すべてのおすすめ
僕のぽけっとの紙片には
最新のもっとも無駄な解答が記されている
人生に必要なものの殆どが木箱にしまわれて
博物館の収蔵庫の奥深くにおさめられているとしたら
菫や蓬の花のように路傍にさり ....
二〇一六年六月一日 「隣の部屋の男たち」
お隣。男同士で住んでらっしゃるのだけれど、会話がゲイじゃないのだ。なんなのだろう。二人で部屋代を折半する節約家だろうか。香港だったか、台湾では、同 ....
クジラの胃の中で溶け始めたような、そんな朝だった。朝になりきれない重い空気の中、歩き出す。歩くことに違和感はないが、いたるところが錆びついている気がする。明るい材料は特にないんだ。アスファルトの凹ん ....
月よ、今夜は煌々と世間を照らしている。
ところで、月って何だい?
僕はそれを分からずにいる。
ただ、空に月がいるということのほかに。
月が地球の衛星だということはわかる。
月が海の満ち引 ....
薄暗い部屋で
ヤクルト戦を見ながら
野球って
こんなクソつまらないものだっけかと
自分の記憶を確かめている
メジャーを見たってそうだ
さっぱり面白くない
大谷だって体格が外人と同じだとい ....
早咲きの紫陽花を見て、立ち止まる。
曇り日のある午後のこと。午後のこと。
神……という言葉は使いたくないのだけれど、
神は早咲きの紫陽花をどう思うのだろうか。
天でも良い。
四季のあるこ ....
革張りのソファーに夏肌を吸われ、少しスケベエな気持ちになったり。
しかしそれが合成皮革だと気付くと、少しスケベエな気持ちが萎えたり。
そこの誰でもが背びれや尾びれをもっている
幼年時さかなだっただけなのだけれどね
そこの誰でもが哀しみを抱いている
それは
すでに干物になるまで
のこるのものかもしれないんだが
....
夜風がすぅすぅ網戸から
入って来ては肌を撫でる
その微妙な心地よさに
うっとりしている午前三時、
電車は大通りを走り雪山へ
凍り付くよな身震いを
誘いぐんぐん進んで行く
鈍色空を背景 ....
生きれば生きるほど
恥を重ねることになるから
早いうちに
けりをつけた方が良い
とずっと思って来たが
年を取るほど感じなくなって
何とも思わなくなるのも
どうやら本当らしい
恥をかきま ....
かの女は夢の隠語
かの女は愛の代名詞
そしてくずかかったおれを見棄ててしまう、
見殺してしまうなにかだよ、「ユカコ」
バウハウスの故郷の果てで摘み取った林檎が、
葡萄でなかっ ....
高台から遠浅の浜を眺めると波の照り返しには目が眩む。
鰯の群れを追いかけて飛沫をあげるスナメリが、
ハセイルカの一団を連れてやって来た。
小屋の喜三 ....
猿と云う現象のわたしの傍らに
犬と云う裝置が風のように現れ、くっついて寢ている
裝置は靈魂であり、
{ルビ何某=なにがし}かの意圖が具現化しそびれた餘剩らしい
....
二〇一六年五月一日 「叛逆航路」
お昼から夕方まで、『The Wasteless Land.』の決定版の編集を大谷良太くんとしていて、そして、大谷くんと韓国料理店に行って、居酒屋に行って、 ....
クソ野郎
と
クソ女が
アイしあって
何回もやっちまった
夜の市営公園
その駐車場に停めたクルマん中で
でもそんな男と女なんて
掃いて捨てるほどいるから
ホテル代ケチって ....
泣き虫だった僕が
泣かなくなったのはいつからだったろう
少しだけ嘘をついても
滅多にばれないことを知ってから?
怒られても開き直れば
強く言われないことを知ってから?
みんなと ....
野の薊を食卓に飾りながら
一杯のコーヒーを飲む
小鳥の囀ずりを聴きながら
青空を眺める
散歩の途中に独居老人を尋ね
世間話に花を咲かせる
コロナ下でも
小さな幸せは
ある
君も詩人なら
透明なペンくらい持ちたまえ
黒い万年筆とか
青いボールペンとか
そんな当たり前のペンで
満足しているようじゃだめだ
透明なペンなら
どこにでも言葉を書くことができる
しか ....
夜更けには
私からもう一人の私が抜け出して
アパートの部屋から出て行く
すっかり暗くなって
静寂に飲み込まれた市街へと
彷徨い始めた
まるで夢遊病患者さんだ
コンビニの明かり ....
うつくしい
ものが
欲しい
むさぼるように
あるいは
沈み込むように
この涼やかな
夜風を浴びて
半ば発狂し
半ば落ち着き払い
細胞の、一つ一つが覚醒し
脳髄の、うっとりと微 ....
世界のことなんて
次でいいよ
つよくなる夢と濡れてく体
寝そべって目をあけて思い出を忘れていく
いい感じに傾いた
記憶を引き剥がしてさ
錆びた鋏みたいな
つまんないものばかり目に ....
もうすぐ生まれる君へ
いつか語り伝えたいことがある
君が懐胎されてから
初めての心拍確認の日まで
本当に大丈夫なのか
ちゃんと生きていてくれるのか
不安で心がいっぱいになってしまった
....
謎が多すぎる
のに
肝心な謎の正体がわからない
謎が謎を呼んでいるからだろう
謎の数を数え出すときりがない
羊みたいに眠れなくなった夜に数え出したが
余計に眠れなくなった
夜 ....
高い夜空が澄み渡り
晴れてはいても、なんともさみしい
きらびやかなネオンサイン
きれいだけれど、中身はからっぽ
あゝどうしたらたどり着けるのか
あゝどうしたら充たされるのか
途方も ....
哺乳瓶を手放した甥っ子が
コップに注いだリンゴジュースを飲み干した。
父に手を合わせ
今すぐにでも伝えなくてはならない。
病院の待合室
「いつか、孫と一緒に飲めたらいいね。」と
願 ....
ずっとナヤミ続けていた
ナヤミ続けていたけど
ナヤミの正体はさっぱり掴めなかった
その内に
何者かが
ナヤミから
ナ だけ盗んでいった
なので
ヤミだけが残ってしまった
....
インターネットに嵌まりこんでしまった
インターネット恐ろしき
気づいたら袋に入れられて叩かれていた
仕方ないか
インターネットの正体とはそんなものなんだろう
やっと目が冷めて
....
二〇一六年四月一日 「愛のある生」
愛のある生
それが、ぼくのテーマだ。
「生」とは
いのちの輝きのことだ。
しかし、嘘は、すばらしい。
人生を生き生きとしたもの ....
夫が「コロナ感染者濃厚接触者」になって帰宅した
お相手とお互いマスクはしていたけれど
数時間対面で事情を聞いていたので
後からわかったのだけれど
「コロナ感染者」との濃厚接触者と認定された ....
ついこの前まで
白い花を咲かせていた木が
早くも新緑へと移り変わり
午後の日差しに照らされて
青々と輝き揺れている
その木の根元を
春の青大将の群れが
唸りを上げて進んでいく
....
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