水の記憶
たもつ


 
母とふたり
二両編成の列車に乗った
並んで座った
心地よい揺れに眠くなったところで
降りるように促された
小さな駅舎を出ると
一面のキリン畑だった
みな太陽の方を向いて
長い影を作っていた
適当なところを見つけて
お弁当を食べた
世界中のキリンはここで生まれるのよ
と、母はいつものように
ぎこちない冗談を言った
あの日、本当は
どこに行きたかったのだろう
ただすべてが温かい気がした
呼吸をしなくても良いなら
そのまま母と
水になりたかった



自由詩 水の記憶 Copyright たもつ 2009-03-16 20:53:16
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