隅田川より低い千住の街を
駆けていく幼い日のぼくの
こころの隙間に
川風がはいりこむ
湿気を含んだ重い風は
低い街並みをよぎり
川辺から離れた神社に
ぼくを連れていく
友だちは ....
軽トラックの荷台に仰向けになって
青空を見るのが好きだった
実家から水田転化した林檎畑までは少し遠く
父の運転する軽トラックの荷台に乗り込み
寝転がって空を仰ぎながら道々を行った
時折助手席 ....
石段に咲いた紫野草
苔に混じって隅に咲く
月光が飛沫とはしゃぐ
鯉が眠らず 水源はそそがれる
水滴の輝きが 近く遠い真夜中
カーテン越しに およぐため息
ぼくらはだらしなくそこに立っている
空調の効いた戦線にピカピカの武器を携えて
心はいつも迷彩で、読めない彼女はステルス機
粒の揃った爆撃音がそれぞれの肩を通り過ぎて
モデルハウスの本部にたどり ....
時々スーパーで売られている
アルミでできた鍋焼きうどん
スカスカの天ぷらが入って
賞味期限もまじかだから七十円
炎にパチパチ音を立てて
グツグツ煮立ったアルミの鍋に
....
駅前は水槽
すこし濁ったきらきらの中を
猫背の魂たちが交差する
とても不安でなんか大事なものが
おなかの中で大きくなるから
どれも足早にどれも背が曲がる
ざっくり切り落とされた夕暮 ....
ぼーとテレビを見ていて
半開きの唇から
涎が一筋
急いで手で拭き…
認めない
涎を垂らしたことが老いのせいだなど
ただ 口を閉じていなかっただけ
幼児は涎を流し
若者だって 口角泡を飛 ....
足跡がないのは言い訳でかためた糸をずっと渡ってきたから
不器用だと思っていた左手が、ただ使ってないことに気づいちゃったんだ
青い空が広がる
絶好のボランティアデイズ
晴れ、ときどき孤独
フェイスブックは
今日もだれかれ楽しそう
私
どうかな
書き込む話題もないし
晴れ、ときどき孤独
ー 行方不明 ....
朝の散歩に出る
内面の温かな海から
のぼる湿気
ぼくは挨拶したのに
無言のまま傍らを通りすぎる人の
視線に冷やされて
水滴になる
細かい不安が
その核になっている
他人の一言が
....
日の入りの国は夜露でカビてる
今日の出来事は窓から見えていた
話すこともなく電源を切って
駆け引きとかいうただの目配せで
長い間、舌を乾かしていた
最初はいつも直球それからカーブで
見 ....
あの人は可愛くて、
でもたぶん自分のかわいさにきづいていない。
もっと可愛いくなろうとしてるのだけど、
もうこれ以上の違いは、
僕にはわからないよ
砂漠でプールのチケットを買うような日々
ラクダにのったダフ屋が 指を三本立てる
市営プールじゃあるまいし
いまどきたったの三百円だなんて
ダフ屋は首をふって
金ならいらない これが欲しいんだ ....
草原の星を生意気な猫がいく
でこぼこを気にしないから
大事なものはポロポロとこぼしていた
君の横顔はいつでもすごく正しいから
遠い国の光に照らされると
今まで歩いてきた道がほんとうにバカ ....
夏だから君の肌とはつゆ知らず
遠花火あなたに深くさらわれて
逃避行ソーダー水の泡の泡
夕方のプール静かなキスをする
連れ出してあげるね海へ涙から ....
とにかく頑張る気だった
父を棺に入れる時も
親戚の人達と共に
ぐにゃりと 固定できない父に
白い旅装束を着せて
和尚様の教えに従い
とにかく 無事に弔いたかった
和尚様が 小学に入 ....
ピンで留めたように
肩に力がはいっていると
指摘された
意識して
力を抜くと
肩がわずかに下がる
同時に
手も
いつもの位置より
下にいく
気づかないまま
常に
力 ....
会社の帰りに実家に寄り
母を乗せて 病院に行く
入院している父に会うため
一日中 林檎畑で働いた後
母は着替えて 私を待つ
七十歳を超えて 疲れただろうに
駐車場について 歩きながら
....
繁みの間から語りかけてくる友だち
幼いころに拾い集めたら
食べるとどもりになるよ
あの子はきっと
食べたんだよ
という子がいた
友だちの中にひとり
どもる子がいた
きみはド ....
夏の日の夕暮れ
いつまでも続け
つないだ手のぬくもりほどの
せつなさを抱えて
メビウスのまんなかに
つかのま立ち止まり
見つめ合った、ぼくら
いまよりもずっと
不器用で、素直だった ....
それってクセなの?
来週も同じことしたらちょっとだけ許さないから
なにも残っていないなら
音だけでいいから
言葉をください
やさしい意味などいらないから
くるしい意味などいらないから
せめて誠実な音声を
聴かせてください
差し障りなく
....
おい俺は墓標を背負ったまま腰抜かしたぜ
さっき
久しぶりにここに来たらなんと
6年もたってやがる
6年かよ
6年つったらあれ
なんだ
まあ
けっこう長い
梅干し漬けてたらかなりい ....
大事なときはいつも雨降りで
嫌いなものが余計に深くなってしまう
そのうち使うと隠し持っていたけど
水溜りしか突かなくなった水玉の傘あげる
一人分のスペースでは手前しか考えられないし
誰か ....
産声のなかで
ひとりの娘が母に変わる日は
生命にまつわる大切な記念日
わたしのためには
何にも起きたりしない平凡な日でも
見知らぬ誰かには
たったひとつの日
雑踏のなかの
あり ....
わたしの総てを
受け容れるだなんて
わたしにも出来ないことだわ
だから、
わたしの総てを
受け容れてくれる人なんて
いるわけがないと思うのよ
わたしの
些細な何かをひとつで ....
名前とこのからだを
引き受けたときから
ぼくは舞台の主役になった
科白は自分で決めているようで
多くの出演者に
気配りしながら
作りあげていく
嫌われたくなくて
意見を言わない ....
むもくてきな独り言
ついに剥奪された虹
爪にかりかり 梅干
関与 火の鳥 カン
かまざりし 草々庫
ライオン折り紙 河
身持ち崩すちりとり
月 落としても 朝
板の切れ端が 軒下に放り出され
横に立てかけられ 忘れ去られている
陽をあび続け だんだん色があせ
雨をあび続け 湿って腐りはじめ
風からは遠い 身動きもしない
雪の積もる夜 ただ ....
泣かせたくなんかないよね
涙ぽろぽろ流してさ
つらそうな顔なんて
見たくはないよね
それでも
厳しく言わざるを得ないときがある
無慈悲を装うべきときがある
心を鬼にして
冷 ....
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