子を宿す誇らしさと後悔を
ごちゃ混ぜて女は吐き出す
野原の上に建っている家はとてもよい紅色
とても満足
まんぞく
足デ満タサレルと読めてしまう滑稽さに
ほほえむ
想像を絶する痛みを想 ....
休んでる間に担当を変えられた
と嘆く彼女
突然だね というと
前から決まっていたらしい 一言もなく
休んでいるうちに外されたんだと激昂
おもしろくない と朝から大荒れ
だよね 嫌だねと ....
雪として残されるのは
なぜなんでしょう
花のように咲いて
ひとひらの暖かさだけにも
こぼれるしめりは
かすれていくだけなのに
白く つぶら なる
雪の香り
はじめての電話口での溜め息は
恥じらいながら憧れの色
「何色か聴いてみたいなきみの声」
「歌った声に似ているみたい」
話す声は低いのに不思議だよね
愛(かな)しがる声は高くな ....
遠くのほうで 貝殻色の天蓋に
やがてちいさな穴があき
こぼれる石笛の一小節を縫い付けた
あかるい羽衣の 恵みを象徴してもたらされるもの
鉱物たちがふくんでいる 大きな知恵の営み ....
風をたべていた鳥は
夢をたべはじめるようになってから ずっと
お腹をすかせ
風は
その鳥をたべたせいで
空を吹けずに
地を這うようになった
たくさんの綻びた男たちと
肌をあわせてき ....
部屋にあった服のいくつかは
わたしに合わないものでした
一番うえの兄のことを
二番目の兄が幾度も
同じように語るのを
わたしたちは
雪の音をききながら
気にしました ....
「行かないで」
遠くで聞こえた気がした17時55分
あまりに寒い夕方には
温かい缶コーヒーに手が伸びてしまう
一時的なぬくもりを
誰もが求めてしまう
コンビ ....
見えない塔のてっぺんから
見えない鐘の鳴る音がする
見えない塔には見えない人が住んでおり
少しのふこうと
少しのしあわせを
味わった
見えない塔には見えない鳥が飛んできて
よい声 ....
直球だけを
生きる君と
直球しか
知らない俺とが
やっと
いっしょに
なった時
変化球が
生まれる
とおく どこからか 風のなきごえがきこえる
今日 ぼくらの小さな家で 象が 溺れそうに
泳いでいる
厳寒の朝だ。
ぼくらは
今日も
すべてのオムツを
捨てた。
氷結する
....
ひと みな ひとり
ひとみな ひとり
ひとみなひとり
青空にいる
強く高みを掴んだ
脚に力を射して
秒速の息づかいを届けた
筋肉の震え
ハチドリの余韻
ふたごの虹
高音域を続けたのち
からだをつらぬく絹糸
歌はすべて感情から生まれ
歌はすべてあ ....
あ が揺らいでいる
あなたの ○だ
あ は 風かも
しれない
あ が涙流している
あなたの △だ
あ は いつだって あ
であるし ....
笑うと金語楼になると
細くなった母の目を
指さしながら父が笑う
明るいさざ波が立って
子どもたちの顔まで
福笑いの目になる
母が笑う日は少ないが
その笑顔はぼくの
胸の引き出しにある
....
ぎゅっと
からだじゅうをにぎりしめてまるまった
てのひらのつめあと
ああ、と、
目を閉じて、夜
心臓の音の数でなにかとの距離を測り
火を吹き消すようにして忘れていく
見えたも ....
小刻みに刻むチョコレート
ロンサム・ジョージのために
部活をさぼってクローバーをちぎる
きみのためだよ
小学生向け科学雑誌がなくなってひさしいね
ちいさなピンホールカメラを
覚えて ....
二十歳の誕生日も近づき
お祝いに赤飯を炊いたというから
おすそ分けを貰いに寄った
買物のついでにお菓子類など買って
ちょっとお祝い気分
日曜日で車庫に車がない
ああ 遊びに行ったのね
....
傘のベランダから見る
雨のとんとん
ポケットにはビスケットおじさん
割れたりしけったり
自転車タイヤの螺旋階段を
のぼっていけば虹
ストロートンネルを抜ければ
サイダーのくす ....
大柄な夜が行ったり来たりして
目にうるさいわ
と姫が言う
夜は地球の影だと
どこかの王子が教えてくれた
ならなぜあんなに行ったりきたりするの
小さな頃はよかった
やわらかいお湯に ....
無限の時から逃れるために
大型店から 時計を買う
腕につけたら タイム・サービス
すべりこむ キャッシュ ワン・コイン
仮眠しかとれないんだよ
にっこり 煮込んだ 憎しみ
すすりあ ....
太陽が今までにない形態になりつつあるという教育テレビの番組に
目が釘付けになってしまった。
太陽の黒点というのは 磁場の一部が見えるものらしい。
太陽の真上から真下へと プラスとマイナスとして大 ....
わたしがみたいもの
ちょうど林が重なるとき
岸の端だけ明るいの
わたしがみたいもの
頬のこけた旅人の耳
一年に一度受信できるラジオ
わたしがみたいもの
雨にうたれる阿修羅像
も ....
瑠璃色が
微弱な電流を絶って不明になる
そのことがわたしのこころを危うくする、
馬鹿げたことだと思うけれど
わたしは時間について
なにもわからなくなってしまったのだ
瑠 ....
夏の朝
海浜へ続く道
サンダルと
ランニングシャツで歩く
道端に月見草が揺れる
雲が盛り上がっていく
形が何かに似ている
顔
胸
腕がのびて
腰がひろがって
口が開いて
何 ....
生あくび
その雲から生まれた怪物
そこそこ巨大
暴れん坊上様
だいぶトンチンカン
不意打ちのドロップキック!
奇襲は成功し
妖怪弱り目をやっつける
安穏とした平和がおとずれ ....
ただよう雲
なびく風
うなだれる向日葵
生きているよ
話しかけられた気がして
ただようぼく
なびくぼく
うなだれるぼく
生きているか
軽く肩をたたかれた気がして
地平 ....
嫁いで どれくらいたった時からだろう
実家の両親が 他家の者として私に接し
夫の両親も 嫁として私と接した
血族でも 他家の者になった私は
実家の事には 深く口を出さず
それが お互いの ....
飛べない魚が
雲の中から這い出してくる
ふるい戦闘機のなきがら
双胴に牡蠣殻のいちめん
酷使されたラジオから
喉をさいて響く歌
あたたかいミルクを呼んで
冷たい夜に泣く ....
傷つけてる?
って
聞きたいけど
聞いたところで
変わらないから
愛は
かたちのない夕暮れだから
終わりも始まりも
ただ
沈みゆく夕暮れだから
....
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