幾重もの黄昏が
共鳴する中を歩いている
自分の黄昏
知っている誰かの黄昏
あるいは知らない誰かの黄昏
数知れぬ意識の黄昏
黄昏てゆくのは今日という日
あるいはなんらかの時世
あるい ....
夜明けの太ももは
物事を知りすぎて
動く気配もない
左よ、流れろ
真夜中のフラッシュバックに
首筋が次々と
反応したからなのか
カーテンの隙間に殺菌される
右脚が
あきらめ半 ....
今夜は魚の塩焼
ちょうど良く焼き上がって
美味そうだ
食べようと箸を近づけたそのとき
そんなはずあるまい
魚と目が合った
どうかしたのと向かいの母が尋ねるので
なんでもないよと ....
氷山にあいた窓に
鳥と気球と蝶がいて
空を見たまま飛べないでいる
ひとつ 逆さのアルファベット
雨の隣には雨
その隣にも雨
雨のむこうの雨
雨のふりをした雨
....
名前が
水たまりに落ちてて
のぞくと君が宿った
空のひろい方を
私は知った
踊れ
踊れ
誰も皆{ルビ仮面=マスク}をつけて
踊れ
踊れ
とめどなく流体化する世界の中で
踊れ
踊れ
どのリズムで
どのメロディーで
それは好きに選べばいい
踊れ
....
花が花を追い
光が光を追う
互いが互いであることを忘れ
互いが互いをくりかえす
雨は雨
ほつれた糸
珠つなぐ音
雨と雨
何も無さをついばむ鴉
....
砕ける言葉
落ちる言葉
水踏む言葉
青 青
一度かぎりの拳
海を叩き
波を創り
島の背を見る
子の群れが
原を越える
草の失い 円い地に ....
つよくなでて
もういわないで
そらがわれたみたいです
わたしもそうおもいます
はやくなでて
もういかなくちゃ
つくりかけのこころです
わたしもしっています
まどがらすをふいて
....
外へ 外へと
言葉が拡散してゆくとき
内へ 内へと
深く問うものがある
あの日の歌が回遊してくる
おなじ言葉に
あらたな意味を帯びて
今はただ
あらゆる方向を指し示す
矢印た ....
人に向かって歩く
遠くに見える人
人が点滅する
そうして人は消えてゆく
離れている時はつながっていた
いくつそんなため息をつけば
光を育てられるのだろう
もうたぐり寄せるものもなく
....
とり急ぎ、という言葉を初めて聞いたとき
鳥も急ぐのだと思った
正確に言うと
へえ、鳥も急ぐんだ、と思った
それはユウコの初めての言葉だった
今思えばあの頃
鳥は皆、急いでいたよ ....
後ろで手を組んで
足をそろえて
ちょこんと立つ女の子のように
春が遠くで見ている
少し
体を傾けて
小さく笑いながら
浅い春が
私の中に居る
いつからかずっと居る
浅い春は
爛漫の春になることなく
淡い衣のままで
ひんやりとした肌のままで
佇んでいる
(そのはじまりを
浅い と形容されるの ....
風と水たまり
鉛筆 かくれんぼ
雨と雪の服
画用紙の端から端
暗い明るさ
午後の未来
胸の苦しさ
十月十日
横ならびの虹と径
賢くない鴉が啄ばむもの
....
瓶の壁を
静かに登る泡
幾つも
幾つも
ためらいながら
少しずつ
飲むか、
と言うと
欲しい
と答える
グラスへ注いで
渡す
ありがとうと
小さな声
あなた ....
午後が落ちている
歩くのに疲れて
坂道を歩く
人だと思う
エンジンの音
やまない雨の音
降り積もる
昔みたいに
曜日のない暦
夏の数日
確かに生きた
覚えたての呼吸で
....
風通しのいいこの部屋は
なにも考えられなくなる
昨日飲み干してしまった
感傷とかそういうのが
妙な日当たりによって
いつもよりきれいに見えてしまうんだ
何度か空 ....
耐えきれないことを冷蔵庫に押し込んで
明日の朝になれば食べごろになったりして
そうやって生きていくそうやって目を覚ます
多くの間違いのたったひとつだよ
また増えても大丈夫
消 ....
巨大なロボットの神経をつなぐように
眼下には電車がうごめいている
わたしは忘れてしまいたいことだらけだから
ここにひとりでいるのかもしれない
夕暮れが不平等に影 ....
いつまでもしびれがとれない
この道程だけが正しかったはずなのに
錆びた看板を見るたびにきしむのは
割れたこころがざわつくのは
きっとこれは毒で
....
木立ちを抜けていくのが
私たちの木立ち
だからすっかり抜けてしまうと
教室がある
先生は、と先生が言うと
先生は、と復唱する私たち
やがて始業のチャイムが鳴り
つまりそれは
....
お寿司のネタは常にネタバレをしている。
シャリの上にて堂々とネタバレをしている。
プレパラートと実験室
ハサミの形をしたコウモリが
逃げ出した。
そいつは
闇に馴染みながら、
すいすいと夜を裂いた。
研究者たちは
議論するばかりで
探し出そうとは
しなかった。
....
けんけんぱらん
けんぱらん
みぞれ落つ昼
とんとんとんとんとん
だれもいないやね走る
甘いお茶
ちっとも
おもしろくない午後だったのに
いま ....
言葉(文章)についての本を色々読んだので、つらつらと書きます。
・言葉は人の身体にまあまあ合っている
言葉は、人の脳の容量とか、口の動かし方、息の出し方、書く動作、に、合っている。から ....
部屋のなかの折れた櫛を
覗き込む鴉
鉄格子 窓
鉄格子 窓
鏡を照らす鏡
夜を囲む夜
目が痛む 息を吐く
雪が止む
夜に切る爪
赤い中指
罪人の樹の ....
この時ー恐ろしい予感は当たっていたー
すき焼きなのに肉がない!
先輩は突然ゲラゲラ笑いはじめ、急に真顔になって
「心配ないとも。すべてが上手くいく」と言った
いくもんか…
豆腐だけのすき焼き ....
全部リセットしてしまいたい
過去もこれからの未来も
リセットの先に何があるのか
ただ繰り返すだけかもしれない
けど、今よりはマシかもしれない
まだがんばれるよ
だいじょうぶ
そばにい ....
9月のはじめに他県に住んでいた義父がいきなり動けない、しゃべれない、記憶ない、となり、原因不明で要介護度4ほどの認知症になり、夫も私も驚いてしまったのですが、検査入院の末、脳に髄液がたまっていて、それ ....
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