夕方の細い夜に逃げ出した心が帰らない
大したことはおこらない
丸い窓を持ち上げて
少し空気を入れ替えるような当たり前のこと
感慨深く、目を閉じているわけでもない
警戒が服を着たわ ....
死体って本当に動かないんだ
父さんの死体は 父さんと言っても動かず
とても不思議だった
死体だけども 父さんと変わらずに呼び
唇を水に浸した綿で拭いたり
保冷剤を取り替えるのを 成る程と ....
ゆらめいている
薔薇沿線のかたわらで
白い女の子たちの
折り目正しい
プリーツの
祈りの姿勢はいつも
夏うまれの呼吸をついばんで
ひまわりの瞳の高さまで
つん と
背のびする
....
風が吹けば
裏返り 寝返る
白と黒
どちらも表で
どちらも裏で
裏の中に表が潜み
はっきりさせないことが
生きる術
だというけれど
白 黒 × ○
二者択一を迫られる
意思 ....
エアコンをつけてまどろんでいる
ねむくもないような、とてもまぶたが重たいような
外から、何か求める幼い声がする
めんどうならすべて切ってしまえばいいのに
耳にだけ意識を持ってい ....
黄昏にA.I.少女降り積もる
君纏う鈍色緋色の幸福を
うず高く重なり合っていい匂い
貴重品(遺伝子組み換えでない)彼
禍々しスイッチ切ってハエ眠る
腕 ....
プールの授業は嫌いだから
学校を休みたいという
息継ぎが
うまくできないらしい
ネットで検索してみる
吐かなければ息は吸えない
水中で吐くこと
頭をあげる向きと
タイミングにコツが ....
あと少し
この真ん中をくり抜いてでもすがりたいと思った接地面
ただ視覚だけの存在になろうとも見ていたかった三角形
物質に寄りすぎて踏みにじった心に
もうろうとした痛みで振り返る
鏡張りの ....
父の死後 葬式が終わった次の日から
働きに出た私を 奇異の目で見る人もいた
供養が足りないと 言う
しかし 私は働きにでて良かったと思う
泣いてもわめいてもどうにもならないのだ
日常を取 ....
さようならのよいんはきえなくて
冷たい湯船につかりながらそればかり
かんがえている
君にふらふらしているといわれたんで
白くなろうとおもい カルピス のんだけど
肌は ひやけ したまんまで
黒くなろうとおもい コーラ のんだけど
白めは もう しろくて
....
もつれた毛糸をほぐそうと
ひっぱったり、ひっくり返したり
しているうちに
かたい結び目
いくつもできて、みつかります。
ああ、これはもう、すんなりとした一本の毛糸には戻りません。
しな ....
となりの、しばは
あおい、というけれど
いくつになっても
いいなぁ、いいなぁ、と
たにんをうらやんでしまう
てのなかには
たくさんのしあわせを
だいているというのに
わ ....
あのときより
たくさんことばをしって
いたみもしって
やさしさもしって
なのに
すべてを
あなたにじょうずに
つたえる
すべがなくて
よるのおとを
ききながら
ひ ....
なにもない、と
なにももっていないと、
ぬれたよる
それも
いつかこえて
おとなになった
なにかをにぎりしめていると
おもっていた
てのなかに
ただくらやみばかり
あつめて ....
たくさんのひとと
じんせいのこうさてんで
であう
ないたり
わらったり
かけがえのない
あなたとの
あのとき
きみとの
あのとき
こころをずっと
ふるわせて
....
すぐ近くで 笑っていると分かっていると
それだけで強くなっていくようだった
それは私の特別だったと気づいた
一人でいるのはやっぱり辛いので
傷付いてもまた会いに行こう
時間を持て余して
....
走りながら汗をかく電車の車窓から
おれは膨らみきった雲と真向いになる
なんでそんなに大きいんだ
思いを小便のようにためこんで
我慢しているのか
まわりの雲は白いのに
おまえだけ灰色で ....
父は修行中らしい
はじめての経験だから
父も大変なのだ
だから みんなで助けて
供養して下さいと
和尚様が言う
およばずながら
いちの子分 長女 私
そのに 長男 次男
そのつれ ....
寝て起きたら 髪が立っている
僕はしばらく戦い むくっと起きた
僕は何かを言おうとして もどかしくなる
僕はそうして口を閉じ しばし黙り込む
どうすればいいんだろう そんな風に考えてる ....
雲一つない夜空なのに
空は月明かりで覆われている
川辺の茂みには無数の蛍の光
まるで星が避難してきたみたい
涼しい夜風が吹き渡る
真っ直ぐな道は
虫や蛙の鳴き声で満たされて
私の足音 ....
風鈴の 音色が似合う 窓辺から 吹き込む風は 夏のお便り
気つけば小さい体に 汗疹でき 君と迎える はじめての夏
寝苦しい 夜に響くは 虫の声 今年の夏も 暑くなりそう
爽やかな初夏の朝
コーヒーショップの窓の外では
スズメ達が噴水に集まって
小さな翼をシャンプーしている
音大行きのバス乗り場では
客はバスの屋上に梯子で登り
ピアノを楽譜初見で弾かない ....
桃の実をすぐるため
はしごに登って高い枝に手をのばす
少し時期が遅くなったので
実はピンポンボールのようにまで
大きくなって 枝一杯になっている
このままでは多すぎるので
適当な間隔を ....
それは夜空に間に合うために広がっていく感情たち
受け止めてきた数々の摩擦を銀紙の画板に敷き詰めるように
あちこちで火花をおこしながら流れていく
想いたいことはたくさんあるくせに
掴めたのは ....
ある場所で
点、として生じた光りが
わずかな距離を移動して
塵となる
それを一生という
かきあつめたもの
握りしめたもの
すべて消滅してしまう
けれども
細い雨のあとの
植 ....
狩りは かかとで 踏んでから
継ぎ足す糸屑 齢にかけて
後の視 留守居に 枯草つむ風
狩りは 掛かりに 放らして
かりは かかとで ふみえ みち
あさのは ゆめのき なきわ こるいし ....
あの日 あなたは死んだ
あの日 あなたは産まれた
七回忌の集まりには多くの友だちが集まった
七回目の誕生日には多くの希望が集まった
その日 あなたは 厳かに言った
私はもう死んで ....
光では消える
だから 灯りを
照らすという意志が欲しい
だから 灯りを
ともすという力が欲しい
だから 灯りを
暗いものが見えるだけでも
心の灯り
たきつけているのは ....
目覚めても
夢が続くのか
岩穴に
風が吸いこまれていく
のぞく眼に
洞窟の奥でうつむく子どもが映る
近づけば
幼いままのぼくだ
小さいからだを
剃刀の風が
音を立てて
通 ....
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