{ルビ雀=すずめ}の親子が列になり
1・2・3・・・
路上のひなたに
小さい影が跳ねている
現実はいつも
残酷な音をたてるからね
いまだに
感情をふりきれないこの男は
情けない、と
つぶやくコトバ以外を思い浮かべられなかった
あてもなく
わらい顔をつくっ ....
優しい国のふもとでは、
テレビのなかで、パソコンのなかで、
夥しいテントが並べられている。
積み木のような高層ビルの森の透き間を埋めて、
資本家の設計した本土総力戦を生きた、
こころに赤い傷 ....
誰もぼくを知らないところへ行きたい
優しい人も
厳しい人も
生意気なやつもみんな棄てて
誰もぼくを知らないのなら
ぼくが知っている人たちのところだって構わない
ぼくに関する記憶を消しさって ....
爪痕がなんだというのだ 紅い染みがなんだというのだ 滅びゆく我
我を手厚く葬られたし 国道に擦りつけらるる畜生なれど
愛されたし 海の寝床をうしなって引き離さるる二日目の親子
....
交差点 黄色信号 傘持たぬ二人に細い秋雨の降る
自己判断でゆけと告げている点滅の赤その向こう側
助手席で君の視線の動きにさえ見惚れてしまう我は盲目
怖いと言いながら本当は何も恐れてい ....
墓に酒を傾ける
世間の片隅でありつづけた君に
酒で石が黒くひかる
夜明けに
しらじら壁を見上げた
死ぬとはどういうこと
墓に酒を傾ける
羽虫がいっとき酩酊している
....
しーっぃぃ 静かに
静かに
耳を澄ます
耳を澄ますほどにやって来る
夜があるではないか
届こうとする
届こうとする夜が
やって来るではないか
いくつかの笑顔と空 ....
子宮から産道を通って思いっきり息を吐いたら
絶望が打ち寄せてきた
だけどまだ、母の温もりを知らないので
知るまでは死なないでおこうと思った
階段を登ろうとしたら
絶望が打ち寄せてきた ....
母は言う
あなたは本当に優しい子だから
母は言う
それから大事なことだからよく聞きなさい
僕はそのあとを思い出せない
あれから
僕は随分と大きくなったけれど
特に優し ....
僕らという生物
は
さみしいシステムで動いている
あまり言うと何だから言わないよ
{引用=
雨はアスファルトを打ち続け ....
鼻をかもうと
男便所の扉を開けたら
トイレットペーパーは
三角に折られていた
便器を囲む壁に取り付けられた
ベビー用の小椅子には
説明シールの絵が貼られ
腰を丸めておじぎ ....
初夏〜秋
初夏よりも光る男が耳に触れそっと私のピアスで遊ぶ
瑞々し背中に並ぶ脊椎を一つ一つ数えて眠る
マスカラをしない瞳が好きだというそれは誰の瞳の話?
背中から ....
黒い道路を
雨が流れて
激しい雨が
夜を始めて
光が映って
楕円に歪で
激しい
雨が
降って
鍵盤を
両手で
駄目な
両手で
ちぎれ
....
救急病院
年配の女性
無理な笑顔で処置室を出てきたそのひとと
隣り合ったレストランで
偶然向かいの席でまた会った
女性はコーヒーを頼んだあと
ハンカチを取り出して
目 ....
俺、ザムザ
丸くなって寝ていたら
海老になっていた
エビちゃんになってしまったから
もう
仕事には行かなくていいのだ
底に沈んで
苔の類をついばんでいればいーのだ
下半身をゆるゆる ....
「親父はがんもどきだね」
「お前は豆だよ」
「母ちゃんはさといもだね」
「いいやじゃがいもだ」
「婆ちゃんはもはや梅干」
「それはそうだな」
ぱりっとした衣に
じゅ ....
冷たい井戸の水を汲んだら
とたんに雨が降ってきた
開け放した口に次々と
重たい雨粒が入ったり砕けたりした
久しぶりに自由に飲める水だけど
濡れて帰ればまたぶたれる
痣は青い花のように
....
子供たちは
キティちゃんのホークで
なぽりたんを召し上がる
何千キロという海の大きさも
何十万ガロンという容積も
その喫水の深さも
まるで想像できない
きっと、大切なことなのだろう
....
先日詩人の夫婦に会い
日々寝不足の夫の目に
{ルビ隈=くま}ができていたので
妻に「大丈夫?」とメールした
妻の名前で受信した
返事の中味の文字からは
「大丈夫だよ」と
夫 ....
くるるるるるる・・・
羽ばたいて
空へ吸いこむ
黒影の
鳩の言葉は訳せない
one は one
一 は 一
「愛」 は 「Lo ....
あなたは
いつも楽しそうだけど
時々
みんなから離れて
ぽつんと一人で
カメラをいじっているよ
わたしが寄っていったら
笑って
たまには
わたしの写真を
撮ってくれるから
思 ....
どんなに鮮烈な映像も、感情も
あとからあとから
注ぎたされる
とろりとした夢水に
輪郭を曖昧にして
とらえようとするほど
淡くまぎれてしまう
過去と未来の、あるいは
前世と来世の狭 ....
雨という予報で
雨合羽を着込んでの
葉取りの作業と
覚悟は決めていたのだが
袖口をカバーしたつもりでも
やがてしみこんでくる雨水
顔に落ちる雫に
少しづつ体温が冷える
まだ こ ....
あなたが感じた
その美しさを
僕の手のひらで触れることが出来るのなら
あなたが感じた
その痛みを
僕の右足で蹴ることが出来るのなら
あなたが感じた
その優しさを
僕の頬がさ ....
昨日
柿を取ろうと
腕を伸ばした塀の上から
落っこちた親父が
とっさに捕まった物干し竿が
身代わりのように
ぐにゃりと折れた
午後
急に画面が消えたパソコンを
電気技 ....
両の指を痛い位絡めて
錆びたフェンス越しに友を見ていた
立ち入り禁止区域
思い切り高く遠くへ放った
僕達の鞄
一瞥して走り行く
君の ズザザと力強い
足元の埃
駆け上が ....
夕暮れと同じ色をした
雀の群れを乱しては進む
道標を飾る白い花
いつの世も悲しい子らはいる
わずか数秒のねむりのつらなり
分かるはずもないくりかえしのわけ
ねむりのまま ....
全てを飲み込んで許し
傷つけ吐き出す
砂
片足がほろんでいる男の
肘にぶら下がる女
際限なくせばまり風にうずまく砂は
常に何かを形作ろうとし瞬間
走るように崩れ去り
うめきすら ....
本当の入り口はどこだったのか
わかったのは
いつだったろう
どこまで上昇しても
融点はなく
波はひきかえしてゆく
そうやって
のまれても、のまれても
打ち上げられるしか
なか ....
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