081122
メモ用紙に残した
犯罪の証拠
飯は済んだ
風呂に入る
口頭で済ませたはずのことを
記録に残したのが怪しいと
素人探偵は
メモを疑った
疑 ....
人は皆、機関車だ
機関車トーマスなんだ
機関車は前しか見えない
普通の電車のように前にも後ろにも顔があるわけじゃない
人生というレールを後戻りできないんだ
このレールは自分にしか走れない 自 ....
先生は死んだ木に触れたことがありますか
深い深い森の奥で妖精の羽音がしています
静かを湛えて眠る沼には
子供の夢が沈んでいます
沼の周りを縁取るように
名のない花が咲いていま ....
列車の窓が
長いネックレスのように煌き
横たわって走っている
街はもう影を落とさない夜更け
きみがほら、こころ震わす音楽を
あなたがほら、光り輝く宝箱を
見つけて、染めて、頬を ....
流れる水辺にあって、冬の光が
点っている。てらてらとここは
静か。見えないものに、触れた
ことのない。めくらの。薄く紅
挿す頬のあどけない。水掻きの
広く、長い指の掬えない。指間
指間から ....
081119
100年に一度の津波ですと
テレビが
怖いことをおっしゃるので
海の方を眺めたら
金融危機のことだった
一人あたり12000円の定額給付金 ....
こもれび/こもれび
紅く小さく南天の実
こもれび/こもれび
足元に散らばる団栗
うたっているのは ひばりか
うたっているのは すずめか
こもれび/こもれび
軽いハレーション
....
震える指先を
ポケットに滑り込ませたら
捨て損ねたレシートが
指の間で微かに笑った
不確かな足取りで
迷子のふりをしながら
逃げ損ねた枯葉を
靴の踵で踏みにじった
丸めた背 ....
海から流れてくる雲を
ぼんやりとながめていると
失われた呪文を思い出します
焼き締めた土人形を
たたき割るときに
病んだひとの名を呟く
あの、呪文
鳥取の冬空は
ほんとうの ....
つまらないわがままの後
ふいに上向いた気分と
言葉を飲み込んでしまい
二度と口をきけなくなって
ずいぶん経った
元気ですか
姿なき車に怯えていたあなたが蹲っていた場所を
久しぶりに通 ....
林の向こうに星が落ちた
遊びつかれたカラスが
西の方へ飛んで行った
あたりはワイン色になって
夕闇に沈んだ
遠くで一匹犬が鳴いた
町に人影がなくなった
青白い三日月がひとつ
水銀灯の上 ....
つまずきなさい、
何度でも
ほんとの意味のつまずきに
出会うときまで
何度でも
傷つきなさい、
何度でも
深手のつもり、で
いられるうちに
癒しのすべが
....
081118
古い真空管式ラジオを手に入れた
安物の普及品だ
ピーピーギャーギャー
ごそごそ弄っているうちにだんだんと
成長するように音が出る ....
わたしの枕元に
秋が沈む
繰り返される朝と夜の狭間で
少しずつ吸い込まれていく夢は
ふゆ色に染まり
朝、白い朝を始める
日々、零れ落ちる感情たちは
ばらばらに敷き詰められていて
....
「この病室は、眺めがいいねぇ・・・」
ガラス越し
輝く太陽の下に広がる
パノラマの海
ベッドの上で点滴に繋がれて
胸の痛みに悶えながら
なんとか作り笑いをする祖母をよそに ....
練炭の透明なガスの匂い
寒い空が風のように
つかみどころなく暖まる
定食屋は悲しい
女を食わす
このオレが悲しいのだ
練炭の透明なガスの匂い
寒い空が ....
咳がふたつ
階段を上ってきた
夜の真ん中で
ぽつり
行き場を失ったそれは
猫の眠りさえ奪わず
突き当たった扉の
その向こうで
遠慮がちに消えていく
八十年余りを働いた生命 ....
雷鳴が
手を伸ばす
息もつかせぬ濃黄色の
速く密かに追い来る
影
覆いかぶさる灰の匂いの
かすかな
水の手触りに
あなたはもう二度と
....
くるくる剥いた林檎の皮が
包丁持つ手にぐるぐる巻きついて
気分はまるで蛇使い
蛇の色の鮮やかさに恍惚
とする自分にエクスタシー
赤い風船 くもり空に飛ばして
太陽みたいだね、って
指 ....
・
空が晴れていると
どこへ行ってもいいような気がして
ふらふらと遠出をしてしまいたくなる
そんな時はスーパーへ行って
掌にちょうどおさまるくらいの大きさの
果物をふたつ買って帰る
右と ....
キャベツにニキビができていた
このチャーハンおいしいね。
それはよくはれた日
いつだってぼくらは
そんな気分でもないから
ポテチをたべ
映画をみて
うすシオの
クチビルをなめ
つ ....
あなたに出会いたい
だまって真実だけみつめている あなたに出会いたい
玄関に かたい錠をかけたままの あなたに あいたい
あなたは だれの 姿もみようとはしないで
窓を ....
ふと あなたのことを思いだしたので
こうして手紙を書きました
あなたがこれを読んだら
筆不精なわたしにしてはめずらしいと
腹を抱えてわらうのでしょうか
お元気ですか
わたしは元 ....
暖かいあなたの
腕に抱かれて
私はこのまま
溶けてしまいたい
けれど水のように
あなたに深く触れたとして
すぐに蒸気になって
あなたから遠く離れてしまうのなら
いまひと ....
「今日あいたい」けど
「今日もあいたい」じゃないの。
二人で歩いてきた
コスモスの小道の先で
僕たちがであったのは
同じ名前の
仲の良い幼なじみで ....
家族ごっこはいつも
こども役かおにいさん役だった
正義の味方ごっこはいつも
二号か三号でわる役は透明だった
ひと恋し瑠璃いろの冬の空
失意も得意もあったっけが
....
秋鮭って捨てるところ無いんだよね
骨や皮まで美味しくいただけるし
そんなこと話してみたら
「人生だって同じだよ」
あなたは秋鮭のルイベを美味しそうに頬張った
だと良いけどね
な ....
世の中って不思議だね
土もないのに葉っぱが咲いてる
きらめく夜に
月とオリオン、その他の
きょういちにち
清く正しくがんばったから
ひとびとは不思議な家族だね
....
先生
今年も忙しさに思想が流されてしまう
そんな季節が来ましたね
あなたは貴婦人だったり豪傑な男の人だったり
駆けだしの幼い人だったり するのだけれど
先生は 忘れた頃に
夢枕にきりりとた ....
さかなの星空はいつも
境界線でゆらめくのです
星空を落ち葉がよこぎり
岸辺のすすきも
月明かりに
にじみながら手を振って
失ってしまったときに
ひとはさかなになる
月だってゆら ....
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