本当は存在しないもの
駄菓子の当たり
国境線
赤道
風
本当は存在するもの
自販機の当たり(たまに当たるんだぜ)
戦争
孤独
花
ほんとうはさみしいんだ
ほんとうはね
地下鉄の吊革に左手をかけて
全てをあずけていた
座席の学生服の三人組が目を泳がせていた
真ん中が左斜め前の女を指さす
「これ?!」
右の学生がコントのように真ん中の頭を手の平ではたく
「声 ....
医者になって十三年目の夏。
病棟を回診して、今日も313号室へ入る。
そこは、病棟の患者さんのうちで密かに「十三号室」と呼ばれている、重症部屋なのだ。
5床あるベッドのうち、1つ目のベッドに ....
100円の森であなたを捜す
あなたは私の5cm上で
森と遊ぶ
母さん
私は5歳です
あなたを見つけられなくて
今にも泣き出しそうなんです
今は大人の身体に居るから
平気なふりで立っ ....
ほら起きなさい、と
布団をめくったら
息子が石になっていた
くしゃくしゃパジャマの真ん中で
小さな石だ柔らかい色の
まだ磨かれも割れてもいない
服着せようにもサイズが合わない
....
疲れて食卓にたどりつく
おやじは定年退職した
おやじがつくった飯を食う
箸を落とす
拾おうとする
かがめる腰が、まげにくい
どうも
おもいどおりに体動かん
ものわす ....
まぼろしは
青空の下
児童公園の、ねむたげな
楓の木陰の
ごむぼーる
夏がくる
あつくなる
汗をかく
ひや
あせをかく
誰にも届かないと思っ ....
さいきんなぁんもかんもわすれていきよるち
おかあちゃんがいいよった
なーなー、おかあちゃん
ぼくんことも
いつかはわすれてしまうん?
こーえん
ゆうやけこやけのあかとんぼ
うしろのし ....
指と指の間から
零れ落ちていくそれが青春だと
零れ落ちていくそれを左手ですくい
左手から零れ落ちたそれを右手でつかもうとする
もどかしさに胸をかき
からっぽであることにはたと気づく
ぬるい ....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126