欠落はせずに
只々遠く平板になっていくもの
追いかけても追いかけても
追いつけない現実に
後ろ手付いて息を吐く

二度と取り戻せない時間の堆積
記憶は麻痺しながらも
思い出したように不 ....
21
 銀行についたエルウッドはドアを開け放って乗り込んだね。
 普通、アメリカの銀行に黒のソフト帽に黒のサングラス、黒のタイに黒スーツの上下なんか着て、いきなり乗り込んだりしたら、まず間違いなく ....
19
 有能なビジネスマンがみんなそうであるように、事態を呑みこんだアルバートの判断は早く、的確だった。彼はメモを取り出して、退職や失業保険の手続きなんかに必要な書類のリストを書き出すと、事務に行っ ....
91
同じ月の夢に 
ニャー
   と哭く


92
過ぎゆく夏を見ているのでしょうか
こちらでもようやく
蜩の声が聞こえてきました


93
君に伝えたいこと ....
一人を思い続けて愛情を注ぐなんて
不可能
阿呆にはなれないんだから

でも
出逢い
幾つかの段階をへて
運命共同体になった
ならざる得なかった

男と女はお互いを見えない鎖で
縛 ....
18
 月曜の朝、エルウッドはいつもより早く起きて、三十分はやく出勤して、所長のアルバートの部屋を訪ねた。
 思い切ってドアをノックすると「どうぞ」と声がしたので、エルウッドが所長室のドアを開けて ....
長い年月で溜まった 色んな物のせいで最近は飛べなくなった
脳と言う名の袋に貯めこんだ経験は宝石のように貴重で同時に重い
どこか別の場所に移動しようとする時 
その重みの分 僕のケツは重くなり現状 ....
若冲もここを歩いていたかなと錦市場の打ち水を見る 生きてゆくために必要な愛と勇気は

イザベラが与えてくれた

僕の虚無の深淵との闘いは

まだ継続している

天球と地球からもたらされる天恵を糧に

なん号も切り結んで火花を散らし ....
嵌まる
虚の時空
実感無き生
ふざけるな!
鉄槌を打ち込む
固い硬質なビート
過去の影を蹴散らせ
執拗な愛着や温もり
脳髄を垂直破壊し
虚脱の生に力を
内在する何か
を賦活せよ
 ....
彼女は持つ
花を 花に似た見目姿を
その花が育ってゆく時間を
温かい自嘲を 揺れるブランコを
隠している本当の名前を
潮の満ち引きを 
握り拳の中にあるものを
下降と上昇と停滞を繰り返す ....
深くて静かな宙を一羽の鳥は行く
深くて静かな宙の深い静けさを私は感じる
私は気付き言い思う

たましいという いのちは、
山を形作る石の石としての役目であり
手紙入れに眠っているあの人の涙 ....
ぼくたちはいつも何処かに落ち着こうと

ぼくたちはいつも誰かに愛される為に
莫大なエネルギーをつかいながらも

それでも
せめて自分だけでも保持しようとしている


腸内フローラと循 ....
その蜩は、おそらく、その日暮らしで生きておられる。
その鳴き声は、その日一日のための鳴き声ゆえに美しい。
そこまで惨いことをしてみせなければ
わたしたちが
気付けなかったとお思いですか
それほどまでして
ただ懸命に生きていた人たちをいたぶり苦しめなければ
地道に生きることの大切さと
命の尊さを ....
 イザベラの瞳は大きくて、最初に会った時から、それがとても印象的で、そこが魅力的だった。その瞳で真っすぐに見つめられると、僕は身体が透明に透けて、精神の奥底まで透けて見えるのではないかと、不安を感 .... 真夏の空、玄関口
立ち尽くす我
草木の揺れ、
うねる大気、
光の庭

あゝ世界は無関心に
私という存在には
全く無関心に
広がり在った、圧倒的に
その時私は気付いたのだ
異郷のよ ....
白紙が僕にとっての鏡

黒いペンで繊細な心模様を描く

色の数より多い言葉の数

筆でいくつかの言葉をつついて

構想と言う名のパレットに乗せる

ブルーでブラックな心境の時

 ....
17
 結局、エルウッドとデーゥィは二時間近く、二人ともお爺さんの御伽話を聞く孫みたいにエドが話す日本の話に聞き入っていた。日本の音楽のことはもちろん、日本人の生活のこと習慣のこと、トロ、ウナギ、サ ....
仕掛け花火が好きだった

真夏の一夜
打ち上げられて 一瞬 大輪の花を咲かせて
儚く消えて仕舞うような花火よりも

その夜
私は幾つだったんだろう

子供だった

その夜
私は ....
カリンバに心あはせて奏でたし仰ぐダイクは初恋の味 16
 シカゴ・エキスプレスに着くと、予想通り、エドとデーウィは昼の忙しい時間帯を終えた後のコーヒー・ブレイク中だった。
「やあ、エド、デーウィ。」とエルウッドが声をかけるとカウンター越しに話をし ....
目下の馬鹿々々しい状況を

変えることの出来る

突破口を

ふとしたことで見つけた

イザベラを迎え入れる為にも

少しずつでも

手をつけることも

疎まれる様な現実を ....
初恋を{ルビ啄=ついば}む小鳥に啄まれたとこがいつまでたっても甘い


祖父のつくったハーモニカはなつかしい波の音がするカモメも鳴くし


泣き虫の泣き声で孕んだ空気が夏の青と白に融けてゆ ....
 新学期が始まる前の部屋替えが始まった直後に、気が付くことになったのだけど、灯台元暗しの言葉どうりで、朝食の時、食堂でいつも会っていたイザベラが、何日も食堂に現れず、ずっと、気を揉んでいた僕だったけど .... 暮らしの貧しさは容易に数字に出来るけど
人の心の貧しさは容易に言葉や文字には括れない

日々の仕事に心底疲れながら
休日にそれを癒せない
そこには命の貧しさが潜んでいるからだろう

平凡 ....
素焼きピスタチオを食べて
ビールを飲んだ夏

なにもなかったんだって
知ってるから
ビー玉の星を探す

ルービックキューブなのか
キューリックループなのか

わからないほど
運命 ....
15
 次の日曜日、エルウッドは朝から手紙をしたためていた。ペンギン、キャブ、バスター、そしてバンドのメンバーにも。兄貴やレイの夢の話や、神から使わされたレガシィのことは、とりあえず伏せてはおいたが ....
自分で揚げた、揚げたての
一キロあたり213円のポテトフライを
食べながら、ふと思う
しあわせだなと、恵まれていると
現在、働いていない
それなのに
氷入りのコーラを
朝からがぶ飲みして ....
 イザベラは最初から、僕の外見ではなく内面を見てくれたのだと思う。要領が悪くて損ばかりしている僕の人の良いところや、外見からは分かりにくい、子供じみている傷つきやすい純粋なままの精神とか、他人には伝わ ....
道草次郎さんのおすすめリスト(1130)
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