ここ数日の晴れ間が穏やか。
さんさんと陽光の降りそそぐ。
影を濃くするのは、私のみではなく、
炭酸がのどをシュワシュワと通りすぎる。
はて、宇宙の寒さは星の光を清らかにする
白い指先 ....
鮮やかな 情景を描く若者は
何も言わずに そっと耳を貸してくれた
この 年老いた私の言うことを
一言も 漏らさずに
腐敗した 私の考えと 行動に
悔いて 病んで 自分 ....
「甘い」
あなたのいれてくれた
コーヒーは
飲めば飲むほど
のどが渇くのです
もっとくださいもっとくださいと
求めているばかりで
私は一日中
コーヒーを飲むことし ....
T+74.130
Last radio signal from orbiter.{注*=Challenger timeline(UPI)}
切断された管をたなびかせながら
放物線を描いて ....
ダイ、ダイラ、
風吹きわたり
陽あたりのいい場所で
投げ捨てた果実の種が
ことごとく芽吹いて巨樹となり
大地を引き裂いて
ダイ、ダイラ、
風吹きわたり
陽あたりのいい場所で
はらわた ....
紙の上で紙を耕している潜在する文字たち。私は潜在する文字たちが融けて流れて、視線が紙の上を歩き易くなるのを待つ。耕された紙に植えられた潜在する色面が、潜在する光とともに組織され、私は色面と光とを、潜 ....
? 蝶
シ/モクレンの一秒は
蝶の魂と同じ
奇妙に歪んだ美醜の契りが
爪先で蠢いて翅にかわる
うす紫がゆっくりと溶け出し
バスタブの温度を下げる
浴室で眠る蝶の夢は
完全に対称 ....
宅配便の到着を知らせる呼び鈴に立ち上がると
私の下半身を跨ぐように放屁ひとつ
あけすけな音と不摂生な臭さにパタパタと手にした雑誌で扇ぎながらも
これが夫婦ってことなのかと改めて考え直すまでも無く ....
カルピスの底みたいな白濁色に
おぼれてしまう人を笑うことなど出来ない
明かりがいつも灯っているわけではなく
でも闇ばかりというわけでもない
はっきりしない色に囲まれて
遮られた視界を ....
生き方の不器用な父がひとりヴァージンロードを駆け抜けていく
ベッドで遭難などしないように君のいびきを道しるべにする
ウソツキとキツツキの違いを述べよ、この戦争が ....
長い長い、ゆめが落下して
重さを忘れたわたしは、大きな幹の鼓動を聴いている
その音と音のリズムが春の速度と似ていて
甘い甘い、きみも落下する
そこらじゅうに溢れているのは、
多分、今年の
....
よっこらしょ
そんなことばが口癖となった
ひとしきり身の回りの片づけを終えると
臨月の大きなお腹を抱え物干し台兼用のテラスへ這い登る
白いペンキを塗り重ねた木製のデッキチェアに身を委ね ....
母とふたり
二両編成の列車に乗った
並んで座った
心地よい揺れに眠くなったところで
降りるように促された
小さな駅舎を出ると
一面のキリン畑だった
みな太陽の方を向いて
長い ....
すっかり生ぬるくなったビールの向こうに
睡蓮の花が物憂げな顔で座っている
白い陶器の肌が青ざめて
透き通った光沢を放っている
その清楚な肌に触れることを許した
借金まみれの男の手が離れそ ....
黒い漆黒の夜に二人で輝る。
貴方と私は、月。
支えあっているつもりで、お互いを見ないふりをした。
もやの片すみにぼやけてる。
そんな夜。
....
くたびれた足を引きずって
いつもの夜道を帰ってきたら
祖母の部屋の窓はまっ暗で
もう明かりの灯らぬことに
今更ながら気がついた
玄関のドアを開いて
階段を上がり入った部屋の ....
繋がって
また
諦めた
歯がゆさで
ワンマン電車が走っていく
わたしの
肯定を知りたい
たくさんの競争心を
おぼえたふりをしていたらしい
甘やかされている時間にはふと
だれ ....
さ。く。ら。ち。る。ち。る。
さ。く。ら。ち。る。
文字は花びら、桜散る。
て。ん。て。ん。て。ん。て。ん。
転々と渡り暮らした町々の
別れの記憶に桜散る。
....
トリコロールカラーを織り混ぜた不協和音が
螺旋状に響く午前2時
F♯dimとB♭7がクロスした地点に
ジンジャーエールを凍らせたような結晶が生まれる
そう、今わたしの左の腰に小さな氷山が突き出 ....
(1)建物に窓があることによって、?内側と外側は窓の面に和声を張ることができる。?外の光は死に場所を見つけることができる。?建物は不要な密度を排泄することができる。?植物の有機的な欲情は建物の無機的な ....
壊れそうだな、俺たち
でも壊れそうってわかってるのが救いだな
見えないひび割れなんてないからな
希望が必ず見つかるように問題点も必ず見つかる
人間を見くびっちゃいけない
俺たち人間 ....
しゃわしゃわしゃわしゃわしゃわしゃわ
山奥の合掌造りで
祖母は暮らしていた
冬は深い雪に閉ざされ
ひっそりと
何もないところだった
祖母がまだ少女だった頃
屋根裏では
蚕を飼っ ....
昨日が、夜の中で解体されていく
肉体だけを、濡れた風がばらばらにして
過ぎ去り、それでもまだ鼓動は 宿る
わたしが必要としているものは
わたしの内部の、底辺にあって
....
(光が螺旋状にぐるぐると会話する)
その隙間を縫う私のみぢかい睫毛から
つまの先まで零れ落ちる
硝子のような、泥のような記憶の断片
押しては浅瀬に引く、気持ちの悪い浮遊間
....
口語の時代はさむいがその寒さの中に ※2
自分の裸をさらすほかない時代
ひとつの恐ろしい美が生まれた ※3
三角さん、錯覚しなければ ....
砂まみれの虹をわたりながら
つや消しの空間に夢をトレースする
幸せそうな光たちをそういう気分で俯瞰する
本当の意味で読み取る歴史の上の明日の流れ星を数えて
血まみれのキーボードに移植す ....
二人の時間をはかるために
砂時計がほしい
と、君がいうので
硝子の器に閉じ込める砂を探し
砂丘に鳴き砂を求めてみたけど
どの砂もしょっぱく湿っていて
完成しないのです、砂時計は
....
白梅も微睡む夜明けに
あなたしか呼ばない呼びかたの、
わたしの名前が
幾度も鼓膜を揺さぶる
それは
何処か黄昏色を、
かなしみの予感を引き寄せるようで
嗚咽が止まらず
あなた、との ....
殺風景なガラス張りの待合室に覚える
独特な曖昧さを避けてみるのも一興と敢えて
乾いた風の吹き抜けるホームに佇んでみた
乗ろうとして乗らなかった準特急の走り去った先には
見覚えのある古い建物 ....
「 いってきます 」
顔を覆う白い布を手に取り
もう瞳を開くことのない
祖母のきれいな顔に
一言を告げてから
玄関のドアを開き
七里ヶ浜へと続く
散歩日和の道を歩く
....
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