その花には名前はなく
道の隅に ひっそりと咲いていた
それをみつけた きみは
その花に名前をつけた
その花は、あたらしい「いのち」を与え ....
あった方がよかったのか
なかった方がよかったのか
考えはじめると夜を越えてしまって
ますますひどい顔になる
手と足があって
布団の中でいつまでも冷えている
眠気を待ちながらすりあわせて ....
はじめて
デパートへ行った日曜日
父は紳士服売場で
ジャック・ニクラウスになる
母は婦人服売場で
エリザベス女王になる
兄はスポーツ用品売場で
王貞治になる
姉はレコード売場で
....
体に雨があたり続けると
冷えていく寒さに
体内に取り込めば力となる水の
私とは相容れない歩みを知る
宿り木のような両手の指を暖め
握りしめる手の甲を濡らす雨と
向かい合っている体内を巡 ....
最近どうにも足が疲れて疲れて仕方が無いので病院に行くと
一応疲れていますねと診断された
一応と言う言葉にむっとしたが
いやそれは最初から分かっているのですが
原因が分からんから調べて欲しいので ....
鱗が一枚一枚
剥がれ落ちるように
今はまた
別な種類の魚になって
あなたを飼うことに
とても忙しい
引き出しを開けると
テーブルと水草がないので
ホームセンターへ買いに行く ....
こどもの頃棄てたはずの手が
壁の中で指をならしている
むかし山の小川に浮かべた舟が
朝のトイレの水面をはしっている
出会った人も別れた日々を憶えずにはいられない日々
雀たちの六月 ....
何を植えるかなんて
考えもなしに
掘りおこした
庭のすみ
やわらかい土の頂きに
雀が降りて
ころころと、まろび遊ぶから
つい、嬉しく振り返って
あの人の面影を探してしまう
幸 ....
すやすやと
安らかな寝息を立てる
ちいさなちいさな背中
このちいさな背中に
どれだけの重荷を
背負わせてしまったんだろう
たくさんの痛みに耐えて ....
朝埼京線の中で
学生の頃好きだった人を見かけたよ
もう十年になるんだね
なんだかやっぱり素敵だね
青臭かった僕の見る目でも
間違ってなかったね
化粧が薄くて色が白くて
どこか悲しそう ....
ちいさな ちいさな
そらを見つけたのは
近所の公園で遊んでいた
三歳くらいのおんなのこの
瞳の中
よちよち
浮かんでいるようでした
おおきな おおきな
うみを見たのは
田舎の天文 ....
´
生まれたての
ダッシュされない
耳の美しいカアブ
描いて
´
(何か音)
聞いたこともない
さわれない
見る
ことも
青空に
シャープ
黒鍵に落ちる
細い指
....
シオリちゃんは わたしを見つけるといつも
はじめまして、と言う
わたしも はじめまして、と言う
たくさんいっしょに遊んでも
次の日には わたしのことを覚えていない
でもシオリち ....
洞窟が歩いている
しっぽがついてる
持つと 取っ手だ
時計のおしゃべりで
眼が咲いていく
片側通行の車線へ
ながれ星がころんでくる
焼き海苔で包まれた過疎地
望遠鏡のような振袖 ....
いとしいあなたの指
夜風はやさしく撫でる
小船は浮く
あなたは帆になりゆく
街の明かりはまだ
眠らないで見てる
星は咲き乱れ ほら
あなたの髪に降り注ぐ
これからふたりでき ....
換気扇が、軋んだ音を降らす。
両親たちが、長い臨床実験をへて、
飼い育てた文明という虫が、頭の芯を食い破るようで、
痛みにふるえる。
今夜も、汚れた手の切れ端を、掬ってきた、
うつろな眼で、 ....
ヘンリー 私の膝の上でお眠り
窓辺に当たる雨の音を聞きながら
時々は 可愛い耳をぴくんとさせて
解った振りをしてくれれば いい
ひとり言を 話すから
....
陽射しを包み込んで
柔らかい手をした
風が
頬を撫でる
気持のよいそよ風
抱きしめてあげたい
その温もりを感じて
応えてあげたい
その優しさに感謝して
風は黙って ....
夜がさらりと降りてくる
目覚めない
女の髪のような
さっきまで長く長く伸びていた影は
地面に溶けてしまった
あるく
あるく
よるのみちを
夜が満ちてゆく
そこここに
....
過去に
もうそこに姿のない俺と
君だなんてほんとは呼んでなかったおまえがいたとして
過去の青色はどんな色であらわすべきだろうね
それはどんな色ですっていやあいいんだろうね
俺の頭の中には ....
ひくく香りは 風の帆を駆け上がり
瞑っているもやの巣の中
はやく運ばないと
息を つのらせてしまうから
どこかに隠れていた
泡の綿帽子が
ささやきを運んでいく
祝いのメロディのなか
少し照れたおまえは
肩をすぼめて優しくゆれている
ななつのロウソクの灯を
遠く、近く
瞳に映して
{引用=
おまえの生まれたときを思い出すよ
(パパ、気絶しち ....
はしゃいで飛び込んだプールの底に顔面を泣けるほど打ったけど
涙をプールの水に紛らせ笑った夏でした
カルピスが痰みたいに絡んだけれど
白くて甘い夏でした
台風で傘が根元から折れたけど
....
目が覚めたら朝が来ました
目が覚めても朝が来ました
昨日と同じ今日が怖いので
今日と違う明日が恐ろしいので
僕はバリアを張って僕を弾いてしまいます
僕らはオーラを発して僕らを放してし ....
ほとんどの人は、もう
溺れているの
誰も気づいていないだけ
澄んだ指さきが
アルカディア、と答えて
空の一角をさす
新しい風景、新しい秩序
それは
見たことのない宇宙
(行け ....
裏通りに 傾いた陽が落ちてくる頃
放課後の声たちが 初夏の帯にのって
泳いでくる
バギーの乗客を覗いて
ほんのり口角を上げて
青いランドセルが追い越してゆく
まだかたそうなランドセル
さ ....
絵本を読んでいました
それはとても悲しいお話でした
私は涙を流して
それは絵本の一ページに落ちました
その涙が乾くまで
私はそのページをずっと眺めていました
そのペ ....
{引用=
浅い夢に色を塗って
コバルトブルーの空にして。
}
辛いことがあったとき
一人心の中だけで
泣けるような大人になるには
まだ、時間がかかりそうです。
....
取っ手は行ってしまった
バイクの音がかすれた墨汁を片足で飛ばす
埠頭の上でバケツは
なわばしごの底にくるまれた
千鳥足の洞窟を
掘り起こすため釣りをしていた
エンジンのトマトは酢を ....
首を傾けたまま
縫い針を
炎で焼いて
縫いました
ひと針
ふた針
み針目で
あなたは目を覚まし
俺の目を縫いとめるのは誰だ
と申します
私は器用に玉結びをした後 ....
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