
ぼやけて残る
マグカップに注いだコーヒーが
光を遮るから
僕等は昼も夜も
同じくらい好きだ
見上げれば夜桜 ....
本当は優しい言葉でもかけてあげたいけど
誰よりも覚めた、突き刺すような視線が痛い
テーブルを挟んで座る
手を付けないままのサラダとフォーク
言いたくないなら何も言わなくていい
どんな未来 ....
現と擦れて詩が浮かび
境と接して死が浮かぶ
現も境ももう近しく
それなら詩と死と
しとしと濡れて
行ける処まで生きませう
現と境の溶けるまで
背負った重荷を下ろすまで
背を正すこと、背 ....
夕暮れは、いつも隣に座ってた
河川敷の土手に、いつも僕と座ってた
何を話すでもなかった
ただ何となく、二人で座ってた
夕暮れは、いつも時間になると帰ってった
泥だらけ ....
また一夜が明け
光溢れる一日が来たよ
風はそっと穏やかだし
空はぼうと水色だし
街は花の香に包まれて
実に飄々と軽やかに
ステップ踏んで春は行く
おれはのそっと鬱だけれど
六十一回目の ....
夜は味気なく
だが
絶対的に
おれの残り時間を
砂時計の
ように
くっきりと表示する
嘘だろ
マジか
勘弁しろよ
詩を
書くときに
たとえばそれが
誰 ....
あのひとは
無言でオレを叱る
ホットドッグの最高に美味い喰い方を教えてくれた
オレが勝手に兄のように思っているひとだ
オレには、大嫌いな口うるさい姉しかいないが
あんなバ ....
もうすっかり春になりましたね
今日は風が強いです
咲いたばかりの桜の花が
ゆらゆら大きく揺らいでいます
■□
私は街を周回していた
人波物凄い雑踏だった
(流れに乗り遅れたら、 ....
卵から孵った雛が、初めて見た太陽を母親と思い込むように、俺はあなたを好きになった。
中学二年の春、勝ち気な瞳をしたショートカットの女の子に出会いました。「サヨナラ」、その子と初めて交わした言葉で ....
夜明け前に目が覚めてひとり
時間の狭間に取り残されたような気がする
眠りの妖精は去り
愛と憎しみと天使のことを考える
日が昇るまでの時間をもて余して
暗いうちから起き出し
働き者のふり ....
一雨毎に深まりゆく
この春日に佇んで
私は浅く息を継ぐ
虚脱の朝に不安な昼に
剥ぎ取られてしまった色を探し
*
記憶の奥の入学式
通り過ぎてく畑の野草
お母様と手を繋ぎ
....
降っているけど
どうせあなたは
雨粒のあいだを通り抜けて
両手鍋を抱えて来るのでしょう
ええ、いつだってあなたは
「最高のカレーができた」と云って
坂道 ....
感情が死んでいく
論理の下に埋もれて
死んでいく
ニュースは私を否定した
その論理は
私は排除すべきものであると
私は許されないものであると
私を否定した
いつか私が死 ....
静けさ 揺れる
春の雨、
光の空から
降り注ぎ
宇宙を回遊する言ノ葉たち
凝集しては時を刻み
思考の流れをこの界へ
屈曲しながら艶やかに
在る物、在る物、造形する
静けさ 奥 ....
雨が降り続きます。それは決して晴れない雨です。なぜなら、雨は心のなかに降っているのだから。昨日はバス停でバスを待つ傍ら、ああ、この人はきっと割り込んでくる。と、いう人がいました。案の定、彼はわたしの ....
彼女が問うそのやわらかな言葉にわたしはと惑う。
その刹那、その物腰、その唇の動き。私の目からは隠されている、それらの上に──彼女は、とても重い。母よ、すべての者の母よ、すべてを失くしたあなた ....
川柳のように短い糸だった
文末の句点がもってる円周率。
文章の外へ脱字は逃げてった
匿名であなたと話す夜のまち
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37